この記事で扱う証明

完全年金の近似式を2つ示します。教科書 第4章 練習問題(3)の(16)(17)です。

証明1(16)

$$i^{(k)}\,\mathring{a}^{(k)}_{x:\angl{n}} \fallingdotseq \delta\,\abxn{x}{n}$$

証明2(17)

$$\mathring{a}^{(k)}_{x:\angl{n}} \fallingdotseq \left(1 - \frac{i^{(k)}}{2k}\right)\abxn{x}{n} \fallingdotseq v^{1/(2k)}\,\abxn{x}{n}$$

どちらも「年 $k$ 回払は連続払より平均して半期分ほど受け取りが遅れる」という近似的な見方から出ます。

完全年金とは

まず記号を確認します。$\mathring{a}$ は完全年金(apportionable annuity)で、通常の年 $k$ 回払年金との違いは死亡した期の扱いです。

記号 死亡した期の支払い
$a^{(k)}_{x:\angl{n}}$ 死亡した期の分は払わない
$\mathring{a}^{(k)}_{x:\angl{n}} $ 死亡した時点までの日数に応じて按分して払う

完全年金は、年金を「日割りで受け取れる」形に近づけたものです。$k \to \infty$ とすれば連続払 $\abxn{x}{n}$ に一致します。

使う関係式は1本です。

$$\mathring{a}^{(k)}_{x:\angl{n}} \fallingdotseq \frac{\delta}{i^{(k)}}\,\abxn{x}{n}$$

証明1はこれを示すもの、証明2はこれを扱いやすい形に直すものです。

証明1:連続払を $k$ 回払に読み替える

連続払の年金は、時間の刻みが無限に細かい年金です。これを年 $k$ 回払に置き換えると、支払いのタイミングが遅れます。

連続払で $[t, t+1/k)$ の間に少しずつ受け取っていたものを、$k$ 回払では期末にまとめて受け取る。この差が、ちょうど利率の記号の違いに現れます。

$$\delta\,\abxn{x}{n} = i^{(k)}\,\mathring{a}^{(k)}_{x:\angl{n}}$$

左辺は「連続で受け取る流れに利力を掛けたもの」、右辺は「$k$ 回払で受け取る流れに名称利率を掛けたもの」。どちらも同じキャッシュフローを別の刻みで見ているので、利率記号を合わせれば等しくなる、というのがこの式の意味です。

第1章で見た確定年金の関係式

$$\delta\,\bar{a}_{\angl{n}} = i^{(k)}\,a^{(k)}_{\angl{n}} = i\,\ann{n} = d\,\aann{n} = 1 - v^n$$

の、生命年金版にあたります。確定年金ではすべて厳密に等しくなりますが、生命年金では死亡の扱いが刻みによって変わるので近似になります。

メーカムの法則で作った生命表($i = 3\%$、$x = 40$、$n = 20$)で $\dfrac{\delta}{i^{(k)}}\abxn{40}{20}$ を計算します。

$k$ $\dfrac{\delta}{i^{(k)}}\abxn{x}{n}$
1 $14.277479$
2 $14.383769$
4 $14.437112$
12 $14.472747$

$\abxn{40}{20} = 14.490586$ なので、$k$ を増やすほど連続払に近づいています。$k = 12$ で差は $0.018$、$0.12\%$ です。

証明2:半期分の割引として書き直す

証明1の式を $\mathring{a}$ について解きます。

$$\mathring{a}^{(k)}_{x:\angl{n}} = \frac{\delta}{i^{(k)}}\,\abxn{x}{n}$$

$\dfrac{\delta}{i^{(k)}}$ を扱いやすい形にします。利力を名称利率で展開した式を使うと

$$\delta = i^{(k)} - \frac{1}{2k}\left(i^{(k)}\right)^2 + \cdots$$

でした。$i^{(k)}$ で割ります。

$$\frac{\delta}{i^{(k)}} = 1 - \frac{i^{(k)}}{2k} + \cdots$$

2次の項までで打ち切れば第1の近似式です。

$$\mathring{a}^{(k)}_{x:\angl{n}} \fallingdotseq \left(1 - \frac{i^{(k)}}{2k}\right)\abxn{x}{n}$$

第2の形は、この係数を割引率で書いたものです。$\dfrac{i^{(k)}}{2k}$ は「半期($\dfrac{1}{2k}$ 年)分の利息」なので、それを引くのは半期分割り引くのとほぼ同じです。

$$v^{1/(2k)} = \left(1 + \frac{i^{(k)}}{k}\right)^{-1/2} \fallingdotseq 1 - \frac{i^{(k)}}{2k}$$

したがって

$$\mathring{a}^{(k)}_{x:\angl{n}} \fallingdotseq v^{1/(2k)}\,\abxn{x}{n}$$

3つの値を並べます。左端の $\dfrac{\delta}{i^{(k)}}\bar{a}$ は、証明1の関係式の右辺をそのまま計算した値で、残り2列の近似がどれだけこれに迫るかの基準になります(教科書の流儀では、この関係式自体も生命年金では「よい近似」です)。

$k$ $\dfrac{\delta}{i^{(k)}}\bar{a}$(基準値) $\left(1 - \dfrac{i^{(k)}}{2k}\right)\bar{a}$ $v^{1/(2k)}\,\bar{a}$
1 $14.277479$ $14.273227$ $14.277999$
2 $14.383769$ $14.382710$ $14.383900$
4 $14.437111$ $14.436847$ $14.437144$
12 $14.472746$ $14.472717$ $14.472750$

$k = 1$ でも小数第2位まで一致しています。$k$ を増やすと差はさらに縮み、$k = 12$ では小数第4位まで揃います。

$v^{1/(2k)}$ のほうが、$\left(1 - \frac{i^{(k)}}{2k}\right)$ より基準値に近いという傾向も読み取れます。前者は展開の高次の項を暗に含んでいるためです。

意味を1行で

$$\mathring{a}^{(k)}_{x:\angl{n}} \fallingdotseq v^{1/(2k)}\,\abxn{x}{n}$$

「年 $k$ 回払の完全年金は、連続払の年金を半期分だけ割り引いたもの」。これがこの記事の結論です。

$k$ 回払では、1期の真ん中で受け取るのが平均的な姿になります。連続払と比べると平均して $\dfrac{1}{2k}$ 年だけ遅い。だから $v^{1/(2k)}$ を掛ける、という理解です。

$k = 1$(年1回払)なら半年分の割引、$k = 12$(毎月払)なら半月分の割引。$k \to \infty$ で割引が消えて連続払に一致します。

つまずきポイント

$\mathring{a}$ と $a^{(k)}$ を混同する。完全年金は死亡した期の分を按分して払います。通常の年 $k$ 回払年金は払いません。記号の上の小さな丸を見落とすと、別の量を計算することになります。問題文が「完全年金」と書いているかを確認してください。

$i^{(k)}$ と $\dfrac{i^{(k)}}{k}$ を取り違える。 $i^{(k)}$ は年率換算した名称利率、$\dfrac{i^{(k)}}{k}$ が1期あたりの利率です。近似式の $\dfrac{i^{(k)}}{2k}$ は「1期の利率の半分」つまり半期分の利息にあたります。$k$ で割るのを忘れると係数が $k$ 倍ずれます。

近似の精度を過小評価しない。この数値例では $k=1$ でも $14.2732$ 対 $14.2775$ で、差は $0.03\%$。試験の実戦では十分な精度です。近似だからと避けて定義の積分に戻ると、時間を無駄にします。逆に、問題文が計算方法を指定していれば、それに従ってください。

$\delta$ と $i^{(k)}$ の大小。 $\delta < i^{(k)} < i$ なので $\dfrac{\delta}{i^{(k)}} < 1$。したがって完全年金は連続払より小さくなります。上の表でもすべて $14.4906$ を下回っています。比が1を超えたら、どこかで記号を取り違えています。

本試験ではこう問われる

完全年金は、タクティクス 生保数理の第3章「完全年金系」に2問が置かれています。この節では最も問題数が少なく、出題頻度も高くありません。

ただし年 $k$ 回払の近似という発想は、第3章の他の節でも使います。「保険料&生命関数系」8問や「合成・還付・特殊・変形系」10問には、$k$ 回払の設定が混ざっています。

平成12年度以降の生保数理で「完全年金」の語が出るのは限られた年度ですが、$\dfrac{k-1}{2k}$ という係数は年 $k$ 回払の近似式全般に現れるので、形として覚えておく価値があります。

まとめ

  • 完全年金は、死亡した期の分を日割りで払う年金。$k \to \infty$ で連続払に一致する。
  • $i^{(k)}\mathring{a}^{(k)} = \delta\bar{a}$。同じキャッシュフローを違う刻みで見ているだけ。
  • 近似式は $\mathring{a}^{(k)} \fallingdotseq v^{1/(2k)}\bar{a}$。年 $k$ 回払は連続払より半期分だけ遅い。
  • $k=1$ でも誤差は $0.03\%$ 程度。近似を避ける理由はない。
  • $v^{1/(2k)}$ のほうが $\left(1 - \frac{i^{(k)}}{2k}\right)$ より基準値に近い。