この記事で扱う証明
計算基数に関する式を4つ示します。教科書 第4章 練習問題(2)の(10)(11)です。
証明1(10)
$$D_x > \bar{M}_x > M_x$$
証明2(11a)
$$M_x = D_x - d\,N_x$$
証明3(11b)
$$\frac{1}{D_x}\left(\sum_{t=0}^{n-1} C_{x+t}\,v^{\,n-t-1} + D_{x+n}\right) = v^n$$
証明4(11c)
$$\sum_{t=1}^{\infty} l_{x+t}\,A_{x+t} = l_x\,a_x$$
4式とも、基数の定義に戻して $v$ と $l$ の式に開くだけで出ます。
使う道具
計算基数は、どれも「割引した人数」です。
| 記号 | 定義 | 読み方 |
|---|---|---|
| $D_x$ | $v^x\,l_x$ | $x$ 歳の生存者を、生まれた時点まで割り引いた人数 |
| $N_x$ | $D_x + D_{x+1} + \cdots$ | $x$ 歳以降の $D$ の累計 |
| $C_x$ | $v^{x+1}\,d_x$ | $x$ 歳で死ぬ人数を、年末払で割り引いたもの |
| $\bar{C}_x$ | $v^{x+1/2}\,d_x$ | 同じく、年央払(即時払の近似)で割り引いたもの |
| $M_x$ | $C_x + C_{x+1} + \cdots$ | $x$ 歳以降の $C$ の累計 |
| $\bar{M}_x$ | $\bar{C}_x + \bar{C}_{x+1} + \cdots$ | 同じく $\bar{C}$ の累計 |
ここで $d_x = l_x - l_{x+1}$ は $x$ 歳の死亡者数です。
保険料と年金は、基数の比で書けます。
$$A_x = \frac{M_x}{D_x}, \qquad \ddot{a}_x = \frac{N_x}{D_x}, \qquad a_x = \frac{N_{x+1}}{D_x}$$
$D$ で割るのは、$x$ 歳時点の1人あたりに直すためです。
証明1:割引の重さで並ぶ
3つを比べます。まず $D_x$ と $\bar{M}_x$ です。
$x$ 歳の生存者は、いずれ全員が死にます。したがって
$$l_x = d_x + d_{x+1} + d_{x+2} + \cdots$$
両辺に $v^x$ を掛けます。
$$D_x = v^x\left(d_x + d_{x+1} + d_{x+2} + \cdots\right) = v^x d_x + v^x d_{x+1} + \cdots$$
一方、$\bar{M}_x$ は同じ死亡者数を、それぞれもっと先の時点まで割り引いたものです。
$$\bar{M}_x = v^{x+1/2}d_x + v^{x+3/2}d_{x+1} + v^{x+5/2}d_{x+2} + \cdots$$
項ごとに比べると、$v < 1$ なので $v^x d_x > v^{x+1/2}d_x$、以下すべて同様。したがって $D_x > \bar{M}_x$ です。
$\bar{M}_x$ と $M_x$ も同じ理屈です。
$$\bar{C}_x = v^{x+1/2}d_x > v^{x+1}d_x = C_x$$
年央に払うほうが年末に払うより現価が大きい。項ごとに大きいので、累計も大きくなります。
メーカムの法則で作った生命表($i = 3\%$、$x = 40$)で確かめると
$$D_{40} = 0.29315526 > \bar{M}_{40} = 0.10712965 > M_{40} = 0.10555798$$
意味を読んでおきます。$D_x$ は「今いる人数の現価」、$M_x$ は「その人たちが死んだときに払う保険金の現価」。全員がいずれ死ぬので保険金の総額は人数と同じですが、払うのが先になるぶん割り引かれて小さくなります。$\bar{M}_x$ と $M_x$ の差は、支払いを年央にするか年末にするかの半年分です。
証明2:$C$ を $D$ の差で書く
$C_x$ の定義を $D$ で書き直します。$d_x = l_x - l_{x+1}$ なので
$$C_x = v^{x+1}\left(l_x - l_{x+1}\right) = v \cdot v^x l_x - v^{x+1}l_{x+1} = v\,D_x - D_{x+1}$$
この1行が、以下すべての鍵です。$C$ は $D$ の階差で書ける、ということです。
累計をとります。
$$M_x = \sum_{t \ge 0} C_{x+t} = \sum_{t \ge 0}\left(v\,D_{x+t} - D_{x+t+1}\right) = v\sum_{t\ge0}D_{x+t} - \sum_{t\ge0}D_{x+t+1}$$
前者は $v\,N_x$、後者は $N_{x+1} = N_x - D_x$ です。
$$M_x = v\,N_x - \left(N_x - D_x\right) = D_x - (1 - v)N_x = D_x - d\,N_x$$
最後に $1 - v = d$ を使いました。数値では $M_{40} = 0.1055580$、$D_{40} - d\,N_{40} = 0.1055580$ で一致します。
両辺を $D_x$ で割ると、見慣れた式になります。
$$A_x = 1 - d\,\ddot{a}_x$$
保険と年金を結ぶあの式は、基数の世界では「$C$ が $D$ の階差である」ことの言い換えでした。
証明3:階差の和は両端だけ残る
示すのは次の式です。
$$\frac{1}{D_x}\left(\sum_{t=0}^{n-1} C_{x+t}\,v^{\,n-t-1} + D_{x+n}\right) = v^n$$
左辺の意味は「$n$ 年の養老保険」です。$n$ 年以内に死ねば保険金を $n$ 年後の時点まで利殖して受け取り、生き残れば $n$ 年後に受け取る。どちらにしても $n$ 年後に必ず1を受け取るので、現価は $v^n$ になるはずだ、という主張です。
証明2で得た $C_{x+t} = v\,D_{x+t} - D_{x+t+1}$ を代入します。
$$\sum_{t=0}^{n-1}v^{\,n-t-1}\left(v\,D_{x+t} - D_{x+t+1}\right) = \sum_{t=0}^{n-1}\left(v^{\,n-t}D_{x+t} - v^{\,n-t-1}D_{x+t+1}\right)$$
中身を見ると、隣どうしが打ち消し合う形です。 $t$ の項の後半 $v^{n-t-1}D_{x+t+1}$ と、$t+1$ の項の前半 $v^{n-t-1}D_{x+t+1}$ が同じだからです。順に消えて、両端だけが残ります。
$$= v^n D_x - v^0 D_{x+n} = v^n D_x - D_{x+n}$$
$D_{x+n}$ を足し戻せば $v^n D_x$。$D_x$ で割って $v^n$ です。
数値では両辺とも $0.5536758$($i=3\%$、$x=40$、$n=20$)になります。
証明4:生存者全員の保険料を足す
示すのは
$$\sum_{t=1}^{\infty} l_{x+t}\,A_{x+t} = l_x\,a_x$$
左辺は「1年後、2年後……の各時点の生存者全員に終身保険の一時払保険料を持たせて、それを足したもの」。右辺は「$x$ 歳の人全員に期末払終身年金を出すときの現価」です。
$A_{x+t} = \dfrac{M_{x+t}}{D_{x+t}}$ と $D_{x+t} = v^{x+t}l_{x+t}$ を使います。
$$l_{x+t}\,A_{x+t} = l_{x+t}\cdot\frac{M_{x+t}}{v^{x+t}l_{x+t}} = (1+i)^{x+t}\,M_{x+t}$$
証明2の $M_y = v\,N_y - N_{y+1}$ を入れます。
$$= (1+i)^{x+t}\left(v\,N_{x+t} - N_{x+t+1}\right) = (1+i)^{x+t-1}N_{x+t} - (1+i)^{x+t}N_{x+t+1}$$
またしても隣どうしが打ち消す形です。 $t$ の項の後半と $t+1$ の項の前半が同じ。$t = 1$ から足し上げると、最初の前半だけが残ります。
$$\sum_{t=1}^{\infty}\left\{(1+i)^{x+t-1}N_{x+t} - (1+i)^{x+t}N_{x+t+1}\right\} = (1+i)^x N_{x+1}$$
これを $l_x$ と $a_x$ で書き直します。$D_x = v^x l_x$ より $(1+i)^x = \dfrac{l_x}{D_x}$ なので
$$= \frac{l_x}{D_x}N_{x+1} = l_x \cdot \frac{N_{x+1}}{D_x} = l_x\,a_x$$
数値では両辺とも $20.0539799$ です。
4つに共通する一手
| 証明 | やったこと |
|---|---|
| 1 | 定義の $v$ の指数を比べる |
| 2 | $C_x = v D_x - D_{x+1}$ を作り、累計する |
| 3 | 同じ式を代入し、隣どうしを打ち消す |
| 4 | $M_y = vN_y - N_{y+1}$ を代入し、隣どうしを打ち消す |
$C_x = v\,D_x - D_{x+1}$ という階差の形が、証明2から4までを支えています。計算基数の恒等式が次々に出るのは、$C$ と $M$ が $D$ と $N$ の階差になっているからです。階差の和が両端だけになる、という高校で習う性質がそのまま効いています。
つまずきポイント
$C_x$ の $v$ の指数を間違える。 $C_x = v^{x+1}d_x$ です。$v^x$ ではありません。$x$ 歳で死んだ人への保険金は年末($x+1$ 歳時点)に払うので、そこまで割り引きます。$\bar{C}_x = v^{x+1/2}d_x$ の $1/2$ も同じ理屈で、年央に払うという近似です。
$N_x$ と $N_{x+1}$ を取り違える。 $\ddot{a}_x = \dfrac{N_x}{D_x}$(期始払)、$a_x = \dfrac{N_{x+1}}{D_x}$(期末払)です。期始払は契約時点の分も払うので $D_x$ を含む $N_x$、期末払は1年後からなので $N_{x+1}$。添字が1つずれるだけで期始払と期末払が入れ替わります。
$D_x > M_x$ を「保険料は1より小さい」と混同する。 $D_x > M_x$ の両辺を $D_x$ で割れば $A_x < 1$ で、確かに一時払保険料は1未満です。ただし証明1が言っているのは基数どうしの大小で、割ってから初めて保険料の話になります。順序を意識してください。
本試験ではこう問われる
計算基数は、答えを基数表現で書かせる形で出ます。生命関数で立てた式を最後に基数へ直す、という作業がそのまま得点になります。
タクティクス 生保数理の第3章「保険料&生命関数系」には8問が並んでいます。H13年度の「一時払い純保険料」が目標解答時間4分、H26年度の「総合問題」には「基数での表現に十分習熟しておくことも合格へ」というコメントが付いています。
平成12年度以降の生保数理で「計算基数」の語が出るのは26年度中15年度です。語が出ない年度でも $D_x$ や $N_x$ は使うので、実質的にはほぼ毎年触れることになります。
まとめ
- 計算基数はどれも「割引した人数」か「その累計」。定義に戻れば大小も恒等式も出る。
- $D_x > \bar{M}_x > M_x$ は、同じ死亡者数をどこまで割り引くかの違い。
- $C_x = v\,D_x - D_{x+1}$ が階差の形。ここから $M_x = D_x - d\,N_x$ が出て、割れば $A_x = 1 - d\,\ddot{a}_x$。
- 階差の和は両端だけ残る。証明3と証明4はどちらもこの性質を使っている。
- $\ddot{a}_x = N_x/D_x$、$a_x = N_{x+1}/D_x$。添字1つで期始払と期末払が入れ替わる。