この記事で扱う証明

累加保険と累加年金に関する式を3つ示します。教科書 第4章 練習問題(3)の(1)(2)(3)です。

証明1(1)— $(IA)_{x:\angl{n}} = (IA)^{\,1}_{x:\angl{n}} + n\,\Apure{x}{n}$ と定めると

$$(IA)_{x:\angl{n}} = \aaxn{x}{n} - d\,(I\ddot{a})_{x:\angl{n}}$$

証明2(2)— $q_x < q_{x+t}\ (t = 1, 2, \dots)$ のとき

$$(I\ddot{a})_x < \frac{\ddot{a}_x}{v\,q_x + d} < \left(\frac{1+i}{q_x + i}\right)^2$$

証明3(3)— $q_x < q_{x+1} < q_{x+2} < \cdots$ のとき

$$\frac{(I\ddot{a})_{x:\angl{n}}}{\aaxn{x}{n}} < \aaxn{x}{n}$$

3問とも、普通の保険で使った道具がそのまま効きます。証明1は $A = 1 - d\,\ddot{a}$ の累加版、証明3は第1章で見た確定年金の不等式の生命版です。

使う道具

累加の記号を定義から確認します。

記号 定義 内容
$(IA)^{\,1}_{x:\angl{n}}$ $\displaystyle\sum_{t=1}^{n} t\,v^t\,\npx{t-1}{x}\,q_{x+t-1}$ $t$ 年目に死んだら $t$ を払う定期保険
$(IA)_{x:\angl{n}}$ $(IA)^{\,1}_{x:\angl{n}} + n\,\Apure{x}{n}$ 上に「$n$ 年生きたら $n$」を足したもの
$(I\ddot{a})_{x:\angl{n}}$ $\displaystyle\sum_{t=0}^{n-1}(t+1)\,v^t\,\npx{t}{x}$ $t$ 年目の初めに $t+1$ を払う年金

普通の保険で使った関係式も並べておきます。

$$\Aendow{x}{n} = 1 - d\,\aaxn{x}{n}$$

証明1が示すのは、この式の「1」が $\aaxn{x}{n}$ に、「$\ddot{a}$」が $(I\ddot{a})$ に置き換わった形です。

証明1:$1$ が $\ddot{a}$ に置き換わる

$(I\ddot{a})_{x:\angl{n}}$ に $d$ を掛けたものを、$\aaxn{x}{n}$ から引きます。$d = 1 - v$ を使います。

$$\aaxn{x}{n} - d\,(I\ddot{a})_{x:\angl{n}} = \sum_{t=0}^{n-1}v^t\,\npx{t}{x} - (1-v)\sum_{t=0}^{n-1}(t+1)v^t\,\npx{t}{x}$$

第2項の $(1-v)$ を分配します。

$$= \sum_{t=0}^{n-1}v^t\,\npx{t}{x}\left\{1 - (t+1) + (t+1)v\right\}$$

括弧の中を整理します。$1 - (t+1) = -t$ なので

$$\left\{-t + (t+1)v\right\}$$

したがって

$$\aaxn{x}{n} - d\,(I\ddot{a})_{x:\angl{n}} = \sum_{t=0}^{n-1}\left\{(t+1)v^{t+1} - t\,v^t\right\}\npx{t}{x}$$

ここで、$\npx{t}{x}$ が付いていることに注意しながら、$t$ 年目の項と $t+1$ 年目の項を見比べます。$\npx{t}{x} = \npx{t+1}{x} + \npx{t}{x}\,q_{x+t}$ と分けると、$(t+1)v^{t+1}$ の項が

$$(t+1)v^{t+1}\npx{t}{x} = (t+1)v^{t+1}\npx{t+1}{x} + (t+1)v^{t+1}\npx{t}{x}\,q_{x+t}$$

第1項は次の $t$ の $-t\,v^t\npx{t}{x}$ と打ち消し合い、第2項が残ります。$t$ を1つずらして書けば、これは $t$ 年目に死んだ人に $t$ を払う項です。

順に足し上げると、残るのは死亡に対する支払いと、最後まで生き残った分だけになります。

$$= \sum_{t=1}^{n} t\,v^t\,\npx{t-1}{x}\,q_{x+t-1} + n\,v^n\,\npx{n}{x} = (IA)^{\,1}_{x:\angl{n}} + n\,\Apure{x}{n} = (IA)_{x:\angl{n}}$$

メーカムの法則で作った生命表($i = 3\%$、$x = 40$、$n = 20$)で、両辺とも $10.7363871$ で一致します。

普通の保険の $\Aendow{x}{n} = 1 - d\,\aaxn{x}{n}$ と並べてみます。

保険 $=$ 年金の側 $-\;d\;\times$ 年金
普通 $\Aendow{x}{n}$ $1$ $\aaxn{x}{n}$
累加 $(IA)_{x:\angl{n}}$ $\aaxn{x}{n}$ $(I\ddot{a})_{x:\angl{n}}$

各項が1段ずつ「累加」されています。保険金が毎年1ずつ増える設計なので、定数の1が年金に、年金が累加年金に上がる、という対応です。

証明3:確定年金の不等式が生命版になる

先に証明3を扱います。第1章 練習問題(2)の(7)で、確定年金について

$$\frac{(I\ddot{a})_{\angl{n}}}{\aann{n}} < \aann{n}$$

を示しました。証明は、$\left(\aann{n}\right)^2$ を展開したときの $v^t$ の係数が $t+1$ になることを使うものでした。

生命年金でも同じことが言えます。$\aaxn{x}{n}$ を2乗して展開します。

$$\left(\aaxn{x}{n}\right)^2 = \left(\sum_{a=0}^{n-1}v^a\,\npx{a}{x}\right)\left(\sum_{b=0}^{n-1}v^b\,\npx{b}{x}\right)$$

$v^t$ の係数を見ます。$a + b = t$ となる組は $t+1$ 通りで、それぞれ $\npx{a}{x}\,\npx{b}{x}$ が掛かっています。

ここで死亡率が増加という条件が効きます。$q_x < q_{x+1} < \cdots$ なら生存率は減っていくので

$$\npx{a}{x}\,\npx{b}{x} \ge \npx{a+b}{x} = \npx{t}{x}$$

が成り立ちます。$a$ 年ぶんと $b$ 年ぶんを別々に生き延びるほうが、通しで $a+b$ 年生き延びるより易しいからです。したがって $v^t$ の係数は $(t+1)\npx{t}{x}$ 以上になり

$$\left(\aaxn{x}{n}\right)^2 \ge \sum_{t=0}^{n-1}(t+1)v^t\,\npx{t}{x} + (\text{$v^n$ 以上の正の項}) > (I\ddot{a})_{x:\angl{n}}$$

両辺を $\aaxn{x}{n}$ で割れば与式です。

数値では $\left(\aaxn{40}{20}\right)^2 = 217.4990$、$(I\ddot{a})_{40:\angl{20}} = 137.7268$。確かに大きく上回ります。比のほうは $9.3388 < 14.7478$ です。

証明2:恒等式から上界を作る

証明1の終身版($n \to \infty$)を使います。

$$(IA)_x = \ddot{a}_x - d\,(I\ddot{a})_x$$

累加保険の保険料 $(IA)_x$ は正なので

$$d\,(I\ddot{a})_x < \ddot{a}_x$$

これだけでは $\dfrac{\ddot{a}_x}{d}$ という上界しか出ません。もう一段絞るために、$(IA)_x$ の下界を作ります。

$(IA)_x$ は「$t$ 年目に死んだら $t$ を払う」保険で、$t \ge 1$ なので保険金は必ず1以上。したがって普通の終身保険 $A_x$ より大きい。さらに、証明1の記事で見た $A_x = v\,q_x + v\,p_x\,A_{x+1}$ の形から、$(IA)_x$ には少なくとも $v\,q_x\,(I\ddot{a})_x$ に相当する分が含まれます。

教科書の解答はこの評価を経て

$$(I\ddot{a})_x < \frac{\ddot{a}_x}{v\,q_x + d}$$

を得ています。分母が $d$ から $v\,q_x + d$ に増えたぶん、上界が小さくなりました。

さらに $\ddot{a}_x$ を、本章 練習問題(2)で見た上界で置き換えます。$q_x < q_{x+t}$ のとき

$$\ddot{a}_x < \frac{1+i}{q_x + i}$$

でした。また分母について $v\,q_x + d = v\,q_x + iv = v(q_x + i)$ なので

$$\frac{\ddot{a}_x}{v\,q_x+d} < \frac{1}{v(q_x+i)}\cdot\frac{1+i}{q_x+i} = \frac{(1+i)^2}{(q_x+i)^2} = \left(\frac{1+i}{q_x+i}\right)^2$$

$\dfrac{1}{v} = 1+i$ を使いました。2乗の形が出るのは、$\ddot{a}_x$ の上界と分母の両方に $\dfrac{1+i}{q_x+i}$ が現れるからです。

数値では $(I\ddot{a})_{40} = 361.79 < 690.10 < 986.58$ で、確かに順に大きくなります。

3つに共通する一手

証明 使った道具
1 $d = 1 - v$ を分配して、隣の項と打ち消す
2 恒等式を不等式に変え、既知の上界を代入して2乗の形にする
3 2乗の展開で $v^t$ の係数を数え、生存確率の劣加法性を使う

普通の保険で使った道具が、そのまま累加の世界でも効きます。記号が増えても、成り立つ関係式の形は変わりません。覚えるべきは対応関係だけで、証明の手順は同じです。

つまずきポイント

$(IA)^{\,1}$ と $(IA)$ を区別する。上付き1が付くほうは定期保険(死亡のみ)、付かないほうは生存分 $n\,\Apure{x}{n}$ を足したものです。証明1の恒等式が成り立つのは後者で、定期保険だけでは成り立ちません。問題文が定義を先に書いているのは、この区別のためです。

$(I\ddot{a})$ の係数の始まり。 $(I\ddot{a})_{x:\angl{n}} = \sum_{t=0}^{n-1}(t+1)v^t\npx{t}{x}$ なので、$t = 0$ の項は係数1です。初年度に1を払い、次の年に2を払う。$t$ 年目に $t$ ではありません。確定年金のときと同じ約束です。

証明3の条件を落とさない。 $\npx{a}{x}\npx{b}{x} \ge \npx{a+b}{x}$ が成り立つのは、死亡率が増加するという条件があるからです。無条件では言えません。大小問題の選択肢では、この条件を外した形が誤りとして並びます。

証明2の上界は粗い。数値例では真の値 $361.8$ に対して上界が $986.6$。2.7倍あります。上界の役目は「これより大きくならない」ことを保証するだけで、近い値を与えるものではありません。大小問題で選択肢を絞る用途と割り切ってください。

本試験ではこう問われる

累加保険・累加年金は、値を計算させる形で出ます。基数を使って $(IA)_x = \dfrac{R_x}{D_x}$ のように書かせる問題が中心です。

タクティクス 生保数理の第3章「累加・累減系」には7問が並んでいます。H22年度の「累加・累減保険」が目標解答時間3分で、この節では最も軽い部類です。

大小関係を選ばせる形式は平成12年度以降の生保数理で26年度中7年度(2009・2011・2014・2018・2020・2023・2025年度)に出ており、証明2・証明3のような不等式が選択肢に並ぶことがあります。

第1章の確定年金で同じ不等式を見ているので、そちらと対にして押さえておくと、生命関数が入っても迷いません。

まとめ

  • 累加保険にも $(IA)_{x:\angl{n}} = \aaxn{x}{n} - d\,(I\ddot{a})_{x:\angl{n}}$ という「1から引く」形の恒等式がある。
  • 普通の式の「1」が $\aaxn{x}{n}$ に、「$\ddot{a}$」が $(I\ddot{a})$ に、1段ずつ上がった対応になっている。
  • 上界は恒等式を不等式に変えて作る。$\left(\dfrac{1+i}{q_x+i}\right)^2$ の2乗は、分子と分母の両方に同じ形が出るため。
  • $(I\ddot{a})_{x:\angl{n}} < \left(\aaxn{x}{n}\right)^2$ は、2乗の展開の係数と生存確率の性質から。第1章の確定年金版と同じ手順。
  • 上界は粗い(数値例で2.7倍)。値を近似するためではなく、大小を判定するための道具。