問題

(合格へのタクティクス 損保数理第1章 損害率系/参考類題 2018.1-I)

保険期間1年のある自動車保険において、直近3年間に以下のような料率改定および補償縮小を行った。

  • 第1年度の途中:保険料率10%引き上げ
  • 第3年度の期首:補償縮小(保険料率10%引き下げ、保険金10%減少)

この保険の過去3年間の契約年度ごとの契約台数、保険料収入、支払保険金は下表のとおりである。

契約年度 契約台数 保険料収入 支払保険金
第1年度 5,000 530,000 360,000
第2年度 7,000 770,000 500,000
第3年度 10,000 990,000 594,000

各年度における契約内容は、第3年度期首に実施した補償縮小部分以外は同一であり、契約1台あたり一律の保険料が適用されるものとする。払込方法は一括払のみであり、インフレの影響は考慮しなくてよい。

このとき、直近の料率水準・補償範囲ベースでの3か年通算のリトンベーシス損害率を求めよ。

まず何に着目するか

3年分の保険料と保険金をそのまま足して割る、という誘惑を最初に断ち切る必要があります。3年の間に料率も補償内容も変わっているので、そのまま足すと違うものを足すことになります。

やるべきことは1つです。過去の数字を「直近の条件だったらいくらだったか」に置き換えてから合計する。これをオンレベル化と呼びます。分母と分子を別々に揃えます。

分母(保険料)をどう揃えるか。ここが最大の分岐点です。問題文には「10%引き上げ」「10%引き下げ」という改定率が書いてありますが、これらを使わずに済ませられます。より簡単な道があります。

「契約1台あたり一律の保険料が適用される」という条件に注目してください。直近年度(第3年度)の保険料収入を契約台数で割れば、直近水準での1台あたり保険料が直接得られます。あとはそれを3年分の台数合計に掛ければ、全期間を直近水準に揃えた保険料収入になります。改定率をたどる必要はありません。

分子(保険金)をどう揃えるか。補償縮小は第3年度の期首に実施され、保険金が10%減少しています。第3年度の数字はすでに縮小後の水準ですが、第1・第2年度は縮小前なので、10%を控除して縮小後の水準に直します。

分母は「台数×直近単価」で揃え、分子は「過去分に0.9を掛ける」で揃える。揃え方が分母と分子で違うところが、この問題の要点です。

解法の筋道

分母から立てます。直近水準での1台あたり保険料を $u$ とすると

$$u = \frac{\text{第3年度の保険料収入}}{\text{第3年度の契約台数}}$$

3か年を直近水準に揃えた保険料収入は、台数合計 $N$ を使って

$$\text{揃えた保険料} = u \times N$$

分子は、補償縮小前の2年度分に $0.9$ を掛けて合計します。

$$\text{揃えた保険金} = 0.9 \times (\text{第1年度} + \text{第2年度}) + \text{第3年度}$$

リトンベーシス損害率は「支払った保険金 ÷ 計上した保険料」なので、この2つの比をとれば終わりです。

計算

分母

$$u = \frac{990{,}000}{10{,}000} = 99$$

台数合計は $5{,}000 + 7{,}000 + 10{,}000 = 22{,}000$ 台。

$$\text{揃えた保険料} = 99 \times 22{,}000 = 2{,}178{,}000$$

分子

$$0.9 \times (360{,}000 + 500{,}000) + 594{,}000 = 0.9 \times 860{,}000 + 594{,}000$$ $$= 774{,}000 + 594{,}000 = 1{,}368{,}000$$

損害率

$$\frac{1{,}368{,}000}{2{,}178{,}000} = 0.6281\cdots$$

答えは62.8%です。

検算しておきます。揃えずにそのまま計算すると

$$\frac{360{,}000+500{,}000+594{,}000}{530{,}000+770{,}000+990{,}000} = \frac{1{,}454{,}000}{2{,}290{,}000} = 63.5\%$$

62.8%とは0.7ポイント違います。この差が、水準を揃えなかったことによる誤差です。3年間の変動が大きい設定ならもっと開きます。

よくある誤答

改定率をたどって保険料を揃えようとする。「10%引き上げ」「10%引き下げ」を使って第1・第2年度の保険料収入に係数を掛ける、という方針でも解けないわけではありません。ただし料率改定が第1年度の途中に入っているため、その年度の台数を改定前と改定後に分けるという作業が増えます。

実際にやってみると、各年度の1台あたり単価は

$$\frac{530{,}000}{5{,}000} = 106, \qquad \frac{770{,}000}{7{,}000} = 110, \qquad \frac{990{,}000}{10{,}000} = 99$$

第2年度は全期間が改定後なので改定後単価が110、改定前は $110/1.1 = 100$。第1年度の改定後契約を $n$ 台とすると

$$100\,(5{,}000 - n) + 110\,n = 530{,}000 \;\Longrightarrow\; n = 3{,}000$$

改定前2,000台・改定後3,000台と分かります。これを直近水準に直すと、改定前は $100 \times 1.1 \times 0.9 = 99$、改定後は $110 \times 0.9 = 99$ で、どちらも99。結局は分母の道と同じ答えに合流します。

手間が3ステップ増えるだけで、着く場所は同じです。 1台あたり単価に直す道を選べば、この面倒がまるごと消えます。「契約1台あたり一律」という条件文は、この道を使えという誘導です。

補償縮小の10%を保険料側にも保険金側にも掛けてしまう。補償縮小では保険料率と保険金の両方が10%下がっていますが、分母はすでに直近単価99で揃えているので、そこにさらに0.9を掛けると二重に効きます。分母の揃えは「直近単価×台数」で完結していることを意識してください。

第3年度の保険金にも0.9を掛けてしまう。補償縮小は第3年度の期首に実施されているので、第3年度の594,000はすでに縮小後の数字です。ここに0.9を掛けると分子が小さくなりすぎ、$1{,}308{,}600 / 2{,}178{,}000 = 60.1\%$ となって別の選択肢に着地します。「いつから縮小後なのか」を年度の境目で確認するのが対策です。

類題はどこにあるか

タクティクス 損保数理の第1章「損害率系」に9問あります。この問題は目標解答時間7分です。

  • H17.1-1(目標7分)— 料率改定を保険料収入に反映する典型問題。「出たら得点源にしよう」とコメントが付いている
  • H27.1-2(目標7分)— アーンドベーシスとリトンベーシスを年度別に計算させ、両者の食い違いを体験させる
  • H18.1.3(目標7分)— 損害率を契約件数で表現できるかが鍵
  • 2018.2.3(目標7分)— アーンドベーシス損害率の会計年度ベースと会計年度−事故年度ベースの違い
  • 2020.1-1(目標7分)— 優良戻し保険料や追徴保険料の扱いが加わる

いずれも「過去の数字を直近の条件に揃えてから比べる」という同じ動作が土台にあります。この動作は料率算定の全体を通じて繰り返し使うので、ここで型として身につけておくと効きます。