この記事で扱う証明
確定年金と生命年金の差に関する式を2つ示します。教科書 第4章 練習問題(2)の(12)(13)です。
証明1(12)
$$\aann{n} - \aaxn{x}{n} = \frac{1}{D_x}\sum_{t=1}^{n-1} C_{x+t-1}\,\aann{n-t}$$
証明2(13)
$$\frac{1}{D_x\,\ddot{s}_{\angl{n}}}\left(C_x\,\ddot{s}_{\angl{1}} + C_{x+1}\,\ddot{s}_{\angl{2}} + \cdots + C_{x+n-1}\,\ddot{s}_{\angl{n}}\right) = \frac{\aaxn{x}{n}}{\ddot{s}_{\angl{n}}} - \frac{D_{x+n}}{D_x}$$
どちらも、確定年金と生命年金のずれを死亡者ごとに割り振る形をしています。
使う道具
記号を確認します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| $\aann{n}$ | 期始払確定年金現価 $= 1 + v + \cdots + v^{n-1}$ |
| $\aaxn{x}{n}$ | 期始払有期生命年金現価 $= \sum_{t=0}^{n-1} v^t\,\npx{t}{x}$ |
| $\ddot{s}_{\angl{n}}$ | 期始払確定年金終価 |
| $C_x, D_x$ | 計算基数($C_x = v^{x+1}d_x$、$D_x = v^x l_x$) |
| $\defer{t}q_x$ | $x$ 歳の人が $t$ 年後の1年間で死ぬ確率 |
確定年金は生存に関係なく払い、生命年金は生きている間だけ払う。だから
$$\aann{n} > \aaxn{x}{n}$$
は当然です。問題は、その差がいくらかということです。
証明1:差を死んだ年ごとに割る
定義の和を並べて引きます。
$$\aann{n} - \aaxn{x}{n} = \sum_{t=0}^{n-1}v^t - \left(1 + \sum_{t=1}^{n-1}v^t\,\npx{t}{x}\right) = \sum_{t=1}^{n-1}v^t\left(1 - \npx{t}{x}\right)$$
$t=0$ の項はどちらも1なので消えました。残ったのは「$t$ 年後に生きていない確率」に割引をかけたものです。
$1 - \npx{t}{x}$ は「$t$ 年以内に死ぬ確率」なので、死んだ年ごとに割れます。
$$1 - \npx{t}{x} = q_x + \defer{1}q_x + \cdots + \defer{t-1}q_x$$
代入して、和の順序を入れ替えます。
$$\sum_{t=1}^{n-1}v^t\left(q_x + \defer{1}q_x + \cdots + \defer{t-1}q_x\right)$$
$q_x$ がどの項に現れるかを見ると、$t = 1$ から $n-1$ まで全部です。$\defer{1}q_x$ は $t = 2$ 以降。順に1つずつ遅れて出てきます。死亡時点ごとに縦に足し直します。
$$= q_x\left(v + v^2 + \cdots + v^{n-1}\right) + \defer{1}q_x\left(v^2 + \cdots + v^{n-1}\right) + \cdots + \defer{n-2}q_x\,v^{n-1}$$
各括弧は、途中から始まる等比数列です。$k$ 番目の括弧は $v^k(1 + v + \cdots + v^{n-1-k}) = v^k\,\aann{n-k}$ の形になります。
$$= \sum_{t=1}^{n-1} \defer{t-1}q_x\;v^{t}\,\aann{n-t}$$
最後に基数に直します。$\defer{t-1}q_x = \dfrac{d_{x+t-1}}{l_x}$ なので
$$v^t\,\defer{t-1}q_x = \frac{v^t\,d_{x+t-1}}{l_x} = \frac{v^{x+t}d_{x+t-1}}{v^x l_x} = \frac{C_{x+t-1}}{D_x}$$
したがって
$$\aann{n} - \aaxn{x}{n} = \frac{1}{D_x}\sum_{t=1}^{n-1} C_{x+t-1}\,\aann{n-t}$$
メーカムの法則で作った生命表($i = 3\%$、$x = 40$、$n = 20$)で、左辺 $0.5759512$、右辺 $0.5759512$ で一致します。
何を言っている式か
右辺は「$x+t-1$ 歳で死んだ人に対して、残り $n-t$ 年分の確定年金現価を払わずに済んだ」という形です。
$t$ 年目の初めに死んでいれば、確定年金ならそこから $n-t$ 年ぶん払い続けますが、生命年金は止まります。その払わずに済んだ分を、死亡者ごとに集計したものが差になる、というのがこの式の中身です。
証明2:終価で見ると生存保険が引かれる
証明1と似ていますが、確定年金の終価 $\ddot{s}_{\angl{n}}$ で割った形になっています。左辺を整理します。
まず $C_{x+t}\,\ddot{s}_{\angl{t+1}}$ を $D$ の式に直します。計算基数の階差の関係 $C_y = v\,D_y - D_{y+1}$ を使うと
$$C_{x+t}\,\ddot{s}_{\angl{t+1}} = \left(v\,D_{x+t} - D_{x+t+1}\right)\ddot{s}_{\angl{t+1}} = D_{x+t}\left(v\,\ddot{s}_{\angl{t+1}}\right) - D_{x+t+1}\,\ddot{s}_{\angl{t+1}}$$
ここで確定年金の終価どうしの関係を使います。$v\,\ddot{s}_{\angl{t+1}} = s_{\angl{t+1}}$ と $\ddot{s}_{\angl{t+1}} = s_{\angl{t+2}} - 1$ です。前者は期始払を1期分割り引くと期末払になること、後者は期始払 $t+1$ 期分が期末払 $t+2$ 期分から初回の1を引いたものであることによります。
$$C_{x+t}\,\ddot{s}_{\angl{t+1}} = D_{x+t}\,s_{\angl{t+1}} - D_{x+t+1}\left(s_{\angl{t+2}} - 1\right)$$
$t = 0$ から $n-1$ まで足します。
$$\sum_{t=0}^{n-1}C_{x+t}\,\ddot{s}_{\angl{t+1}} = \sum_{t=0}^{n-1}\left(D_{x+t}\,s_{\angl{t+1}} - D_{x+t+1}\,s_{\angl{t+2}} + D_{x+t+1}\right)$$
前2項がまた隣どうしで打ち消します。残るのは両端です。
$$= D_x\,s_{\angl{1}} - D_{x+n}\,s_{\angl{n+1}} + \left(D_{x+1} + \cdots + D_{x+n}\right)$$
$s_{\angl{1}} = 1$ なので第1項は $D_x$。これを第3項に合流させると $D_x + D_{x+1} + \cdots + D_{x+n-1} = N_x - N_{x+n}$ となり、$D_{x+n}$ が余ります。
$$= \left(N_x - N_{x+n}\right) - D_{x+n}\left(s_{\angl{n+1}} - 1\right) = \left(N_x - N_{x+n}\right) - D_{x+n}\,\ddot{s}_{\angl{n}}$$
$D_x\,\ddot{s}_{\angl{n}}$ で割ります。
$$\frac{N_x - N_{x+n}}{D_x\,\ddot{s}_{\angl{n}}} - \frac{D_{x+n}}{D_x} = \frac{\aaxn{x}{n}}{\ddot{s}_{\angl{n}}} - \frac{D_{x+n}}{D_x}$$
最後に $\aaxn{x}{n} = \dfrac{N_x - N_{x+n}}{D_x}$ を使いました。数値では両辺とも $0.0454552$ です。
右辺の2つの項
$\dfrac{\aaxn{x}{n}}{\ddot{s}_{\angl{n}}}$ は「生命年金の現価を、確定年金の終価で割ったもの」。$\dfrac{D_{x+n}}{D_x}$ は生存保険 $\Apure{x}{n}$ そのものです。
つまりこの式は「積み立てた分から、$n$ 年後に生き残った人の取り分を引くと、途中で死んだ人に配られる分になる」と読めます。証明1が現価で見た分解、証明2が終価で見た分解です。
2つに共通する一手
| 証明 | 分解の仕方 |
|---|---|
| 1 | 差を死亡年ごとに縦に足し直し、残存期間の確定年金現価を掛ける |
| 2 | $C = vD - D'$ を代入して隣どうしを打ち消し、両端を残す |
どちらも「死んだ人ごとに何が起きたか」を数え直しています。証明1は素直に確率で分け、証明2は基数の階差を使って機械的に処理する。同じ内容を、確率の言葉で書くか基数の言葉で書くかの違いです。
試験では基数で書けと指定されることが多いので、証明2の型のほうが使う機会は多くなります。
つまずきポイント
$\defer{t-1}q_x$ の添字。 $\defer{t-1}q_x$ は「$t-1$ 年生きて、その次の1年で死ぬ確率」です。$q_{x+t-1}$($x+t-1$ 歳の人の1年死亡率)とは違います。前者は $x$ 歳を起点にした確率で、$\defer{t-1}q_x = \npx{t-1}{x}\,q_{x+t-1}$ の関係があります。基数に直すと $\dfrac{d_{x+t-1}}{l_x}$ です。
和の順序を入れ替えるところ。証明1の要は、$t$ について足していた和を、死亡時点について足し直すところです。二重和の順序交換なので、どの項がどこに現れるかを一度書き出して確かめてください。ここを飛ばすと $\aann{n-t}$ の添字が合わなくなります。
$\ddot{s}$ と $s$ の関係を確認する。証明2では $v\,\ddot{s}_{\angl{m}} = s_{\angl{m}}$ と $\ddot{s}_{\angl{m}} = s_{\angl{m+1}} - 1$ の2本を使います。前者は割引で期始払を期末払に直すもの、後者は期数を1つ増やして初回分を引くもの。別の関係なので、片方で代用できません。
差が正であることを確認する。 $\aann{n} > \aaxn{x}{n}$ なので、証明1の右辺は正です。$C$ も $D$ も確定年金現価も正なので確かに正になります。符号が合わない答えが出たら、どこかで引く向きを逆にしています。
本試験ではこう問われる
確定年金と生命年金の差そのものを問う出題は多くありませんが、この分解の型は保険料の還付や払済保険の計算で使います。
タクティクス 生保数理の第3章「合成・還付・特殊・変形系」には10問が並んでいます。H28年度の「年払純保険料」が目標解答時間4分。既存の商品を組み合わせたり、還付を付けたりする設定で、この記事の分解が土台になります。
タクティクスの「解約その他諸変更に伴う計算」(教科書 第9章、18問)でも、払済保険や延長保険の計算で「途中で止まった分をどう扱うか」が論点になります。
また、基数での表現を求める出題は平成12年度以降の生保数理で頻繁にあり、「計算基数」の語だけでも26年度中15年度に登場します。
まとめ
- 確定年金と生命年金の差は、死んだ人に払わずに済んだ分の合計。
- 差を死亡年ごとに縦に足し直すと、残存期間 $n-t$ 年の確定年金現価が掛かる形になる。
- 基数に直すと $\dfrac{1}{D_x}\sum C_{x+t-1}\aann{n-t}$。$v^t\,\defer{t-1}q_x = C_{x+t-1}/D_x$ が変換の要。
- 終価で見ると、積立分から生存保険 $D_{x+n}/D_x$ を引いた形になる。
- 証明2は $C = vD - D'$ の階差を使って隣どうしを打ち消す型。基数の問題ではこちらが速い。