この記事の数え方

アクチュアリー受験研究会のキックオフミーティングで発表された、生保数理の合格体験談のうち直近5年度分、7件を読みました。

母数は7件です。中央値や平均を出しても意味のある数字にならないので、「7件中何件」という形だけで書きます。

発表者は登壇した合格者であって、全合格者から無作為に選ばれた人ではありません。学習法を人前で話せる程度に整理できている人に偏ります。個々の発表内容は引用せず、分類してこちらの言葉で書き直しています。

数学との違い:教科書の位置づけ

同じ集計を数学の9件にも行っています。並べると差がはっきり出ました。

教材 生保数理 数学
過去問 7/7 9/9
指定教科書 7/7 5/9
合格へのストラテジー 6/7 9/9
受験研究会の勉強会・質問 5/7 4/9
レベルチェックテスト・模試 2/7 4/9

生保数理では指定教科書が全件に出てきます。数学では通読しなかったという記述が目立ったのに対し、生保数理では教科書が学習の一部として組み込まれています。

ただし使い方は一様ではありません。証明の確認のために辞書のように引いた、という記述が複数あります。演習問題だけを使った、完全年金の説明が一番分かりやすかったのでそこだけ読んだ、という件もありました。最初から最後まで通読したという形は、7件の中では主流ではありません。

理由は推測できます。生保数理は記号の体系そのものを覚える必要があり、記号の定義を確認する場所が要ります。数学であれば市販の入門書で代替できますが、生保数理では指定教科書がその役割を担っています。

学習の順序:教科書の章順には読まない

7件のうち1件が、教科書をどの順で読むべきかを具体的に示していました。第1章、第2章、第4章、第7章、第5章、第8章、第9章、第3章、第13章、第6章と第14章、第12章という順序です。

第3章の脱退残存表を後ろに回し、第4章の純保険料と第5章の責任準備金を早い段階に持ってきています。この発表者は、純保険料、責任準備金、就業不能、連合生命の4つに特に時間をかけるべきだとしていました。

別の件も、就職活動の都合で学習の途中に空白ができ、連合生命が手つかずのまま残ったため、後から集中して取り組んだと書いています。連合生命が後回しになりやすい章であることは、複数件から読み取れます。

教科書の章の並びは、体系としては筋が通っていますが、学習の順序としては最適とは限りません。分量が多く配点も重い章を先に持ってくる、という判断が体験談には現れています。

学習の時系列

7件のスケジュールを重ねると、次のようになります。

時期 多くの件で行われていたこと
年明けから春 教科書やストラテジーで記号と基本の型を入れる
初夏から夏 章ごとの問題演習。ストラテジー、過去問ワークブック
分野別の過去問演習
秋の終わりから試験まで 年度別に時間を計って通しで解く

分野別から年度別へ切り替える、という進み方が複数件に共通していました。章ごとに論点を潰してから、通しで時間配分を確認する流れです。

学習開始の時期には幅があります。前年の年末から始めた件、4月から始めた件、5月に教科書を読んで挫折し6月から7月は勉強から離れていたと書いている件もありました。最後の件は、その後に人に教わる環境を作ることで立て直しています。

過去問の量

7件のうち量を明記していたのは5件でした。

過去問の量
A 平成12年度から20年分を3周
B 15年分を3周以上
C 15年分を2周、直近7年分はさらに3周
D 10年分を一周、その後さらに10年分を追加
E 平成12年度以降を繰り返し。直近2年分だけは試験直前まで残す

Eの「直近2年分を残す」という運用は、実力を測る機会を確保するためです。同じ発表者は、過去問を繰り返すと解法を覚えてしまい力試しにならない、という懸念に対して、それでも問題ないと答えていました。

この発表者は、試験までに解いた問題は過去問だけだったと書いています。範囲全体のうちよく出る部分が試験問題の大半を構成するのだから、過去問はそのよく出る部分そのものであり、60点を取るにはそれで足りる、という立場です。

一方で、教科書とストラテジーと過去問を組み合わせた件が大半でした。過去問だけで合格した件は7件中1件です。

学習時間を記録していた件

7件のうち、学習内容ごとの所要時間を記録していた件が1件ありました。項目別に並べると次のようになります。

学習内容 所要時間
過去問15年分を3周以上 200時間
動画講義 20時間
合格へのストラテジー2、3周 20時間
受験研究会の毎月の勉強会 20時間
社内の自主勉強会 20時間
社内の勉強会 20時間
直前の単語帳による暗記 5時間

合計はおよそ305時間です。うち3分の2を過去問が占めています。ただしこれは1件の記録であり、7件の分布ではありません。

この発表者は繁忙期のある職場に勤める社会人で、その時期は学習を止めています。毎朝勉強する形を取り、仕事の後や休日にまとめて詰め込む形は自分には安定しなかったと書いていました。

数字で出せなかったこと

学習時間の数値を書いていたのは7件中3件、そのうち項目別に集計していたのは1件だけです。何回目の受験で合格したかを集計できる形で書いていた件はありませんでした。

発表資料は総量ではなく時系列で語る形式が主流です。この資料群から学習時間の分布は出せません。

まとめ

  • 生保数理は7/7件が指定教科書に言及。数学の5/9件と対照的で、記号の定義を確認する場所として使われている。
  • ただし通読は主流ではない。証明の確認、演習問題、特定の章だけ、といった部分的な使い方が多い。
  • 教科書を章順に読まない進め方が示されていた。純保険料と責任準備金を早く、脱退残存表と連合生命を後ろに置く。
  • 過去問は分野別から年度別へ切り替える流れが複数件で共通。量は10年分から20年分3周まで。
  • 学習時間を項目別に記録していた1件では、合計約305時間のうち200時間が過去問だった。