数え方
2000年度から2025年度までの26年度分の過去問題集を対象に、論点を表す語が登場した年度を数えました。決めごとは次のとおりです。
- 問題文と解答例の両方を対象にする
- 巻末の付表は除外する
- 同じ年度に何回出ても、その年度は1と数える
- 順位は「26年度のうち何年度に登場したか」で決める
この集計は語を数えたものです。語を使わずに設定だけで問う出題は拾えないので、順位は下限の目安と考えてください。この点は後半で改めて扱います。
論点ランキング
| 順位 | 論点 | 出現年度 | 主な章 |
|---|---|---|---|
| 1 | クレーム | 26/26 | 全章 |
| 1 | 損害率 | 26/26 | 第1章 |
| 1 | 再保険 | 26/26 | 第9章 |
| 4 | 料率 | 24/26 | 第1章・第4章 |
| 4 | 破産確率 | 24/26 | 第8章 |
| 4 | 積立保険 | 24/26 | 第6章 |
| 4 | エクセス・フランチャイズ | 24/26 | 第1章 |
| 8 | 免責 | 22/26 | 第1章・第2章 |
| 8 | 安全割増・付加率 | 22/26 | 第7章 |
| 10 | 信頼度・信頼性 | 21/26 | 第3章 |
| 10 | 純保険料 | 21/26 | 第1章 |
| 10 | 発生保険金 | 21/26 | 第1章・第5章 |
| 13 | ポアソン過程 | 20/26 | 第8章 |
| 14 | 支払備金 | 18/26 | 第5章 |
| 15 | エッシャー | 16/26 | 第7章 |
| 15 | チェインラダー | 16/26 | 第5章 |
| 17 | 調整係数 | 15/26 | 第8章 |
| 18 | ルンドベリ | 13/26 | 第8章 |
| 18 | コピュラ | 13/26 | 第10章 |
| 20 | 既経過保険料 | 12/26 | 第1章 |
| 21 | ボーンヒュッター・ファーガソン | 11/26 | 第5章 |
| 21 | VaR | 11/26 | 第10章 |
| 21 | ストップロス | 11/26 | 第9章 |
| 21 | 一般化線形モデル | 11/26 | 第4章 |
| 21 | 順位相関(ケンドール・スピアマン) | 11/26 | 第10章 |
| 21 | TVaR・期待ショートフォール | 11/26 | 第10章 |
| 27 | ビュールマン | 10/26 | 第3章 |
| 27 | ワン変換 | 10/26 | 第10章 |
| 27 | 効用 | 10/26 | 第7章 |
| 30 | リスク尺度 | 9/26 | 第10章 |
| 30 | オペレーショナル・タイム | 9/26 | 第8章 |
| 32 | 未経過保険料 | 8/26 | 第1章 |
| 33 | 有限変動信頼性理論 | 5/26 | 第3章 |
| 34 | 経験料率(語として) | 3/26 | 第3章 |
| 35 | ミニマムバイアス | 2/26 | 第4章 |
分布のほうも数えました。ポアソン分布26/26、指数分布25/26、正規分布21/26、ガンマ分布17/26、パレート分布10/26、負の二項分布10/26。統計の手法では最尤推定量22/26、積率母関数22/26が突出しています。
上級ブロックは、避けられない
出題範囲の地図の記事では、10章を初級・中級・上級の3ブロックに分けました。数学の要求水準で言えば、その区分は今も正しい。しかし頻度で見ると、話が変わります。
再保険(第9章)は26年度すべてに登場します。破産確率(第8章)は24年度、その道具であるポアソン過程は20年度、調整係数は15年度。上級ブロックは「出たら捨てる」で済ませられる頻度ではありません。
第10章も同様です。コピュラ13年度、VaR 11年度、TVaR・期待ショートフォール11年度、順位相関11年度。単独では半分以下ですが、第10章に属する語のどれかが出る年度は相当な数にのぼります。
順序として上級ブロックを最後に置くのは正しい。ただしそれは「時間が余ったらやる」という意味ではなく、「前提を固めてから必ず登る」という意味だ、と読み替えてください。
数え方ひとつで順位が動く — 集計の限界
この表を作る過程で、数え方の落とし穴を2つ踏みました。両方とも読者に共有しておく価値があります。
1つ目は、人名がカタカナとは限らないことです。ルンドベリを「ルンドベリ」だけで数えると0年度ですが、過去問は Lundberg と英字で書くことのほうが多く、両方を数えると13年度になります。ビュールマンも同じで、カタカナだけなら3年度、Bühlmann を含めると10年度。この表の人名は英字表記を含めて数え直したものです。
2つ目は、章の名前と問題文の言葉が違うことです。第3章の看板である「経験料率」という語は3年度しか出ませんが、その中心概念である「信頼度」で数えると21年度。問題文は「信頼度 $Z$ を求めよ」と書き、「これは経験料率の問題です」とは書かないからです。同じことが積立保険(24/26)の中の長期係数(3/26)にも言えます。計算の中身が記号で書かれ、語として表に出ないためです。
つまり順位表は「用語がどれだけ表に出るか」の目安であって、「その論点がどれだけ必要か」とは別物です。低い順位を見つけたら、まず別の言葉で数え直せないかを疑ってください。
数字から引ける優先順位
以上を踏まえると、実務的な優先順位はこうなります。
第一優先は、第1章の用語群です。損害率26/26、エクセス・フランチャイズ24/26、免責22/26、純保険料21/26、発生保険金21/26と、いずれも20年度以上(既経過保険料だけは12/26と低めですが、他の用語とセットで問われます)。他の章の問題文でも前提として使われます。ここが曖昧だと、上の章の問題文が読めません。
第二優先は、第8章と第9章です。破産確率24/26、再保険26/26。数学的には重いブロックですが、頻度では第1章に次ぐ位置にあります。ポアソン過程・積率母関数(22/26)という道具を早めに手に入れておくと、この2章への入りが楽になります。
第三優先は、第5章の支払備金(18/26)と第7章の保険料算出原理(安全割増22/26、エッシャー16/26)。どちらも計算の型が決まっているので、投下時間あたりの得点効率が高い領域です。
第10章は、語ごとに見れば11〜13/26ですが、リスク尺度・コピュラ・順位相関のどれが来ても同じ枠から出るので、まとめて一度学ぶのが効率的です。
まとめ
- 2000〜2025年度の26年度分を全文集計。順位は用語が登場した年度数で決めた。
- 再保険26/26、破産確率24/26。上級ブロック(第8〜10章)は「捨てる」選択肢が成り立たない頻度で出ている。
- 第1章の用語群(損害率・純保険料・免責・エクセス)は20年度以上。他章の問題文の前提にもなる最優先項目。
- 数え方で順位は動く。人名は英字表記(Lundberg・Bühlmann)を含めて数え直し、第3章は章名の「経験料率」(3/26)ではなく「信頼度」(21/26)で数えると実態に近い。
- 分布はポアソン26/26・指数25/26、手法は最尤推定量と積率母関数が22/26。この4つは道具として常備する。