この記事で扱う証明

確定年金の記号に関する式を3つ示します。教科書第1章 練習問題(2)の(6)(7)(9)です。

証明1 — 累加確定年金の恒等式

$$(Ia)_{\angl{n}} - \ann{n} + n \cdot {}_{n|}a_{\angl{\infty}} = \frac{\ann{n}}{i}, \qquad (Ia)_{\angl{n}} + n \cdot {}_{n|}a_{\angl{\infty}} = \ann{n}\,\aann{\infty}$$

証明2 — $(I\ddot{a})_{\angl{n}} = \sum_{t=0}^{n-1}(t+1)v^t$ と定義したときの2式

$$(Ia)_{\angl{n}} = (I\ddot{a})_{\angl{n+1}} - \aann{n+1}, \qquad \frac{(I\ddot{a})_{\angl{n}}}{\aann{n}} < \aann{n}$$

証明3 — 名称利率 $\dfrac{i^{(k)}}{k}$ を年利率として $kn$ 年間、毎年 $\dfrac{1}{k}$ ずつ支払う期末払年金の現価は、もとの $i$ に基づく $a_{\angl{n}}^{(k)}$ に等しい

3問とも、最初の一手は「記号を定義の和に書き下す」です。そこから先は、項を並べ替えるか、係数を数えるか、刻みを読み替えるかの違いしかありません。

使う道具

記号 定義
$\ann{n}$ $v + v^2 + \cdots + v^n$
$\aann{n}$ $1 + v + v^2 + \cdots + v^{n-1}$
$(Ia)_{\angl{n}}$ $\displaystyle\sum_{t=1}^{n} t\,v^t$ — 支払額が $1, 2, \dots, n$ と増える期末払
$(I\ddot{a})_{\angl{n}}$ $\displaystyle\sum_{t=0}^{n-1}(t+1)\,v^t$ — 同じく増えるが期始払
${}_{n\vert}a_{\angl{\infty}}$ $v^n \cdot \dfrac{1}{i}$ — $n$ 年据置の永久年金

既知の公式は2本だけ使います。

$$(Ia)_{\angl{n}} = \frac{\ann{n}}{d} - \frac{n v^n}{i}, \qquad \ann{\infty} = \frac{1}{i},\quad \aann{\infty} = \frac{1}{d}$$

そして関係式 $d = iv$、$1 - v = d$。この2つが、以下すべての変形の要です。

証明1:項を消し合わせる

第1式から示します。左辺に定義を入れます。

$$(Ia)_{\angl{n}} - \ann{n} + n \cdot {}_{n|}a_{\angl{\infty}} = \left(\frac{\ann{n}}{d} - \frac{n v^n}{i}\right) - \ann{n} + n v^n \cdot \frac{1}{i}$$

第2項と第4項が打ち消し合います。どちらも $\dfrac{n v^n}{i}$ で符号が逆だからです。残るのは

$$\frac{\ann{n}}{d} - \ann{n} = \ann{n}\left(\frac{1}{d} - 1\right) = \ann{n} \cdot \frac{1 - d}{d}$$

ここで $1 - d = v$ と $d = iv$ を使うと

$$\ann{n} \cdot \frac{v}{iv} = \frac{\ann{n}}{i}$$

第1式が出ました。第2式は、第1式の左辺の $-\ann{n}$ を右辺に移すだけです。

$$(Ia)_{\angl{n}} + n \cdot {}_{n|}a_{\angl{\infty}} = \frac{\ann{n}}{i} + \ann{n} = \ann{n}\left(\frac{1}{i} + 1\right) = \ann{n} \cdot \frac{1+i}{i}$$

$\dfrac{1+i}{i} = \dfrac{1}{iv} = \dfrac{1}{d} = \aann{\infty}$ なので、第2式になります。

$i = 5\%$、$n = 10$ で確かめると、第1式は両辺とも $154.4347$、第2式は両辺とも $162.1564$ です。

意味を言葉にしておきます。第2式の左辺は「$n$ 年目まで $1,2,\dots,n$ と増やして払い、その後は $n$ のまま永久に払う」年金の現価です。右辺 $\ann{n}\aann{\infty}$ は「$\ann{n}$ という元手を永久年金の率で受け取る」形。増やしていく年金は、期間 $n$ の年金と永久年金の積に化けるということです。

証明2:係数を数える

第1式は、定義の和をそのまま引き算します。

$$(I\ddot{a})_{\angl{n+1}} - \aann{n+1} = \sum_{t=0}^{n}(t+1)v^t - \sum_{t=0}^{n} v^t = \sum_{t=0}^{n} t\,v^t$$

$t = 0$ の項は0なので落ちて、$\displaystyle\sum_{t=1}^{n} t v^t = (Ia)_{\angl{n}}$。係数から1を引くと、期始払が期末払に変わるという話です。

第2式の不等式には、少し工夫が要ります。$\aann{n}$ を2乗して展開します。

$$\left(\aann{n}\right)^2 = \left(1 + v + \cdots + v^{n-1}\right)\left(1 + v + \cdots + v^{n-1}\right)$$

右辺を展開したとき、$v^t$ の係数は何個になるでしょうか。 $v^a \times v^b = v^t$ となる $(a, b)$ の組は $a + b = t$ を満たすもの。$t \le n-1$ なら $(0,t), (1,t-1), \dots, (t,0)$ の $t+1$ 通りです。

$$\left(\aann{n}\right)^2 = \sum_{t=0}^{n-1}(t+1)v^t + (\text{$v^n$ 以上の項})$$

第1項がちょうど $(I\ddot{a})_{\angl{n}}$ の定義です。捨てた $v^n$ 以上の項は正なので

$$\left(\aann{n}\right)^2 > (I\ddot{a})_{\angl{n}} \quad\Longrightarrow\quad \frac{(I\ddot{a})_{\angl{n}}}{\aann{n}} < \aann{n}$$

$i = 5\%$、$n = 10$ で $\left(\aann{10}\right)^2 = 65.737$、$(I\ddot{a})_{\angl{10}} = 41.342$。確かに大きく上回ります。

係数を数えるという発想が、この証明の全部です。累加年金の定義が「$t+1$ という係数を持つ和」だと分かっていれば、2乗の展開に同じ係数が現れることに気づけます。

証明3:刻みを読み替える

年利率を $\dfrac{i^{(k)}}{k}$ とし、$kn$ 年間にわたって毎年 $\dfrac{1}{k}$ ずつ期末払で支払う年金の現価を $a$ とします。定義どおりに書き下します。

$$a = \frac{1}{k}\left[\left(1 + \frac{i^{(k)}}{k}\right)^{-1} + \left(1 + \frac{i^{(k)}}{k}\right)^{-2} + \cdots + \left(1 + \frac{i^{(k)}}{k}\right)^{-kn}\right]$$

ここで名称利率の定義に戻ります。

$$\left(1 + \frac{i^{(k)}}{k}\right)^k = 1 + i \quad\Longrightarrow\quad \left(1 + \frac{i^{(k)}}{k}\right)^{-1} = (1+i)^{-1/k} = v^{1/k}$$

この1行が読み替えの中身です。 $\dfrac{i^{(k)}}{k}$ での1期は、$i$ での $\dfrac{1}{k}$ 年にあたります。代入すると

$$a = \frac{1}{k}\left[v^{1/k} + v^{2/k} + \cdots + v^{kn/k}\right] = \frac{1}{k}\sum_{m=1}^{kn} v^{m/k}$$

右辺は、$i$ に基づく年 $k$ 回払確定年金 $a_{\angl{n}}^{(k)}$ の定義式そのものです。

$i = 5\%$、$k = 12$、$n = 10$ で両方を計算すると、どちらも $7.897133$ になります。

「年 $k$ 回払」と「$1/k$ 年を1期とする年 $1$ 回払」は同じものです。名称利率はそのための言い換えにすぎない、と押さえておくと記号に振り回されません。

3つに共通する一手

証明 定義の和に戻したあと
1 同じ $\dfrac{nv^n}{i}$ が符号違いで現れ、消し合う
2 展開したときの $v^t$ の係数を数える
3 1期の長さを $1/k$ 年と読み替える

公式を思い出せなかったら、シグマに開く。これが確定年金の問題での戻り先です。開いてしまえば、あとは高校数学の等比数列と係数の勘定しか残りません。

つまずきポイント

$(Ia)$ と $(I\ddot{a})$ の係数の付き方を取り違える。 $(Ia)_{\angl{n}} = \sum_{t=1}^n t v^t$ は $t$ 年後に $t$ を払う形、$(I\ddot{a})_{\angl{n}} = \sum_{t=0}^{n-1}(t+1)v^t$ は $t$ 年後に $t+1$ を払う形です。どちらも「1年目に1を払う」のは同じで、払う時点が年末か年始かだけが違います。添字の範囲と係数を別々に覚えるとこじれるので、$t=0$ または $t=1$ のときにいくら払うかで確かめてください。

永久年金の記号を混ぜる。 $\ann{\infty} = \dfrac{1}{i}$(期末払)と $\aann{\infty} = \dfrac{1}{d}$(期始払)です。$d < i$ なので $\dfrac{1}{d} > \dfrac{1}{i}$、つまり期始払のほうが大きい。先に払うほうが現価は大きいという当たり前の関係で復元できます。

証明3で「利率が変わった」と誤解する。利率は変わっていません。$\dfrac{i^{(k)}}{k}$ を年利率とする $kn$ 期の年金と、$i$ を年利率とする $n$ 年の年 $k$ 回払年金は、同じキャッシュフローを別の言葉で書いただけです。名称利率の定義がそうなるように作られています。

本試験ではこう問われる

累加確定年金は、恒等式の証明ではなく値を計算させる形で出ます。

タクティクス 生保数理の第1章「累加・累減確定年金系」には6問が並んでいます。H13年度の「永久累加年金の現価」は目標解答時間2分で、この節では最も軽い部類です。$(Ia)_{\angl{\infty}}$ の形を知っていれば即答できますが、忘れても定義の和から等比級数の微分で作れます。

第1章「利息の総合問題」には、$i$ にまつわる式変形のパズル問題が置かれています。タクティクスのコメントには「累加年金現価の式は公式の導出も含めて押さえておこう」とあり、導出まで戻れることが前提の構成になっています。

なお、大小関係を選ばせる形式(証明2の第2式のような不等式)は、平成12年度以降の生保数理で26年度中7年度(2009・2011・2014・2018・2020・2023・2025年度)に出ています。

まとめ

  • 確定年金の記号は、迷ったら定義の和(シグマ)に戻す。戻り先を1つ持っておく。
  • 累加年金の恒等式は、$\dfrac{nv^n}{i}$ が符号違いで消し合うことと、$1-d = v$、$d = iv$ で出る。
  • $(I\ddot{a})_{\angl{n}} < \left(\aann{n}\right)^2$ は、2乗を展開したときの $v^t$ の係数が $t+1$ になることから。
  • 「年 $k$ 回払」は「$1/k$ 年を1期とする年1回払」。名称利率はその言い換え。