この記事で身につくこと

生保数理の教科書は上下巻で16章あります。分厚く、記号も独特で、どこから手をつけるか迷いやすい科目です。この記事を読み終えると、試験範囲の12章とそうでない4章を区別でき、12章を3つのブロックとして把握して、自分がいまどこにいるのかを見失わずに学習を進められるようになります。

試験範囲と教科書

2026年度資格試験要領 別紙(1) で指定されている教科書と範囲は次のとおりです。

扱い
上巻 第1章〜第6章 すべて範囲内
下巻 第7章〜第9章 範囲内
下巻 第10章 剰余の分析/第11章 剰余の還元 範囲外
下巻 第12章〜第14章 範囲内
下巻 第15章 団体定期保険/第16章 退職年金保険 範囲外

教科書は「生命保険数学」(二見隆、日本アクチュアリー会)の上下巻です。下巻の4章(第10・11・15・16章)は範囲外と明記されています。章数では全16章の4分の1にあたります。剰余の分析・還元は実務色が強く読むのに時間がかかる章なので、範囲外と知らずに読み込むと損失が大きい部分です。

なお2027年度以降、生保数理は年金数理と統合されて「専門数理1」になる予定です。この制度改定は受験計画に直接影響するので、別の記事で詳しく扱います。

12章の地図

範囲内の12章は、性格の違う3つのブロックに分かれます。

土台ブロック:計算の言語(第1章・第2章)

内容 性格
第1章 利息の計算 利率・割引率・利力と確定年金。生存確率がまだ出てこない
第2章 生命表および生命関数 生存確率・死力・平均余命。利息がまだ出てこない

生保数理の計算は「お金の時間価値」と「生死の確率」の掛け算でできています。第1章がお金だけ、第2章が生死だけを扱い、第4章以降で2つが合流します。この2章の記号と関係式は、以降のすべての章で無断で使われます。ここが曖昧なままだと、後の章で式が読めなくなります。

本流ブロック:保険料と責任準備金(第4章→第5章→第6章、第7章→第8章→第9章)

内容 前提
第4章 純保険料 第1章+第2章
第5章 責任準備金(純保険料式) 第4章
第6章 計算基礎の変更 第5章
第7章 営業保険料 第4章
第8章 実務上の責任準備金 第5章+第7章
第9章 解約その他諸変更に伴う計算 第8章

ここが生保数理の中心です。純保険料で商品の値段を決め、責任準備金で会社が持つべき金額を測り、事業費を乗せて営業保険料にし、実務の準備金と解約返戻金へ進む。第4章→第5章、第7章→第8章→第9章という2本の鎖がそれぞれ論理の積み上げになっているので、鎖の中の順番は崩さないほうが楽です。第6章(計算基礎の変更)は第5章の応用として独立しているので、鎖の外に出して後に回せます。

教科書の練習問題も、第4章(51問)と第5章(38問)に厚く配分されています。試験の計算問題の多くがこの2章の記号で書かれるので、時間をかける価値が最も高いブロックです。

拡張ブロック:脱退と給付を広げる(第3章、第12章・第13章・第14章)

内容 前提
第3章 脱退残存表 第2章
第12章 連合生命に関する生命保険および年金 第2章+第4章
第13章 就業不能(または要介護)に対する諸給付 第3章
第14章 災害および疾病に関する保険 第13章

第3章は「死亡だけでなく解約などの複数の脱退原因がある表」を扱う章で、位置は前のほうにありますが、実際に効いてくるのは第13章・第14章に入ってからです。本流ブロックには第3章の内容はほとんど登場しないので、第3章を後回しにして第4章へ進む順序も成り立ちます。

第12章の連合生命は、被保険者が2人以上になる拡張です。分量が多く(練習問題84問)、記号も添字が増えて重くなりますが、使う考え方は第2章と第4章の素直な延長です。後回しにされがちな章の代表なので、計画に明示的に組み込んでおくことをすすめます。

学習の順序

教科書の章番号順に読むのが唯一の道ではありません。依存関係から、次の順序が組めます。

  1. 第1章・第2章 — 土台。ここは飛ばせません
  2. 第4章・第5章 — 本流の核。純保険料と責任準備金に最初の山があります
  3. 第7章・第8章・第9章 — 実務側の本流。第4章・第5章の記号で書かれています
  4. 第6章 — 計算基礎の変更。第5章の応用として短くまとまっています
  5. 第3章 — 脱退残存表。第13章・第14章の直前に回してよい章です
  6. 第13章・第14章・第12章 — 拡張ブロック。最後に残る山が連合生命です

どの順序を採るにしても、範囲外の4章(第10・11・15・16章)には入らないこと。そして各章の練習問題を飛ばさないこと。生保数理は記号の変形に手が慣れているかどうかがそのまま得点になる科目です。

数学の前提

数学の道具 主に使う章
等比数列・級数 第1章、第4章
指数・対数と級数展開 第1章、第2章
微分(合成関数・積・商) 第2章、第4章、第5章
積分(置換・部分積分) 第2章、第4章
期待値と分散 第4章、第5章

高校数学+大学教養の微積分で足ります。とくに「和の式を等比級数として閉じる」操作と「生存確率を含む式を微分する」操作は全編で繰り返し使うので、不安があれば第1章・第2章の段階で補強しておくのが効率的です。

まとめ

  • 教科書16章のうち試験範囲は12章。下巻の第10・11・15・16章は範囲外で、読まなくてよい。
  • 範囲内12章は「土台(1・2章)」「本流(4〜9章)」「拡張(3・12〜14章)」の3ブロック。本流は4→5、7→8→9の2本の鎖の順番を守り、第6章は後に回せる。
  • 第3章は第13章・第14章の直前に回せる。最後に残る山は第12章の連合生命で、後回しにされがちだからこそ計画に明示しておく。

※ 厳密に言えば(補注)

  • 「お金の時間価値と生死の確率の掛け算」は入口のための単純化です。正確には、将来のキャッシュフローの割引現価の期待値を扱う体系で、後の章では事業費(第7章)、複数の脱退原因(第3章)、就業不能などの状態(第13章)、複数の生命(第12章)が加わっていきます。
  • 本文の練習問題の問数(第4章51問・第12章84問など)は、各章末の練習問題セットに含まれる小問を1問ずつ数えた値です。セット(大問)単位で数えると本数は少なくなります。