教科書は5冊、演習の主軸は3冊

資格試験要領の教科書欄には、数学は5冊が並びます。理論の教科書2冊(入門数理統計学・統計学入門)と、演習書2冊(国沢の確率・統計)、そしてモデリングです。範囲の全体像は出題範囲の地図の記事で章単位に整理しています。

このうち、演習の主軸になるのは次の3冊です。タクティクスの推薦図書欄も、教科書のうち特に重要と考えている3冊は確実に購入しましょう、として同じ3冊を挙げています。

教材 出版 入手
確率統計演習1 確率(国沢清典編) 培風館 購入
確率統計演習2 統計(同) 培風館 購入
モデリング 日本アクチュアリー会 サイトから無料ダウンロード

モデリングは、アクチュアリー会のサイトから無料でダウンロードできます。付属の確率・統計・モデリング問題集も同様です。入手条件は変わることがあるので、受験準備の際に公式サイトで確認してください。

残る理論書2冊(入門数理統計学・統計学入門)は、最初に買う必要はありません。国沢の簡素な解説で詰まったときの参照先で、必要になった段階で買い足せば足ります。ただし入門数理統計学は統計の大問の種本になった実例があるので、統計の仕上げ段階では存在を忘れないでください。

まず先にやるべきことは、モデリングの目次を開くことです。目次には(試験範囲外)という印が付いた節があり、第5章はまるごと範囲外です。無料なので、範囲を確認するだけでも先に落としておく価値があります。

指定演習書の性格

国沢の2冊は1996年刊で、初版はさらに古い本です。性格をはっきりさせておきます。

問題数が多い。これが最大の長所です。演習書という名のとおり、各章に例題と問題が並んでいます。

解説が簡素。これが短所です。1行で済ませている変形が少なくありません。詰まったときに、この本の中では解決しないことがあります。

用語や記法が、いまの教科書とは少し違います。確率を波括弧で $P\{A\}$ と書く、可算の意味で可付番という語を使う、など。読み替えれば済みますが、初見では戸惑います。

タクティクスの本文が国沢のどちらをどれだけ参照しているかを数えてみました。上下巻あわせて、統計編が86か所、確率編が58か所です。統計側のほうが多く参照されています。

少なくともタクティクスの構成上は、統計分野のほうが指定演習書を参照する場面が多いということです。確率分野は市販の問題集で代替できる部分が多いのに対し、統計分野は推定と検定の体系が指定演習書に沿って組まれているためです。

体験談では通読が主流ではない

合格体験談9件を集計すると、教材の言及は次のようになりました。

教材 言及件数
過去問 9/9
合格へのストラテジー 9/9
指定教科書 5/9
弱点克服 大学生の確率・統計 4/9
レベルチェックテスト・模試 4/9

指定教科書は9件中5件にとどまります。しかも、その5件のうち通読したと書いている件は少数で、勉強会で眺める程度、辞書のように必要な箇所だけ引いた、という記述が目立ちました。

代わりに使われていたのが市販の問題集です。確率分野は弱点克服で固め、統計分野は別の入門書で補い、モデリングはストラテジー(タクティクスの姉妹書『合格へのストラテジー 数学』。必須公式と必須問題をまとめた本)で基礎を作る。この分担が複数件で共通していました。指定教科書のモデリングより市販書のほうが分かりやすかった、と書いている件もあります。

なお、同じ集計を生保数理7件と損保数理8件にも行っています。指定教科書の言及は生保数理が7/7、損保数理が7/8で、数学の5/9とは対照的です。生保数理と損保数理は記号や用語の定義を確認する場所として教科書が必要になりますが、数学は市販書で代替が効く、という違いが数字に出ています。

教材ごとの役割を決める

以上を踏まえると、次の役割分担が現実的です。

段階 使う教材 目的
入口 市販の入門書1冊 確率統計がどんなものかをつかむ
基礎固め 市販の問題集 分野別に手を動かして型を作る
範囲の確認 モデリング(無料) 目次で範囲外の印を確認する
演習量 指定演習書・過去問 問題数を積む
詰まったとき 指定演習書・別の解説書 別の説明を探す

タクティクスの推薦図書欄も同じ順序で組まれています。まず指定教科書、次に初心者のための参考書4冊、そしてやや数学ができる方向けの参考書2冊。この構成は、指定教材に入る前に入口用の1冊を挟む読者を、最初から想定しているということです。

推薦図書欄で挙がっている参考書は6冊だけです。一方、巻末の参考文献には20冊以上が並んでいます。推薦されている6冊が入口として、残りは詰まったときの参照先という位置づけになります。

買う順序で迷ったら

無料のものから始めるのが損がありません。

モデリングと確率・統計・モデリング問題集は無料です。まずこれを落として目次を見る。範囲外の節に印を付ける。ここまでは費用がかかりません。

次に、自分がどの段階にいるかを判断します。確率変数や期待値の定義から入る必要があるなら市販の入門書、大学の確率統計を一度通っているなら市販の問題集から。ここで指定演習書を先に買うと、解説の簡素さで止まる可能性があります。

指定演習書は、演習量が必要になった段階で効きます。統計分野に入る頃には手元にあったほうがよい、という順序です。

過去問はアクチュアリー会のサイトで無償公開されています。こちらも費用はかかりません。体験談9件のすべてが過去問を軸に据えていたことを踏まえると、早い段階で落としておいて、範囲と難易度を眺めるだけでもやっておく価値があります。

2027年度以降について

数学の範囲は2027年度から変わります。モデリングが専門数理2へ移り、数学は確率統計のみになります。

このため、モデリングの教材にどれだけ投資するかは受験する年度で変わります。2026年度に受けるならモデリングも範囲内なので必要です。それより後に数学だけを受けるなら、モデリングは専門数理2の教材として扱うことになります。

いずれにしても、モデリングは無料でダウンロードできるので、教材費の面での影響はありません。学習時間の配分の話になります。

まとめ

  • 要領の教科書は5冊だが、演習の主軸は国沢2冊+モデリングの3冊。モデリングと付属の問題集は無料で手に入る。
  • 国沢の2冊は問題数が多いが解説が簡素で記法が古い。詰まったときに別の説明が要る。
  • タクティクス本文の参照は統計編86か所、確率編58か所。統計側のほうが指定演習書への依存が高い。
  • 体験談では指定教科書の言及が9件中5件。生保数理7/7・損保数理7/8と比べて低く、市販書で代替されている。
  • 無料のものから始めるのが損がない。モデリングの目次で範囲外を確認するのが最初の一手。