どんな本か
『すぐわかる確率・統計』(石村園子、東京図書、2001)は、確率・統計を初めて学ぶ人に向けた入門教科書です。著者の石村園子先生は「すぐわかる」シリーズで知られ、途中式を省かない丁寧な展開が特徴です。
合格へのタクティクス 数学の推薦図書欄では、「初心者のための参考書」の1冊目に置かれ、次のように紹介されています。
本当にわかりやすい初心者向けの教科書。悩んでいる方はまずはこちらから。
紹介文はこの1行だけです。ただ、初心者向けの4冊の中で先頭に置かれていること、「悩んでいる方はまずは」という言い方であることから、位置づけははっきりしています。どの本から始めるか迷っている段階の人が、最初に手に取る本です。
本文からの参照は1か所もない
この連載では、参考書の役割をタクティクス上下巻の本文がどこで参照しているかで測っています。『弱点克服 大学生の確率・統計』は本文から23か所参照されていました。
この本はどうかというと、本文からの参照は1か所もありません。登場するのは巻頭の推薦図書欄と巻末の参考文献リストだけです。
これは欠点ではなく、役割の違いです。弱点克服が「演習の途中で問題量を借りにいく本」なのに対して、この本は「演習を始める前に読み終えている本」だからです。少なくともタクティクスは、演習中にこの本を参照する使い方を想定していない、と読めます。
どの段階で使うと効くか
効くのは、確率・統計にほぼ初めて触れる段階、あるいは大学で学んだきり長く離れている段階です。
指定演習書の『確率統計演習1 確率』『確率統計演習2 統計』は1996年刊の演習書で、定義の説明は簡素、いきなり問題が並びます。確率変数や期待値という言葉に馴染みがない状態で入ると、最初の章から手が止まります。その手前で、確率・統計がどんな考え方をする分野なのかを一度通しておくのがこの本の仕事です。
読み方も、精読して問題を解き込むというより、短期間で通読して全体の地図を作る使い方が合います。ここで時間をかけすぎると本編の演習時間が削られるので、期間を区切って読み切り、卒業することが大事です。
卒業したら戻らない
逆にいうと、この本を終えたあとも手元で参照し続ける必要はありません。
試験の水準から見ると、この本がカバーするのは入口までです。アクチュアリー試験の数学は、分布の再生性や積率母関数、順序統計量といった道具を選択肢形式・時間制限つきで使いこなす試験なので、入門教科書の理解だけでは戦えません。
代表的な次の段階は2通りです。もう少し理論の水準を上げたい場合は、同じ初心者向けに挙げられている『1冊でマスター 大学の統計学』へ。早く試験仕様の演習に入りたい場合は、指定演習書とタクティクスの併用に進みます。どちらの経路でも、この本に戻るのは用語や基本概念を確かめ直したいときくらいです。
ライブラリーの該当ページ
この本は、書籍ライブラリーのアクチュアリー第1次試験の参考書に「数学」として登録してあります。書名のリンクからAmazonの該当ページに移動できます。
同じページには数学の参考書を、初心者向け→やや数学ができる方向け→高校数学の立て直しの順に並べてあります。この本はその先頭です。自分がどの段階にいるか迷ったら、この並び順を目安にしてください。
まとめ
- 『すぐわかる確率・統計』はタクティクス推薦図書欄で初心者向けの1冊目に置かれた入門教科書。「悩んでいる方はまずはこちらから」の本。
- タクティクス本文からの参照は0か所。演習期に参照する本ではなく、演習を始める前に読み終える本。
- 確率・統計に初めて触れる人、長く離れていた人が、指定演習書に入る前の助走として短期間で通読する使い方が合う。
- 試験水準はカバーしないので、読み終えたら『1冊でマスター 大学の統計学』か、指定演習書+タクティクスの演習に進んで卒業する。