どんな本か
『アクチュアリー数理の基礎[数学]』(星野明雄、成文堂)は、アクチュアリー試験の数学に向けて書かれた初心者向けの本です。同じ初心者向けに並ぶほかの3冊(すぐわかる確率・統計/すぐわかる統計学/1冊でマスター 大学の統計学)が大学の確率統計の教科書・入門書なのに対して、この本は最初から試験を向いています。
タクティクスの推薦図書欄では「初心者のための参考書」の4冊目として、次のように紹介されています。
アクチュアリー試験数学の試験範囲を網羅し、基礎的な問題を解けるように、非常に初心者でもわかりやすいように記述されている本です。こちらを教科書代わりに学習し、すぐに本書で演習を始めても良いと思います。
初心者向けの並びで「試験範囲を網羅」と言われているのはこの本だけです。そして「教科書代わり」という言葉が、この本の役割を決めています。
「教科書代わり」が意味すること
数学の教科書のうち、演習の主軸になるのは『確率統計演習1 確率』『確率統計演習2 統計』『モデリング』の3冊です。このうち国沢の演習書2冊は1996年刊で、定義や定理の説明は簡素、いきなり問題が並ぶ構成です。教科書というより問題集に近く、初学者が最初に読む本としてはかなり厳しい造りです。
型A記事「教材の使い分け」でも触れたとおり、合格者の体験談を見ても指定教材の通読は主流ではありません。すると「基礎理解を何で作るか」が空白になります。その空白を埋めるのがこの本です。
- 範囲の網羅はこの本に任せる(大学の教科書と違って、試験に出ない話に時間を取られない)
- 理解した端から、タクティクスと過去問で試験仕様の演習を積む
- 指定演習書は、通読する教科書ではなく出題の源泉・証明問題の演習台として使う
推薦文の「教科書代わりに学習し、すぐに演習を始めても良い」は、この分担を1行で言ったものです。
ほかの3冊とどちらを選ぶか
初心者向け4冊は、どれも「演習前の理解づくり」という同じ役割を持っています。全部読む必要はなく、自分の入口に合う1〜2冊を選べば足ります。選び分けの軸はこうなります。
| 状況 | 向く本 |
|---|---|
| 数学から長く離れていて、まず感覚を戻したい | すぐわかる確率・統計 |
| 大学1・2年の講義水準で復習したい | 大学1・2年生のためのすぐわかる統計学 |
| 統計の理論を試験水準近くまで固めたい | 1冊でマスター 大学の統計学 |
| 最短で試験範囲だけを一周したい | アクチュアリー数理の基礎(本記事) |
この本の強みは、試験に照準を合わせて編まれていて回り道が少ないことです。大学の教科書で入ると、試験に出ない話題も一緒に通ることになりますが、この本は最初から試験対策として書かれています。社会人の独学など、時間の制約が強い人ほどこの差は大きくなります。もっとも、範囲の最終確認は試験要領と過去問で行うものなので、この本1冊にすべてを預けるのではなく、演習段階で指定教材・過去問と突き合わせてください。
一方で、試験対策に寄せているぶん、確率統計を体系として学ぶ本ではありません。数学的な背景まで理解したい人は、ほかの3冊のような一般の教科書・入門書から入るほうが満足度は高いはずです。
本文からの参照は0か所
ほかの参考書と同じ確認をしておくと、タクティクス上下巻の本文からこの本への参照はありません。登場は推薦図書欄のみです。
理由も同じで、この本の仕事は演習が始まる前に終わっているからです。ただしこの本は試験範囲と同じ地図を持っているので、演習中に基礎へ戻る先としては、大学の教科書より迷いません。演習で穴が見つかったら該当章に戻る、という往復には向いています。
ライブラリーの該当ページ
この本は、書籍ライブラリーのアクチュアリー第1次試験の参考書に「数学」として登録してあります。書名のリンクからAmazonの該当ページに移動できます。
初心者向けは以上の4冊です。同じページの「やや数学ができる方向け」の並びには、演習量と解説の質で試験勉強の本編を支える本が続きます。そちらはタクティクス本文からも繰り返し参照される本たちです。
まとめ
- 『アクチュアリー数理の基礎』は、初心者向け4冊で唯一「試験範囲を網羅」し「教科書代わり」と推薦される本。最初から試験を向いて書かれている。
- 指定演習書(1996年刊・解説簡素)が担えない基礎理解を代行し、タクティクス+過去問の演習に直結させる分担が組める。
- 試験に照準を合わせた作りなので、時間制約の強い独学者ほど効く。体系的に学びたい人は一般の入門書からの入口が向く。
- 本文からの参照は0か所だが、試験範囲と同じ地図を持つため、演習中に基礎へ戻る先としては使いやすい。