この記事で身につくこと
アーンド・ベーシス損害率の分母は既経過保険料です。ではその既経過保険料は、どうやって出すのでしょうか。この記事を読み終えると、1/2法・1/12法・1/24法がそれぞれ何を仮定しているかを説明でき、1/24法の未経過割合 $(2k-1)/24$ を暗記ではなく数え上げで導けるようになります。
記号と用語を日本語に直す
まず、既経過保険料と未経過保険料の関係を押さえます。
| 用語 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 計上保険料 | $WP_T$ | $T$年度に計上した保険料 |
| 既経過保険料 | $EP_T$ | $T$年度にリスクが経過した分の保険料 |
| 未経過保険料準備金 | $U_T$ | $T$年度末に残っている、まだ経過していない分 |
契約者からお金を受け取っても、その時点では保険会社の収益になりません。時間が経ってリスクを引き受けた分だけが収益になるという考え方です。
近似計算の方法は3つあります。名前は分数ですが、意味しているのは「保険始期がいつだとみなすか」です。契約を結んだ日ではなく、危険が始まる日のほうが基準になります。
| 方法 | 別名 | 仮定 | 第 $k$ 月の未経過割合 |
|---|---|---|---|
| 1/2法 | 年度別平均法 | 全契約の始期が年度の真ん中にある | $1/2$ |
| 1/12法(月末基準) | 月別平均法 | 各月の契約の始期がその月の末にある | $k/12$ |
| 1/12法(月初基準) | 月別平均法 | 各月の契約の始期がその月の初めにある | $(k-1)/12$ |
| 1/24法(月央基準) | 月別平均法 | 各月の契約の始期がその月の中央にある | $(2k-1)/24$ |
「1/12法」と書いてあるだけでは月末か月初かは決まりません。月初・月央・月末のどれを指定しているかは係数を左右する本質的な条件なので、問題文で必ず確認してください。以下ではまず月末基準の1/12法で説明し、月初基準は後で扱います。
なお、1/24法の「月央」は各月を等しい長さの1か月として扱ったときの中点であって、暦の15日という意味ではありません。また、これらの係数はいずれも保険期間1年の契約を前提にしています。
核になる式:繰越で考えると1行で書ける
既経過保険料の定義は、次の1行です。
$$EP_T = WP_T - (U_T - U_{T-1})$$
引き算の形だと意味が見えにくいので、繰越として並べ替えます。
$$EP_T = \underbrace{U_{T-1}}_{\text{前年度からの繰越}} + \underbrace{WP_T}_{\text{当年度の新規計上}} - \underbrace{U_T}_{\text{次年度への繰越}}$$
こう書けば、在庫の計算と同じ形だと分かります。期首在庫 + 仕入 − 期末在庫 = 売上原価と同じ構造です。
したがって計算の肝は、期末の未経過保険料 $U_T$ をどう見積もるかの一点に絞られます。3つの近似法は、この $U_T$ の出し方の違いにすぎません。
1/2法は、全契約が年度の真ん中に結ばれたとみなします。年度末時点でちょうど半分が経過しているので、
$$U_T = \frac{1}{2} \times WP_T$$
1/12法(月末基準)は、第 $k$ 月の計上保険料を $M_k$($k=1$ が年度の第1月)として、その月の契約は月末に始まったとみなします。第1月の契約は年度末までに11か月が経過し、残りは1か月です。第2月なら残りが2か月、…第12月なら12か月が丸ごと残ります。したがって
$$U = \sum_{k=1}^{12} M_k \times \frac{k}{12}$$
1/24法は、各月の契約が月の真ん中に始まったとみなします。1年を0.5か月刻みの24ブロックに分けて数えます。第1月の契約は年度末時点で残り0.5か月なので未経過は $1/24$、第2月なら $3/24$、…第12月なら $23/24$ です。分子が2つ飛びの奇数になるので、
$$U = \sum_{k=1}^{12} M_k \times \frac{2k-1}{24}$$
$k=1$ で $1/24$、$k=12$ で $23/24$。両端を確かめれば、係数を覚えていなくても復元できます。
数値例
年間の計上保険料が1,200で、各月に均等(毎月100)だった場合の未経過保険料を、3つの方法で出します。
| 方法 | 計算 | $U$ |
|---|---|---|
| 1/2法 | $1{,}200 \times \dfrac{1}{2}$ | 600 |
| 1/12法 | $100 \times \dfrac{1+2+\cdots+12}{12} = 100 \times \dfrac{78}{12}$ | 650 |
| 1/24法 | $100 \times \dfrac{1+3+\cdots+23}{24} = 100 \times \dfrac{144}{24}$ | 600 |
1から23までの奇数12個の和は $12^2 = 144$ なので、1/24法はちょうど600になります。均等に計上されている場合、1/24法と1/2法は一致します。 1/12法だけ650と大きく出るのは、「月末に契約した」という仮定のぶんだけ経過期間を短く見積もっているからです。
このとき既経過保険料は、前年度末の未経過を同額とすれば $EP = 1{,}200 - (600 - 600) = 1{,}200$ となります。
試験ではこう出る
未経過保険料の計算は、損害率を出す過程の部品として登場します。
- H27.1-2 — 定額払保険商品について、毎月の営業保険料収入と予定損害率、事故発生から支払までのタイムラグが与えられ、アーンドベーシス損害率とリトンベーシス損害率を年度別に求めさせる。既経過保険料については「保険始期を毎月月初とする12分の1法で算出」と明示されている。
問題文が「1/12法」「1/24法」「月初基準」「月末基準」のどれを指定しているかを読み落とすと、答えが必ずずれます。逆に言えば、指定さえ拾えれば計算は足し算と掛け算だけです。
つまり、この記事の内容は暗記事項ではなく、問題文の指定を正しい式に翻訳するための前提です。
つまずきポイント:数えているのは「経過」ではなく「未経過」
取り違えやすいのは、経過割合と未経過割合です。
1/24法で、年度の第1月に始期を迎えた契約を考えます。始期は月の中央なので「その月については0.5か月分しか数えない」と考えて、つい未経過割合を $1/24$ ではない値だと思いたくなります。しかし年度末時点で見れば、この契約は約11.5か月が経過していてほぼ満期に達しており、残っているのは約0.5か月分だけです。だから未経過は $1/24$ です。
$$\text{第1月の契約:経過}\ \frac{23}{24}\ \text{、未経過}\ \frac{1}{24}$$ $$\text{第12月の契約:経過}\ \frac{1}{24}\ \text{、未経過}\ \frac{23}{24}$$
月が進むほど未経過割合は大きくなります。年度の後半に結んだ契約ほど、まだ先が長いからです。
1/12法(月末基準)でも同じ罠があり、最終月の契約は $12/12$、つまり全額が未経過になります。年度末日に契約して年度末日に決算するなら、1日も経過していないからです。これを「1/12だ」としてしまう誤答が用意されます。
冒頭の表に挙げたとおり、月初基準の1/12法もしばしば出題されます。むしろ本試験(H27.1-2)が指定しているのは月初基準のほうです。この場合は第1月の契約が年度末までに丸1年経過するので未経過は $0/12$ となり、係数は
$$U = \sum_{k=1}^{12} M_k \times \frac{k-1}{12}$$
に変わります。月末基準と月初基準のどちらかは問題文に書かれているので、指示に従って式を切り替えてください。
まとめ
- 既経過保険料は「前年度末の未経過 + 当年度計上 − 当年度末の未経過」。在庫計算と同じ構造。
- 1/2法・1/12法・1/24法の違いは、保険始期がいつだとみなすかだけ(いずれも保険期間1年が前提)。1/24法の未経過割合は $(2k-1)/24$ で、両端($1/24$ と $23/24$)から復元できる。
- 「1/12法」だけでは月末か月初か決まらない。指定を拾ってから式を選ぶ。
- 数えているのは未経過(残りの期間)。年度の後半に結んだ契約ほど未経過割合は大きい。