統合で「増える」のは、実は3章分

制度の記事で扱ったとおり、2027年度から損保数理は専門数理2になり、数学のモデリング部分が統合されます。2026年度までの損保数理の合格は専門数理2の合格とみなされるので、統合前に受ける人にとって範囲の話は直接関係しません。関係するのは、2027年度以降に受ける人です。

そこで、何がどれだけ増えるのかを具体的に押さえます。まず現状の確認から。

科目 現行の指定教材
損保数理 『損保数理』全章 + 『モデリング』第1章のみ
数学 確率・統計の教科書群 + 『モデリング』(第5章と目次で範囲外とした部分を除く)

つまり損保数理は、すでにモデリングの第1章(回帰分析)を範囲に持っています。数学側のモデリング範囲は第1〜4章(第5章の線形計画法は範囲外)。差し引きすると、統合で新しく加わるのは次の3章です。

モデリングの章 内容 現行の損保数理での扱い
第1章 回帰分析 すでに指定教材
第2章 時系列解析 新規に加わる
第3章 確率過程 新規(ただし後述の重なりあり)
第4章 シミュレーション 新規に加わる
第5章 線形計画法 数学でも範囲外

「モデリングが丸ごと乗ってくる」と身構えるより、3章分と数えたほうが実態に近い。しかもそのうち1章は、損保数理の既習範囲と重なります。

第3章 確率過程は、第8章の延長線上にある

重なりの正体は確率過程です。

損保数理の第8章(危険理論)は、クレームの発生をポアソン過程でモデル化するところから始まります。過去問でもポアソン過程は26年度中20年度に登場し、非斉次ポアソン過程を時間変換で扱うオペレーショナル・タイムも9年度に出ています。マルコフ連鎖も、第3章の経験料率(推移確率行列を使う無事故割引制度の問題)で顔を出します。

一方、モデリング第3章の確率過程はマルコフ連鎖・ブラウン運動・ポアソン過程を扱います。ポアソン過程とマルコフ連鎖の部分は、損保数理を仕上げた人にとって初めて見る話ではありません。新しく足すのはブラウン運動まわりの道具、という理解でおおむね合います。

実際、損保数理の過去問でも確率過程・マルコフという語が5年度に登場しています。統合後の専門数理2で確率過程が問われても、損保数理側の基礎がそのまま効きます。

純粋に新しいのは、時系列とシミュレーション

逆に、損保数理側にほとんど下地がないのがこの2つです。

時系列解析(第2章)。 AR・MA・ARMAモデル、定常性、自己相関。損保数理の過去問での登場は5年度ですが、いずれも本格的な時系列の出題ではありません。数学のモデリング編では毎年のように問われている領域なので、統合後は本腰を入れる必要があります。

シミュレーション(第4章)。 逆関数法、棄却法といった乱数生成の手法です。損保数理の過去問での登場は26年度中0年度。完全に新しい領域になります。ただし数学側でも「逆関数法で一様乱数から目的の分布を作る」「棄却法で採択率を計算する」という定型的な出題が中心で、計算そのものは重くありません。手順を知っているかどうかで決まる領域です。

なお、モデリング第4章のうち4.3(検定)と4.4(一様乱数の生成)は、現行の数学では目次で範囲外と指定されています。統合後の扱いは新制度の試験要領を待つ必要がありますが、少なくとも現行の指定範囲はこの2節を除いたものです。

統合前に損保数理を受ける人にとっての意味

2026年度に損保数理に合格すれば、その合格は専門数理2の合格とみなされます。上に書いた3章分を学ぶ必要はありません。範囲が狭いうちに決着をつける、という判断には数字の裏づけがあります。

一方、2026年度の受験を見送る人にとっても、悲観する材料ではありません。統合後も損保数理の10章はそのまま出題範囲であり、いまの勉強が無駄になる部分はありません。増える3章のうち1章は既習範囲と重なり、もう1章(シミュレーション)は手順を覚えれば済む領域です。

強いて優先順位をつけるなら、統合後に受ける可能性がある人は、損保数理の第8章(危険理論)を厚めに仕上げておくのが効率的です。ポアソン過程とマルコフ連鎖の土台がそのまま確率過程の章で効くからです。

まとめ

  • 2027年度から損保数理は専門数理2になり、数学のモデリングが統合される。2026年度までの合格はみなし合格になる。
  • 損保数理はすでにモデリング第1章(回帰分析)を指定教材にしているので、増えるのは第2〜4章の3章分。第5章(線形計画法)は数学でも範囲外。
  • 第3章 確率過程は、損保数理の第8章(ポアソン過程・危険理論)や第3章(マルコフ連鎖)と重なる。新規に足すのはブラウン運動まわり。
  • 純粋に新しいのは時系列解析とシミュレーション。特にシミュレーションは損保過去問での登場が0年度だが、手順型の出題が中心で重くはない。
  • 統合後に受ける可能性がある人は、第8章を厚めに仕上げておくと確率過程の章でそのまま効く。