数え方
平成12年度(2000年度)から令和7年度(2025年度)までの26年度分の過去問題集を対象に、統計量や手法の名前が登場した年度を数えました。
決めごとは確率分布のランキングと同じです。
- 問題文と解答例の両方を対象にする
- 巻末の付表は除外する
- 1つの問題に複数の論点が出てきたら、それぞれ数える
- 同じ年度に何回出ても、その年度は1と数える
2000年度の過去問題集PDFにはテキスト層がないため、問題ページを画像で読んで手で入力しました。
なお、この集計は「名前」を数えたものです。問題文が用語を使わずに設定だけで問うてくる形は拾えません。順位は下限の目安と考えてください。
ランキング
| 順位 | 論点 | 出現年度 |
|---|---|---|
| 1 | 仮説検定(帰無仮説・有意水準) | 25/26 |
| 2 | 区間推定(信頼区間・信頼係数) | 25/26 |
| 3 | 標本平均 | 22/26 |
| 3 | 積率母関数 | 22/26 |
| 5 | 最尤推定量 | 21/26 |
| 5 | 回帰分析 | 21/26 |
| 7 | 中心極限定理 | 19/26 |
| 7 | シミュレーション(乱数・逆関数法・棄却法) | 19/26 |
| 9 | 検出力・第2種の誤り | 17/26 |
| 9 | 相関係数 | 17/26 |
| 11 | 不偏推定量・不偏分散 | 16/26 |
| 12 | 標本分散 | 12/26 |
| 13 | 標本調査(層化・復元抽出) | 9/26 |
| 14 | 時系列モデル(AR・MA・定常性) | 8/26 |
| 15 | 条件付期待値・条件付分散 | 7/26 |
| 16 | 順序統計量 | 6/26 |
| 16 | マルコフ連鎖・推移確率行列 | 6/26 |
| 18 | ベイズの定理 | 5/26 |
| 19 | モーメント法 | 4/26 |
| 20 | 一致推定量・一致性 | 3/26 |
| 21 | 歪度・尖度 | 2/26 |
| 21 | 特性関数 | 2/26 |
| 21 | クラメール・ラオの不等式 | 2/26 |
| 24 | 平均二乗誤差 | 1/26 |
上位2つは、ほぼ毎年出る
仮説検定と区間推定が、それぞれ26年度中25年度。事実上、毎年出ていると考えてよい水準です。
しかもこの2つは、配点の面でも重い。2023〜2025年度の構成では、問題1と問題2が1問5点の小問集合で計40点から55点(年度によっては問題3も小問形式)、残りが大問です。統計の大問は、母集団を1つ与えて推定と検定を続けて問う形が典型で、1問で15点前後を占めます。
2000年度の問題4は、2つの農園のトマトの重さについて、まず母分散が等しいかをF検定し、その結果にかかわらず等分散を仮定して母平均の差をt検定させるという構成でした。2025年度の問題6は、ポアソン母集団の母平均について最尤推定量の性質を調べ、カイ2乗分布との関係を示し、信頼区間を導き、最後に実データにあてはめるという流れです。四半世紀を隔てて、推定から検定へ続ける骨格は変わっていません。
この2つは1つの大問の中で続けて現れるだけでなく、年度によっては小問と複数の大問にまたがって顔を出します。苦手のまま本番に入ると、失点が大問1つぶん(15点前後)では済まないことがある。順位表の使い方としては、まずここが埋まっているかを確認するのが先です。
3位の積率母関数は、確率と統計をつなぐ
3位に積率母関数(22/26)が入っているのは、統計分野の集計としては意外に見えるかもしれません。
積率母関数が繰り返し出るのは、確率分野と統計分野の両方から呼ばれるからです。確率側では分布の同定と再生性の証明に使い、統計側では推定量の分布を求めるために使う。中心極限定理の証明にも顔を出します。
同じ枠にある特性関数は2/26と少なく、対照的です。特性関数はどんな分布に対しても存在する、いわば積率母関数の万能版で、積率母関数を持たない分布も扱えます。ただしこの試験で名前が表に出た回数は2/26にとどまるので、両者を同じ重さで覚える必要はありません。
シミュレーションが7位に入る意味
シミュレーション(19/26)が中心極限定理と同順位というのは、見落としやすいところです。
これはモデリング分野の第4章にあたります。逆関数法で一様乱数から目的の分布を作る、棄却法で採択率を計算する、といった問題が繰り返し出ています。計算そのものは重くありませんが、手順を知らないと手が動きません。
ただし注意が必要です。モデリングの第4章のうち、4.3 検定と4.4 一様乱数の生成は試験範囲外に指定されています。教科書の目次で(試験範囲外)と印字されている部分は読まなくて構いません。範囲内の逆関数法と棄却法だけを押さえれば足ります。
同じくモデリング分野の時系列モデル(8/26)とマルコフ連鎖(6/26)は、出る年と出ない年がはっきり分かれます。出れば大問1つぶんになることがあるので、捨てるには惜しい。ただし優先順位は統計の上位論点より下です。
下位の論点をどう扱うか
順位表の下のほうには、教科書には必ず載っているのに実際の出題が少ない論点が並びます。
クラメール・ラオの不等式(2/26)、平均二乗誤差(1/26)、一致推定量(3/26)は推定量の良し悪しを測る道具、モーメント法(4/26)は推定量を作る方法です。いずれも推定まわりの論点です。
これらを軽視してよいとは言えません。理由は、出るときに大問の一部として出るからです。2025年度の問題6は、ポアソン母平均の最尤推定量を求めたあと、期待値の計算で不偏性を、クラメール・ラオの不等式で有効性を、チェビシェフの不等式で一致性を順に判定させる構成でした。この年にクラメール・ラオの不等式を知らなければ、大問の途中で手が止まります。
現実的な扱いとしては、次のように分けるのが妥当です。
- 5位以内の6論点(検定・区間推定・標本平均・積率母関数・最尤推定量・回帰分析)は、手が自動で動く水準まで
- 中位(中心極限定理・シミュレーション・検出力・相関係数・不偏推定量)は、典型問題を1問ずつ解ける水準まで
- 下位は、定義と主張を書ける水準まで。証明は追わなくてよいが、公式の形は出せるようにする
下位の論点は「知っていれば数分で終わり、知らなければ手が出ない」性質のものが多く、投下時間あたりの効果はむしろ高いことがあります。時間をかけないと決めることと、まったく触れないことは別です。
順位に表れない論点
集計は名前を数えたものなので、名前が出ない形の出題は拾えません。
はっきりしているのはベイズの定理です。順位は18位(5/26)ですが、条件付き確率を使って原因の確率を求める問題は、ベイズという語を使わずに出題されます。2000年度の問題1(1)は、3つの工場の不良率から不良品が工場Aで作られた確率を求めさせるもので、これはベイズの定理そのものです。しかし問題文にその語はありません。
同じことがベータ分布や順序統計量にも言えます。一様分布の順序統計量はベータ分布になりますが、問題文はどちらの名前も使わずに「最小値の密度関数を求めよ」と聞いてきます。
順位表は「用語がどれだけ表に出るか」の目安であって、「その概念がどれだけ必要か」とは別物です。上位は確実に必要、下位は必ずしも不要ではない。そう読んでください。
まとめ
- 平成12年度から令和7年度までの26年度分を集計。順位は用語が登場した年度数で決めた。
- 仮説検定と区間推定がともに25/26。事実上毎年出るうえ、大問として配点も重い。
- 積率母関数が22/26で3位。確率側と統計側の両方から呼ばれるため。特性関数は2/26で別物。
- シミュレーションが19/26。ただし範囲外に指定された節があるので、逆関数法と棄却法に絞る。
- 下位の論点は出る回数こそ少ないが、出たときは大問の一部になる。定義を書ける水準までは必要。
- ベイズの定理のように、名前を出さずに問われる論点は順位に表れない。順位は下限の目安。