この記事で扱う証明

微分の式を4つ示します。教科書 第4章 練習問題(3)の(10)(11)(12)です。

証明1(10前半)— 利率での微分

$$\frac{d\,\abxn{x}{n}}{di} = -v\,(\bar{I}\bar{a})_{x:\angl{n}}$$

証明2(10後半)— 利力での微分

$$\frac{d\,\abxn{x}{n}}{d\delta} = -(\bar{I}\bar{a})_{x:\angl{n}}$$

証明3(11)— 年齢での微分(累加年金)

$$\frac{d}{dx}(\bar{I}\bar{a})_{x:\angl{n}} = \mu_x\,(\bar{I}\bar{a})_{x:\angl{n}} - (\bar{I}\bar{A})^{\,1}_{x:\angl{n}}$$

証明4(12)— 年齢での微分(累加保険)

$$\frac{d}{dx}(\bar{I}\bar{A})_x = -\bar{A}_x + \left(\delta + \mu_x\right)(\bar{I}\bar{A})_x$$

前半2つは利率での微分、後半2つは年齢での微分です。同じ量でも、何で微分するかで出てくる式がまったく違います。

使う道具

連続払年金の定義から始めます。

$$\abxn{x}{n} = \int_0^n v^t\,\npx{t}{x}\,dt, \qquad v^t = e^{-\delta t}$$

利率で微分するときに効くのは $v^t$ だけです。生存確率 $\npx{t}{x}$ には $i$ も $\delta$ も入っていません。

年齢で微分するときは逆で、効くのは $\npx{t}{x}$ だけです。生存確率を年齢で微分した式を使います。

$$\frac{\partial}{\partial x}\,\npx{t}{x} = \npx{t}{x}\left(\mu_x - \mu_{x+t}\right)$$

累加の記号も再掲しておきます。

$$(\bar{I}\bar{a})_{x:\angl{n}} = \int_0^n t\,v^t\,\npx{t}{x}\,dt, \qquad (\bar{I}\bar{A})^{\,1}_{x:\angl{n}} = \int_0^n t\,v^t\,\npx{t}{x}\,\mu_{x+t}\,dt$$

証明2:$\delta$ で微分すると $t$ が降りてくる

先に利力での微分を扱います。こちらのほうが素直だからです。

$v^t = e^{-\delta t}$ を $\delta$ で微分します。

$$\frac{d}{d\delta}e^{-\delta t} = -t\,e^{-\delta t} = -t\,v^t$$

指数の肩から $-t$ が降りてきます。積分の中に入れると

$$\frac{d\,\abxn{x}{n}}{d\delta} = \int_0^n \left(-t\,v^t\right)\npx{t}{x}\,dt = -\int_0^n t\,v^t\,\npx{t}{x}\,dt = -(\bar{I}\bar{a})_{x:\angl{n}}$$

累加年金が出ました。微分で降りてきた $t$ が、そのまま累加の重みになっています。

意味を読んでおきます。利力が上がると年金現価は下がりますが、下がり方は「支払いがどれだけ先か」で重み付けされます。$t$ 年後の支払いは $t$ に比例して強く影響を受ける。その総和が累加年金です。

メーカムの法則で作った生命表($i = 3\%$、$x = 40$、$n = 20$)で数値微分すると $-127.93022$、式の値も $-127.93022$ です。

証明1:$i$ で微分すると $v$ が1つ余分に付く

$i$ での微分は、$\delta$ を経由します。連鎖律です。

$$\frac{d\,\abxn{x}{n}}{di} = \frac{d\delta}{di}\cdot\frac{d\,\abxn{x}{n}}{d\delta}$$

$\delta = \log(1+i)$ なので $\dfrac{d\delta}{di} = \dfrac{1}{1+i} = v$。したがって

$$\frac{d\,\abxn{x}{n}}{di} = v\cdot\left\{-(\bar{I}\bar{a})_{x:\angl{n}}\right\} = -v\,(\bar{I}\bar{a})_{x:\angl{n}}$$

数値微分で $-124.20410$、式の値も $-124.20410$ です。

証明2の $-127.93$ と比べると、ちょうど $v = 0.9709$ 倍になっています。$i$ で測るか $\delta$ で測るかの違いだけです。

感応度として読む

$i = 3\%$、$n = 20$、$x = 40$ のとき $\abxn{40}{20} = 14.49$ です。ここで利率が $0.1$ ポイント下がると

$$\Delta\abxn{x}{n} \fallingdotseq -124.20 \times (-0.001) = 0.124$$

年金現価が $0.124$ 増えます。もとの $14.49$ に対して $0.86\%$ ほどです。

予定利率の引き下げが保険料の引き上げに直結する仕組みが、この微分係数に表れています。タクティクスの「計算基礎の変更」(教科書 第6章)で扱う内容の、感度の側面です。

証明3:年齢での微分は普通の年金と同じ形

年齢での微分に移ります。効くのは生存確率だけです。

$$\frac{d}{dx}(\bar{I}\bar{a})_{x:\angl{n}} = \int_0^n t\,v^t\,\frac{\partial}{\partial x}\npx{t}{x}\,dt = \int_0^n t\,v^t\,\npx{t}{x}\left(\mu_x - \mu_{x+t}\right)dt$$

括弧を開いて2つに割ります。$\mu_x$ は $t$ に依らないので外へ出せます。

$$= \mu_x\int_0^n t\,v^t\,\npx{t}{x}\,dt - \int_0^n t\,v^t\,\npx{t}{x}\,\mu_{x+t}\,dt = \mu_x\,(\bar{I}\bar{a})_{x:\angl{n}} - (\bar{I}\bar{A})^{\,1}_{x:\angl{n}}$$

累加でない年金の微分 $\dfrac{d\bar{a}_{x:\angl{n}}}{dx} = \mu_x\bar{a}_{x:\angl{n}} - \bar{A}^{\,1}_{x:\angl{n}}$ と、まったく同じ形です。累加の記号に変わっただけで、手順は変わりません。

数値微分で $-0.615674$、式の値も $-0.615674$ です。

証明4:累加保険の年齢微分

証明3の終身版と、連続版の恒等式を組み合わせます。累加保険の恒等式

$$(\bar{I}\bar{A})_x = \bar{a}_x - \delta\,(\bar{I}\bar{a})_x$$

の両辺を $x$ で微分します。

$$\frac{d}{dx}(\bar{I}\bar{A})_x = \frac{d\,\bar{a}_x}{dx} - \delta\,\frac{d}{dx}(\bar{I}\bar{a})_x$$

第1項には $\dfrac{d\bar{a}_x}{dx} = \bar{a}_x(\mu_x + \delta) - 1$、第2項には証明3の終身版 $\mu_x(\bar{I}\bar{a})_x - (\bar{I}\bar{A})_x$ を入れます。

$$= \bar{a}_x\left(\mu_x + \delta\right) - 1 - \delta\,\mu_x\,(\bar{I}\bar{a})_x + \delta\,(\bar{I}\bar{A})_x$$

ここで $\delta(\bar{I}\bar{a})_x = \bar{a}_x - (\bar{I}\bar{A})_x$ を使って $(\bar{I}\bar{a})_x$ を消します。

$$= \bar{a}_x\left(\mu_x + \delta\right) - 1 - \mu_x\left\{\bar{a}_x - (\bar{I}\bar{A})_x\right\} + \delta\,(\bar{I}\bar{A})_x$$

$\mu_x\bar{a}_x$ が打ち消し合い

$$= \delta\,\bar{a}_x - 1 + \left(\mu_x + \delta\right)(\bar{I}\bar{A})_x$$

最後に $\bar{A}_x = 1 - \delta\bar{a}_x$、つまり $\delta\bar{a}_x - 1 = -\bar{A}_x$ を使います。

$$\frac{d}{dx}(\bar{I}\bar{A})_x = -\bar{A}_x + \left(\delta + \mu_x\right)(\bar{I}\bar{A})_x$$

数値微分で $0.00298477$、式の値も $0.00298477$ です。

4つを並べる

証明 何で微分したか 効いた部分 出てきたもの
1 $i$ $v^t$ $-v\,(\bar{I}\bar{a})$
2 $\delta$ $v^t$ $-(\bar{I}\bar{a})$
3 $x$ $\npx{t}{x}$ $\mu_x(\bar{I}\bar{a}) - (\bar{I}\bar{A})^{\,1}$
4 $x$ $\npx{t}{x}$ $-\bar{A}_x + (\delta+\mu_x)(\bar{I}\bar{A})_x$

利率で微分すると $t$ が降りてきて累加になり、年齢で微分すると死力の差が出て保険が現れます。微分する変数で、答えの姿がまったく違います。

つまずきポイント

$i$ と $\delta$ のどちらで微分するかを確認する。答えが $v$ 倍だけ違います。数値例では $-124.20$ と $-127.93$。問題文が「予定利率が」と書いていれば $i$、「利力が」と書いていれば $\delta$ です。$\dfrac{d\delta}{di} = v$ を挟むかどうかだけの差ですが、選択肢はどちらも用意されます。

符号を落とさない。利率が上がれば年金現価は下がるので、微分は負です。数値でも $-124.20$。正の値が出たら符号を落としています。一方、年齢での微分は累加保険では正(証明4は $+0.00298$)で、累加年金では負(証明3は $-0.616$)。量によって符号が変わるので、直感と合うかを毎回確かめてください。

$(\bar{I}\bar{A})^{\,1}$ と $(\bar{I}\bar{A})$ を区別する。証明3の右辺に出るのは上付き1の付いた定期のほうです。証明4に出るのは終身なので上付きが付きません。同じ記事に両方が出てくるので、写し落とさないでください。

証明4で $(\bar{I}\bar{a})_x$ を残さない。途中で $\delta(\bar{I}\bar{a})_x = \bar{a}_x - (\bar{I}\bar{A})_x$ を使って消しています。ここを消さないと、答えに $(\bar{I}\bar{a})$ が残って与式の形になりません。結論の式に何が現れるかを先に見て、消すべき量を決めるのが確実です。

本試験ではこう問われる

微分そのものより、微分の結果を使って値を求めさせる形で出ます。

タクティクス 生保数理の第3章「微分系」には3問が置かれています。H22年度の問題が目標解答時間4分で、この節では最も軽い部類です。

利率での微分は、タクティクスの「計算基礎の変更」(教科書 第6章)と繋がります。「予定利率の変更」が4問、「予定死亡率の変更」が12問。予定利率を動かしたときに保険料や責任準備金がどう動くかを問う出題で、感応度の考え方が土台になります。

平成12年度以降の生保数理では、大小関係を選ばせる形式が26年度中7年度(2009・2011・2014・2018・2020・2023・2025年度)に出ており、微分の符号が論点になることがあります。

まとめ

  • 利率で微分すると $v^t$ から $t$ が降りてきて、累加年金が現れる。支払いが先であるほど影響が大きいことの表れ。
  • $\delta$ で微分すれば $-(\bar{I}\bar{a})$、$i$ で微分すればそれに $v$ が掛かる。$\dfrac{d\delta}{di} = v$ の差。
  • 年齢で微分すると効くのは生存確率だけ。死力の差 $\mu_x - \mu_{x+t}$ から年金と保険に割れる。
  • 累加保険の年齢微分は、恒等式を微分して $(\bar{I}\bar{a})$ を消せば出る。
  • 数値例では利率0.1ポイントの低下で年金現価が0.86%増える。予定利率の引き下げが保険料に効く仕組み。