その名前をどこで見るか

ボーンヒュッター・ファーガソン法(BF法)として出てきます。損保数理の第5章、支払備金の推定手法のひとつです。

支払備金の計算では、事故年度と経過年数を縦横に取った三角表(ラン・オフ・トライアングル)を使います。標準的なチェインラダー法は、この表から進展係数(LDF)を出し、直近の実績にそれを掛けて将来の支払いを推定します。

BF法は、この推定を次の形に置き換えます。

$$\text{最終支払額の推定} = \text{既支払額} + \text{事前見積もり} \times (1 - \text{既進展割合})$$

つまり、すでに払った分はそのまま使い、まだ払っていない部分だけを事前の見積もり(多くの場合、予定損害率に既経過保険料を掛けたもの)から埋めます。

チェインラダー法の弱点を、どう補うのか

チェインラダー法の推定は、直近の実績に進展係数を掛ける形です。事故から間もない年度では、この掛け算が危険になります。

たとえば、ある事故年度の既支払額が全体の5%程度しか進展していない段階だとします。進展係数は20倍前後になり、実績のわずかなブレが20倍に拡大されて最終見積もりに乗ります。たまたま大口クレームが1件早く払われただけで、その年度の備金が跳ね上がる。これがチェインラダー法の弱点です。

BF法は、この掛け算をやめます。未進展の部分は実績に依存させず、事前見積もりから持ってくる。実績が十分に積み上がった古い年度では既支払額が最終見積もりの大半を占め、実績が薄い新しい年度では事前見積もりの寄与が大きくなる。年度の成熟度に応じて、実績と事前情報の効き方が移る構造です。

タクティクスの問題文が「実績データが少なく信頼性に疑義があるため、さらにボーンヒュッターファーガソン法を用いて評価を行うこととした」という前置きを置くのは、この使い分けを踏まえたものです。

信頼性理論と同じ発想

BF法の構造は、損保数理の別の章で出てくる考え方と同型です。

第3章の信頼性理論では、修正保険料を「実績 $\times Z$ + 全体平均 $\times (1-Z)$」と書きます。実績をどれだけ信用するかを $Z$ で調整する形です。

BF法も、進展の度合いに応じて「実績」と「事前見積もり」の効き方を配分しています。実際、チェインラダー法による推定値を $U_{CL}$、既進展割合を $p$ とすると、BF法の推定は「$p \times U_{CL} + (1-p) \times$ 事前見積もり」と書き直せます。信頼度 $Z$ による按分と同じ形です。データが厚ければ実績が、薄ければ事前情報が効く。損保数理を通じて繰り返し現れるこの発想を、章をまたいで見つけられるかどうかが理解の分かれ目になります。

どんな人だったか

ロナルド・ボーンヒュッター(Ronald Bornhuetter)とロナルド・ファーガソン(Ronald Ferguson)は、どちらもアメリカの損害保険アクチュアリーです。2人は1972年、米国損害保険数理人会(CAS)で「The Actuary and IBNR」という論文を発表し、この手法を示しました。

19世紀の数学者や20世紀初頭の統計学者が並ぶ損保数理の人名のなかで、この2人は実務家です。学問的な新奇性というより、現場で使える推定手法として提案されたものが標準手法として定着した、という経緯を持っています。名前が2つ並ぶのは共著者だからで、片方だけを指す言い方はしません。

試験ではこう出る

過去問26年度分のうち、この手法が登場するのは11年度。チェインラダー法(16年度)とセットで問われることが多い論点です。

  • 三角表と予定損害率を与えて、BF法による支払備金を計算させる形
  • チェインラダー法とBF法の両方で計算させ、結果の差を比較させる形
  • ベンクテンダー法(両者の中間に位置する手法)と3つ並べて扱う形
  • どの手法がどの状況に適しているかを問う正誤形式

計算そのものは四則演算です。ただし三角表の読み取りと、進展割合の計算順序を間違えると全部ずれます。計算量対策の記事で書いたとおり、この種の問題は時間の見積もりを大きめに取り、途中結果をメモリーに貯めて転記を減らすのが安全です。

まとめ

  • BF法は「既支払額 + 事前見積もり × 未進展割合」で最終支払額を推定する。未進展部分を実績に依存させない。
  • チェインラダー法は実績に大きな進展係数を掛けるため、実績が薄い年度でブレが拡大する。BF法はその弱点を補う。
  • 既進展割合 $p$ を重みとすると「$p \times$ チェインラダー推定 + $(1-p) \times$ 事前見積もり」と書き直せる。第3章の信頼性理論(実績 $\times Z$ + 平均 $\times (1-Z)$)と同じ構造。
  • ボーンヒュッターとファーガソンは1972年に共著論文でこの手法を示した米国の実務アクチュアリー。
  • 過去問26年度分のうち11年度に登場。チェインラダー法との比較や、ベンクテンダー法を含む3手法の比較が典型的な出方。