どんな本か

『明解演習 数理統計』(小寺平治、共立出版、1986)は、数理統計の演習書です。明解演習シリーズの1冊で、1986年の刊行です。

推定・検定を中心に、例題と演習問題で型を固める構成になっています。

本文からの参照は0か所

タクティクス数学 上下巻の本文を全数確認しましたが、この本が参照されている箇所はありません。巻末の参考文献に書誌が載っているだけです。

同じ状態の本は、ほかにも『すぐわかる確率・統計』『1冊でマスター 大学の統計学』『アクチュアリー数理の基礎』などがあります。ただしそれらは「おすすめ図書」欄で紹介文が付いているのに対し、この本は参考文献に名前があるだけです。

この事実は、そのまま書いておくのが誠実だと考えています。参照が0であることを伏せて紹介しても、読んだ人の判断材料になりません。

参照0が意味すること

参照が0であることは、本の質の評価ではありません。タクティクスがどう構成されているかの反映です。

タクティクス上下巻の \cite を全数集計すると、指定演習書の統計編が86回、ホーエル『入門数理統計学』が16回。この2冊で統計側の参照がほぼ埋まっています。

指定演習書が主軸で、そこに載っていない論点はホーエルで補う。その2冊で足りているのだから、3冊目の演習書が本文で呼ばれる場面がない、という構造です。

では、どういうときに使うか

タクティクスの参照構造から外れる使い方を考えると、2つあります。

ひとつは、指定演習書の解説が合わなかった場合の乗り換え先です。国沢の統計編は解説が簡素で、手順は書いてあるが背景の説明が薄い、という特徴があります。この本は演習書としての構成が違うので、同じ論点を別の書き方で読めます。

もうひとつは、演習量を積む用途です。推定・検定は、手順を理解したあとに手を動かした量がそのまま出ます。指定演習書の問題を終えて、まだ型が固まっていないと感じるなら、追加の問題源として使えます。

いずれも「指定教材で足りない部分を埋める」というより、「同じ領域をもう一周する」使い方です。

優先順位としては後ろ

正直に書けば、この本の優先順位は高くありません。

統計側で先に検討すべきは、タクティクス本文が名指ししている本です。『リスクを知るための確率・統計入門』はおすすめ図書欄で「特に統計の解説は非常にわかりやすい」と紹介され、本文からも3か所参照されています。ホーエルは指定教科書で、出題の種本になった実例まで指摘されています。

これらを当たったうえで、なお演習量が足りないと感じたときに検討する——という順序が現実的でしょう。

刊行は1986年です。指定演習書(国沢、1996年)やタクティクスと記号の流儀が揃っているとは限らないので、突き合わせながら読む必要があります。主軸の教材として使うより、補助として引く使い方のほうが摩擦が少ないはずです。

ライブラリーの該当ページ

参考書ライブラリーの数学に登録してあります。書誌情報と入手先へのリンクが確認できます。

まとめ

  • 小寺平治『明解演習 数理統計』(共立出版、1986)。推定・検定を中心とした数理統計の演習書。
  • タクティクス本文からの参照は0か所。巻末参考文献に書誌が載っているだけで、おすすめ図書欄にも入っていない。
  • 参照0は質の評価ではなく、統計側が指定演習書とホーエルの2冊でほぼ埋まっている構造の反映。
  • 使うとすれば、指定演習書の解説が合わなかったときの乗り換え先か、演習量の積み増し。
  • 優先順位は後ろ。統計側では『リスクを知る』とホーエルを先に当たるのが順序。