この記事で扱う証明

教科書 第12章 練習問題(3)の(12)です。

復帰年金 $a_{x \mid y}$ が年払保険料 $\dfrac{a_{x \mid y}}{\ddot{a}_{xy}}$ で成立したとき、$(x)$ と $(y)$ が共存中の $t$ 年後の責任準備金 ${}_{t}V\left(a_{x \mid y}\right)$ は

$$\frac{\ddot{a}_{y+t}}{\ddot{a}_{y}} < \frac{\ddot{a}_{x+t,\, y+t}}{\ddot{a}_{xy}}$$

であれば負となる、というものです。

復帰年金とは何か

記号の確認から入ります。$a_{x \mid y}$ は、$(x)$ が死亡した後、$(y)$ が生存している間だけ支払う年金です。復帰年金、あるいは遺族年金と呼ばれます。

夫 $(x)$ が亡くなった後、妻 $(y)$ が生きている限り支払う。$(y)$ が先に亡くなれば、何も支払われないまま契約が終わります。

現価は、定義から次のように書けます。

$$a_{x \mid y} = a_{y} - a_{xy}$$

「$y$ が生きている限り払う年金」から「2人とも生きている限り払う年金」を引く。残るのは「$y$ は生きているが $x$ は死んでいる期間」の年金です。復帰年金の計算は、この引き算に戻すのが第一手です。

期始払で書いても同じで、$a_y - a_{xy} = \ddot{a}_y - \ddot{a}_{xy}$ です。どちらの年金も期始払に直すと1ずつ増えるので、差は変わりません。

保険料を求める

保険料は、$(x)$ と $(y)$ が共存中に払い込みます。$(x)$ が死んで年金が始まったら、もう払いません。したがって収支相等は

$$P = \frac{a_{x \mid y}}{\ddot{a}_{xy}}$$

上の書き換えを使うと

$$P = \frac{\ddot{a}_{y} - \ddot{a}_{xy}}{\ddot{a}_{xy}} = \frac{\ddot{a}_{y}}{\ddot{a}_{xy}} - 1$$

保険料が、2つの年金現価の比から1を引いた形になりました。この形が、あとで効いてきます。

責任準備金を書き下す

$t$ 年後、2人ともまだ生存しているとします。将来法で、純保険料式の責任準備金を立てます。以下で「責任準備金」というのは、この理論上の値のことです。

$${}_{t}V\left(a_{x \mid y}\right) = a_{x+t \mid y+t} - P\, \ddot{a}_{x+t,\, y+t}$$

将来の給付現価から、将来の保険料現価を引く。定義そのものです。第1項を引き算の形に直し、$P$ を代入します。

$$= \left(\ddot{a}_{y+t} - \ddot{a}_{x+t,\, y+t}\right) - \left(\frac{\ddot{a}_{y}}{\ddot{a}_{xy}} - 1\right)\ddot{a}_{x+t,\, y+t}$$

括弧を外すと $-\ddot{a}_{x+t,y+t}$ と $+\ddot{a}_{x+t,y+t}$ が打ち消し合います。

$${}_{t}V\left(a_{x \mid y}\right) = \ddot{a}_{y+t} - \frac{\ddot{a}_{y}}{\ddot{a}_{xy}}\, \ddot{a}_{x+t,\, y+t}$$

これが負になる条件は、そのまま

$$\ddot{a}_{y+t} < \frac{\ddot{a}_{y}}{\ddot{a}_{xy}}\, \ddot{a}_{x+t,\, y+t}$$

両辺を $\ddot{a}_y$ で割れば

$$\frac{\ddot{a}_{y+t}}{\ddot{a}_{y}} < \frac{\ddot{a}_{x+t,\, y+t}}{\ddot{a}_{xy}}$$

証明終わりです。計算そのものは、括弧を外して2項が消えるのを見るだけでした。

契約時点では0であることを確かめる

導いた式に $t = 0$ を入れると

$${}_{0}V = \ddot{a}_{y} - \frac{\ddot{a}_{y}}{\ddot{a}_{xy}}\, \ddot{a}_{xy} = \ddot{a}_{y} - \ddot{a}_{y} = 0$$

契約時点の責任準備金は0。収支相等で保険料を決めたのだから当然ですが、式が正しく立っているかの確認になります。

条件式も $t = 0$ では両辺とも1で等号です。つまりこの問題は、契約時点で等しかった2つの比が、その後どちらへ動くかを問うています。

条件の意味を読む

条件式を並べ替えると、意味が見えやすくなります。

$$\frac{\ddot{a}_{x+t,\, y+t}}{\ddot{a}_{y+t}} > \frac{\ddot{a}_{xy}}{\ddot{a}_{y}}$$

左辺も右辺も、「$y$ の年金に $x$ の生存条件を足したら、どれだけ残るか」を測っています。右辺は契約時点、左辺は $t$ 年後です。

$x$ の生存条件による目減りが、時間とともに軽くなる。そういう組み合わせのときに、責任準備金が負になる、と言っています。

これは起こりうることです。年金の残り期間が短くなるほど、$x$ の死亡が年金を削る余地は小さくなります。$y$ が高齢で年金期間が急速に短くなり、一方の $x$ は死亡率の上がり方が緩やかである——たとえば $x$ が $y$ より若い組み合わせでは、この向きになりえます。ただし実際にどちらへ動くかは生命表と年齢の組み合わせ次第なので、判定するには数値を入れて確かめる必要があります。

負の責任準備金は何を意味するか

責任準備金が負とは、その時点から先の給付現価より、これから受け取る保険料の現価のほうが大きいという状態です。将来の条件付き保険料収入の期待現価が、将来給付の期待現価を上回っている——それ以上でも以下でもありません。法的・会計的に貸付金が生じているわけではないので、比喩で理解を進めすぎないほうが安全です。

復帰年金でこれが起こりうるのは、保険料の払込期間と給付期間がずれているからです。保険料は2人が共存している間に払い込み、給付は $x$ の死亡後に始まる。この時間のずれが、責任準備金の符号に効いてきます。

なお、ここで求めたのは純保険料式の理論値です。決算で実際に計上する責任準備金の額や、解約返戻金の有無・金額は、商品ごとの約款と計算方法書、そして適用される制度で決まります。理論値が負であることだけから、計上額や返戻金がいくらになるかが一律に決まるわけではありません。試験の答案としては、理論値の符号を正しく出すところまでが範囲です。

つまずきポイント:保険料の払込期間

この問題で間違えるとしたら、$P$ の分母です。

$$P = \frac{a_{x \mid y}}{\ddot{a}_{xy}}$$

分母は連生年金 $\ddot{a}_{xy}$ であって、$\ddot{a}_x$ でも $\ddot{a}_y$ でもありません。保険料は「2人とも生きている間」に払うからです。$x$ が死ねば給付が始まるので払込は終わり、$y$ が死ねば契約自体が終わります。

商品の説明文から払込期間を読み取り、その期間の年金現価を分母に置く。復帰年金に限らず、2人以上が関わる契約では、払込が「全員生存中」なのか「少なくとも1人の生存中」なのかを正確に読む必要があります。ここを外すと以降がすべてずれます。

まとめ

  • 復帰年金 $a_{x \mid y}$ は、$x$ の死亡後に $y$ が生きている間だけ払う年金。$a_y - a_{xy}$ に戻すのが第一手。
  • 保険料は共存期間中に払うので $P = a_{x \mid y}/\ddot{a}_{xy}$。整理すると $\ddot{a}_y/\ddot{a}_{xy} - 1$ という比の形になる。
  • 責任準備金は $\ddot{a}_{y+t} - (\ddot{a}_y/\ddot{a}_{xy})\ddot{a}_{x+t,y+t}$。括弧を外すと2項が打ち消し合って、この形に落ちる。
  • 負になる条件は、$x$ の生存条件による目減りが時間とともに軽くなること。契約時点では両辺が等しく、その後の動き方が符号を決める。
  • 負の責任準備金は、将来保険料の現価が将来給付の現価を上回っている状態を表すだけ。払込期間と給付期間がずれている商品で起こりうる。実際の計上額や解約返戻金は約款と制度で決まる。