この記事で扱う証明

教科書 第12章 練習問題(4)の(20)です。死亡表がメーカムの法則に従うとき、次の3つを示します。

$$\bar{A}_{\overset{1}{x}y} = \frac{c^{x}}{c^{x} + c^{y}}\, \bar{A}_{xy} + \frac{c^{x} - c^{y}}{c^{x} + c^{y}}\, (\log s)\, \bar{a}_{xy}$$

$$\bar{P}^{(\infty)}_{\overset{1}{x}y} = \frac{c^{x}}{c^{x} + c^{y}}\, \bar{P}^{(\infty)}_{xy} + \frac{c^{x} - c^{y}}{c^{x} + c^{y}}\, (\log s)$$

$${}_{t}\bar{V}^{(\infty)}_{\overset{1}{x}y} = \frac{c^{x}}{c^{x} + c^{y}}\, {}_{t}\bar{V}^{(\infty)}_{xy}$$

$\bar{P}^{(\infty)}$ と ${}_{t}\bar{V}^{(\infty)}$ は保険料が連続支払であることを表します。$c$ と $s$ はメーカム定数です。

記号を読む:条件付き保険

左辺の $\bar{A}_{\overset{1}{x}y}$ は、$x$ の上に1が乗っています。死亡順序で割り振る記事で確認したとおり、これは「$x$ が1番目に死ぬ」という意味です。

つまり $\bar{A}_{\overset{1}{x}y}$ は、$x$ が $y$ より先に死んだときにだけ保険金を払う保険の一時払保険料。条件付き保険と呼ばれます。$y$ のほうが先に死んだら、何も支払われません。

一方 $\bar{A}_{xy}$ は連生保険で、どちらか先に死んだほうで支払います。両者の関係は

$$\bar{A}_{xy} = \bar{A}_{\overset{1}{x}y} + \bar{A}_{x\overset{1}{y}}$$

「先に死ぬのが $x$ か $y$ か」で連生保険が2つに割れる、というだけの式です。問題は、この割れ方の比率が計算できるかどうかです。

生命表が与えられていれば、$\bar{A}_{\overset{1}{x}y}$ そのものは後述の積分で計算できます。できないのは、$\bar{A}_{xy}$ という1つの量だけから割れ方を決めることです。誰が先に死ぬかの内訳は、$\bar{A}_{xy}$ には入っていないからです。

ところがメーカムの法則の下では、この切り出しが閉じた形で書けます。

メーカムの死力を2つに分けて見る

出発点は、メーカムの死力です。

$$\mu_{x} = A + Bc^{x}$$

この式は、死力を2つの部分に分けています。年齢によらない一定部分 $A$ と、年齢とともに指数的に増える部分 $Bc^{x}$ です。メーカムの法則の記事で触れたとおり、前者は事故など年齢と無関係な要因、後者は老化に対応すると解釈されます。

連生の死力は、独立なら和になります。

$$\mu_{x+t,\, y+t} = \mu_{x+t} + \mu_{y+t} = 2A + B\left(c^{x+t} + c^{y+t}\right)$$

ここで注目したいのは、老化部分の比です。$Bc^{x+t} : Bc^{y+t} = c^{x} : c^{y}$。時間 $t$ が消えます。$c^{t}$ が両方に共通に掛かるからです。

2人がともに年を取っても、老化部分の比は変わらない。これが、この問題を貫く鍵です。

変形の一手:死力を連生の死力で書く

証明の中心は、次の計算です。$\left(c^{x} + c^{y}\right)\mu_{x+t}$ を、連生の死力を使って書き直します。

$$\left(c^{x} + c^{y}\right)\mu_{x+t} = \left(c^{x} + c^{y}\right)\left(A + Bc^{x+t}\right) = A\left(c^{x} + c^{y}\right) + Bc^{x+t}\left(c^{x} + c^{y}\right)$$

第2項を書き換えます。$c^{x+t}c^{y} = c^{x}c^{y+t}$(どちらも $c^{x+y+t}$)なので

$$Bc^{x+t}\left(c^{x} + c^{y}\right) = Bc^{x}c^{x+t} + Bc^{x}c^{y+t} = c^{x} \cdot B\left(c^{x+t} + c^{y+t}\right)$$

添字の $x$ と $y$ を入れ替えても指数の和が同じ、という一点だけで、$c^{x}$ が括り出せました。ここが計算の山です。

括弧の中を死力に戻します。$B c^{x+t} = \mu_{x+t} - A$ なので

$$c^{x} \cdot B\left(c^{x+t} + c^{y+t}\right) = c^{x}\left(\mu_{x+t} - A + \mu_{y+t} - A\right) = c^{x}\, \mu_{x+t,\, y+t} - 2Ac^{x}$$

まとめると

$$\left(c^{x} + c^{y}\right)\mu_{x+t} = A\left(c^{y} - c^{x}\right) + c^{x}\, \mu_{x+t,\, y+t}$$

$x$ ひとりの死力が、定数項と連生の死力の定数倍の和になりました。

積分して1本目を得る

条件付き保険の一時払保険料は、定義から

$$\bar{A}_{\overset{1}{x}y} = \int_{0}^{\infty} v^{t}\, \npx{t}{xy}\, \mu_{x+t}\, dt$$

「時点 $t$ まで2人とも生きていて、その瞬間に $x$ が死ぬ」を積分した形です。両辺に $c^{x} + c^{y}$ を掛け、いま得た関係を代入します。

$$\left(c^{x} + c^{y}\right)\bar{A}_{\overset{1}{x}y} = \int_{0}^{\infty} v^{t}\, \npx{t}{xy}\left[A\left(c^{y} - c^{x}\right) + c^{x}\mu_{x+t,\, y+t}\right] dt$$

積分を2つに分けると、それぞれ見慣れた記号になります。

$$= A\left(c^{y} - c^{x}\right)\bar{a}_{xy} + c^{x}\, \bar{A}_{xy}$$

第1項の積分は連生年金の現価、第2項の積分は連生保険の一時払保険料です。両辺を $c^{x} + c^{y}$ で割り、$A = -\log s$ を使えば

$$\bar{A}_{\overset{1}{x}y} = \frac{c^{x}}{c^{x} + c^{y}}\, \bar{A}_{xy} + \frac{c^{x} - c^{y}}{c^{x} + c^{y}}\, (\log s)\, \bar{a}_{xy}$$

1本目が示せました。

2本目:両辺を年金現価で割る

保険料は、一時払保険料を払込期間の年金現価で割ったものです。条件付き保険の保険料も連生保険の保険料も、払込は2人が共存している間なので、分母はどちらも $\bar{a}_{xy}$ です。

したがって、1本目の両辺を $\bar{a}_{xy}$ で割るだけで

$$\bar{P}^{(\infty)}_{\overset{1}{x}y} = \frac{c^{x}}{c^{x} + c^{y}}\, \bar{P}^{(\infty)}_{xy} + \frac{c^{x} - c^{y}}{c^{x} + c^{y}}\, (\log s)$$

補正項から $\bar{a}_{xy}$ が消え、定数になりました。

3本目:責任準備金では補正項が消える

いちばん面白いのが3本目です。将来法で責任準備金を書きます。

$${}_{t}\bar{V}^{(\infty)}_{\overset{1}{x}y} = \bar{A}_{\overset{1}{x+t}\, y+t} - \bar{P}^{(\infty)}_{\overset{1}{x}y}\, \bar{a}_{x+t,\, y+t}$$

第1項に1本目の式を、$x \to x+t$、$y \to y+t$ として当てはめます。ここで、先ほど確認した事実が効きます。

$$\frac{c^{x+t}}{c^{x+t} + c^{y+t}} = \frac{c^{x}}{c^{x} + c^{y}}, \qquad \frac{c^{x+t} - c^{y+t}}{c^{x+t} + c^{y+t}} = \frac{c^{x} - c^{y}}{c^{x} + c^{y}}$$

分子・分母から $c^{t}$ が約分され、按分の比も補正項の係数も、契約時点と同じ値になります。年齢を2人そろえて進めても比が変わらない、というメーカムの性質そのものです。

そこで係数を $\alpha = c^{x}/(c^{x}+c^{y})$、$\beta = (c^{x}-c^{y})/(c^{x}+c^{y})$ と置くと

$$\bar{A}_{\overset{1}{x+t}\, y+t} = \alpha\, \bar{A}_{x+t,\, y+t} + \beta (\log s)\, \bar{a}_{x+t,\, y+t}$$

$$\bar{P}^{(\infty)}_{\overset{1}{x}y} = \alpha\, \bar{P}^{(\infty)}_{xy} + \beta (\log s)$$

代入して整理します。

$${}_{t}\bar{V}^{(\infty)}_{\overset{1}{x}y} = \alpha \bar{A}_{x+t,\, y+t} + \beta(\log s)\bar{a}_{x+t,\, y+t} - \alpha \bar{P}^{(\infty)}_{xy}\bar{a}_{x+t,\, y+t} - \beta(\log s)\bar{a}_{x+t,\, y+t}$$

$\beta(\log s)\bar{a}_{x+t,y+t}$ が現れて消えます。残るのは

$$= \alpha\left(\bar{A}_{x+t,\, y+t} - \bar{P}^{(\infty)}_{xy}\, \bar{a}_{x+t,\, y+t}\right) = \frac{c^{x}}{c^{x} + c^{y}}\, {}_{t}\bar{V}^{(\infty)}_{xy}$$

補正項が消え、責任準備金は連生保険の責任準備金をただ按分した形になりました。証明終わりです。

なぜ $c^x : c^y$ で分かれるのか

結果の形が示しているものを整理します。

まず、誤解しやすい点を先に潰しておきます。この結果は「$x$ が先に死ぬ保険料が、連生保険料を $c^{x} : c^{y}$ で分けたものになる」とは言っていません。補正項がある以上、単純な按分にはなっていません。

言えるのは、$\bar{A}_{xy}$ に掛かる係数が $c^{x}/(c^{x}+c^{y})$ になる、ということです。そしてこの係数が出てくる理由は、メーカムの死力のうち年齢とともに増える部分の比が $Bc^{x+t} : Bc^{y+t} = c^{x} : c^{y}$ だからです。老化の速さが違うぶんだけ、先に死ぬ側に重みが乗る。

では補正項は何か。メーカムの死力にはもうひとつ、年齢によらない部分 $A$ があります。この部分は2人とも同じ大きさなので、$c^{x} : c^{y}$ という比では割り振れません。割り振れなかったぶんが補正項として残る、という構造です。

実際、時点 $t$ に「先に死ぬのが $x$ である」割合は $\mu_{x+t}/(\mu_{x+t}+\mu_{y+t})$ で、これは $c^{x}/(c^{x}+c^{y})$ とは一致しませんし、$t$ にも依存します。式の上で $t$ に依存しない係数にまとめられるのは、老化部分だけを取り出したときです。

補正項の係数 $(c^{x}-c^{y})/(c^{x}+c^{y})$ が、$x = y$ のときに0になるのも整合的です。同い年なら $A$ の部分も対称に割れるので、補正は要らない。実際 $x = y$ なら係数は $1/2$ で、連生保険の保険料をちょうど半分にすれば条件付き保険の保険料になります。$A = 0$ の場合——つまりゴムパーツの法則——でも補正項は消え、そのときは本当に $c^{x} : c^{y}$ の按分になります。

責任準備金で補正項が消えるのは、按分比と補正係数のどちらも $t$ に依存しないからです。同じ補正が給付側と保険料側に等しく乗り、差を取ると相殺されます。これは均等年齢の記事で使った $c^{w} = (c^{x}+c^{y})/2$ という関係と同じ根から出ています。メーカムの法則で連生の計算が軽くなるのは、$c^{t}$ が共通因子として括り出せるからです。

つまずきポイント:$A$ と $\log s$ の符号

この証明で符号を落としやすいのは、$A = -\log s$ の置き換えです。

メーカムの法則を $\npx{t}{x} = s^{t} g^{c^{x}(c^{t}-1)}$ の形で書くとき、$A = -\log s$ という対応になります。$s$ は1より小さいので $\log s$ は負、したがって $A$ は正です。

計算の途中では $A\left(c^{y} - c^{x}\right)$ という形で出てきますが、答えの表記は $(\log s)\left(c^{x} - c^{y}\right)$ です。$A$ を $-\log s$ に替えるとき、括弧の中の順序も入れ替わっている。ここを機械的に写すと符号が反転します。

まとめ

  • $\bar{A}_{\overset{1}{x}y}$ は「$x$ が先に死んだときだけ払う」条件付き保険。生命表があれば積分で計算できるが、連生保険の保険料 $\bar{A}_{xy}$ だけからは一般に切り出せない。
  • メーカムの法則の下では、$c^{x+t}c^{y} = c^{x}c^{y+t}$ という一点から $\left(c^{x}+c^{y}\right)\mu_{x+t} = A\left(c^{y}-c^{x}\right) + c^{x}\mu_{x+t,y+t}$ が出る。これが変形の山。
  • 積分すると、条件付き保険は $\bar{A}_{xy}$ に係数 $c^{x}/(c^{x}+c^{y})$ を掛けたものに、年金現価の補正項を足した形になる。単純な按分ではない。
  • 係数 $c^{x}/(c^{x}+c^{y})$ は死力の老化部分の比から出る。割り振れない一定部分 $A$ が補正項として残る。$A=0$(ゴムパーツ)や $x=y$ なら補正項は消える。
  • 係数も補正係数も $t$ に依存しないため、責任準備金では補正項が相殺され、連生の責任準備金の定数倍になる。