問題
(合格へのタクティクス 損保数理第1章 長期係数・未経過係数系/参考類題 H29.1-2)
ある保険会社は、保険期間1年の商品を販売している。新たに保険期間2年の長期一時払契約の販売を開始したところ、ある年の契約件数は各保険期間(1年、2年)とも等しかった。このとき、その年の保険料収入全体に占める純保険料の割合に最も近い値を求めよ。
- 純保険料および維持費は毎年同一
- 新契約費は初保険年度のみ支出され、維持費は毎保険年度支出
- 代理店手数料および利潤は営業保険料に比例し、保険期間2年における代理店手数料率および利潤率は、保険期間1年における代理店手数料率および利潤率と同一
- 予定利率は0%
- 保険期間1年の営業保険料 $P$ は240であり、保険料率構成要素は下記のとおり
| 項目 | 記号 | 値 |
|---|---|---|
| 純保険料率 | $p$ | 0.525 |
| 新契約費率 | $\alpha$ | 0.2 |
| 維持費 | $\beta$ | 0.1 |
| 代理店手数料 | $\theta$ | 0.075 |
| 利潤 | $\delta$ | 0.1 |
まず何に着目するか
まず構成割合の合計を確かめます。
$$p + \alpha + \beta + \theta + \delta = 0.525 + 0.2 + 0.1 + 0.075 + 0.1 = 1$$
合計が1。これらがすべて営業保険料に対する割合であることの確認であり、1年契約の営業保険料を $1$ とおいて計算してよいという許可でもあります。営業保険料が240と与えられていますが、割合を答える問題なので240は実は使いません。ここに気づけると計算が軽くなります。
次に、予定利率0%という条件です。確定年金現価率は $v = 1$ のとき
$$\aann{n} = 1 + v + \cdots + v^{n-1} = \underbrace{1 + 1 + \cdots + 1}_{n\ \text{個}} = n$$
となり、単純に年数に一致します。割引の計算が丸ごと消えるということです。長期係数の問題としては最も軽い設定になります。
最後に、聞かれているのが「保険料収入全体に占める純保険料の割合」である点。1年契約と2年契約が同数あるので、分母も分子も2種類の契約の合計として組み立てる必要があります。片方だけで計算すると答えが合いません。
解法の筋道
3つの部品を順に用意します。
部品1:保険期間2年の営業保険料 $P'$
長期契約の収支相等を立てます。1年契約の営業保険料を $1$ とした比で考えます。
$$P' = \alpha + (p+\beta)\aann{2} + P'(\theta+\delta)$$
予定利率0%なので $\aann{2} = 2$。したがって
$$P' = \frac{\alpha + 2(p+\beta)}{1 - (\theta+\delta)}$$
部品2:保険期間2年の純保険料
純保険料は毎年同一で、予定利率0%なので割引もありません。2年分なので単純に $2p$ です。
部品3:保険期間1年の分
営業保険料は $1$、純保険料は $p$ です。
これらを組み合わせます。契約件数が同数なので、件数を1件ずつとして
$$\text{求める割合} = \frac{\overbrace{p}^{1\text{年}} + \overbrace{2p}^{2\text{年}}}{\underbrace{1}_{1\text{年}} + \underbrace{P'}_{2\text{年}}} = \frac{3p}{1 + P'}$$
計算
まず $P'$ を出します。$p + \beta = 0.525 + 0.1 = 0.625$、$\theta + \delta = 0.075 + 0.1 = 0.175$ なので
$$P' = \frac{0.2 + 2 \times 0.625}{1 - 0.175} = \frac{0.2 + 1.25}{0.825} = \frac{1.45}{0.825} = 1.757576$$
2年契約の営業保険料は、1年契約の約1.76倍です。単純に2倍にはなりません。新契約費が1回で済むぶん割安になっているからです(予定利率0%なので、割引による割安化はありません)。
次に、求める割合です。
$$\frac{3p}{1 + P'} = \frac{3 \times 0.525}{1 + 1.757576} = \frac{1.575}{2.757576} = 0.5712\cdots$$
約57% です。
検算します。1年契約単独なら純保険料の割合は $p = 0.525$、つまり52.5%です。全体では57%と高くなりました。2年契約のほうが純保険料の比率が高いからです。実際、2年契約だけで見ると
$$\frac{2p}{P'} = \frac{1.05}{1.757576} = 0.5974\cdots \approx 59.7\%$$
52.5%と59.7%の間に57.1%が入っています。混合したものが両者の間に来るという関係で、答えの妥当性が確認できます。
よくある誤答
営業保険料240を使おうとする。与えられていると使いたくなりますが、聞かれているのは割合なので、比で計算すれば240は約分で消えます。使っても間違いではありませんが、数字が大きくなるぶん計算ミスが増えます。割合を聞かれたら、営業保険料を1と置く。これが定石です。
2年契約の営業保険料を単純に2倍にしてしまう。
$$P' = 2 \qquad (\text{誤り})$$
このとき割合は $1.575 / 3 = 0.525$ となり、1年契約と同じ52.5%になってしまいます。新契約費 $\alpha$ が1回きりであることが反映されていません。「新契約費は初保険年度のみ支出され」という条件文が、2倍にしてはいけない理由そのものです。
分母を1年契約だけ、あるいは2年契約だけで計算してしまう。「全体に占める」という問いなので、両方を足します。契約件数が等しいという条件は、単純に1件ずつ足せばよいという意味です。件数が違えば加重平均になります。
予定利率0%を見落として割引計算をしてしまう。割り引いても $v=1$ なので結果は変わりませんが、無駄な計算に時間を取られます。目標5分の問題で計算量を増やすのは避けたいところです。
類題はどこにあるか
タクティクス 損保数理の第1章「長期係数・未経過係数系」に7問あります。この問題は目標5分で、同節の中では軽いほうです。
- 2019.1-1(目標3分)— この節で最も軽い。長期係数と未経過料率係数を直接求める
- H23-1-1(目標7分)— インフレ率が加わる
- H17.1-2(目標7分)— 純保険料の割引を忘れないことが論点
- H21.2-I(目標10分)— 長期係数のオーソドックスな問題だが基礎値の構成理解が必要
- H28-2-1(目標12分)— この節で最も重い
予定利率0%という設定は、式の骨格だけを確認させるための出題です。ここで骨格を固めてから、割引やインフレが入る問題に進むと、増えた部分だけに集中できます。逆に言えば、この問題に5分以上かかるようなら、まだ骨格が手に馴染んでいないということです。割引が入る問題に進む前に、ここを繰り返しておく価値があります。