どんな本か

『1冊でマスター 大学の統計学』(石井俊全、技術評論社、2018)は、大学課程の統計学を1冊で通すことを狙った本です。姉妹書に『1冊でマスター 大学の微分積分』があり、こちらも同じ推薦図書の並びに入っています(紹介記事があります)。

タクティクスの推薦図書欄では「初心者のための参考書」の3冊目として、次のように紹介されています。

②(大学1・2年生のためのすぐわかる統計学)よりやや高度ですが、かなりアクチュアリー試験で求めている数学(確率・統計)に近いように思います。

短い紹介文ですが、情報は2つ入っています。入門書の並びの中では高度な側にあること、そして到達点が試験水準に近いことです。

初心者向け4冊の中での位置

タクティクスが初心者向けに挙げる4冊は、水準の低い順にきれいに並んでいます。

書名 位置づけ
1 すぐわかる確率・統計 本当に最初の1冊
2 大学1・2年生のためのすぐわかる統計学 大学1・2年の講義水準
3 1冊でマスター 大学の統計学(本記事) 入門書より高度・試験水準に近い
4 アクチュアリー数理の基礎 試験範囲を網羅・教科書代わり

この本は3番目、つまり「入門書は読める。でも指定演習書や過去問はまだ重い」という段階の受け皿です。1〜2冊目のような入門書を終えた人が、試験水準へ登るための中間の足場になります。

逆に、確率・統計が初めての人がいきなりこの本から入ると、前提の段差でつまずきやすいはずです。推薦文の「やや高度」は、入門書との比較での話ではありますが、順番を守る意味はあります。

本文からの参照は0か所

タクティクス上下巻の本文をたどると、この本を参照している箇所はありません。登場するのは推薦図書欄と巻末参考文献だけです。

これは『すぐわかる確率・統計』などの入門書と同じパターンで、役割が「演習前の理解づくり」だからです。演習が始まったあとにタクティクスが参照しにいくのは、問題量を供給する『弱点克服』(23か所)や、統計の大問の種になる『入門数理統計学』のような本で、理解づくりの本ではありません。

したがってこの本も、期間を決めて通し、卒業する使い方になります。ただし入門書2冊と違って水準が試験に近いので、演習期に入ったあとも、理論の説明を確認しに戻る辞書的な使い方は成立します。

どの段階で使うと効くか

いちばん効くのは、入門書と指定演習書のあいだの段差を感じている人です。

指定演習書『確率統計演習2 統計』は解説が簡素で、点推定・区間推定・検定の理論的な背景は最小限しか書かれていません。入門書を読んだだけの状態でここに入ると、「操作は追えるが、なぜその統計量なのか分からない」という状態になりがちです。この本で理論の水準を一段上げてから入ると、演習書の簡素な記述が「知っていることの確認」に変わります。

なお、書名は統計学ですが、確率の基礎(確率変数・分布・期待値まわり)も統計の前提として扱われます。それでも主軸は統計側なので、確率分野の演習量は別途、指定演習書とタクティクスで積む前提で考えてください。

ライブラリーの該当ページ

この本は、書籍ライブラリーのアクチュアリー第1次試験の参考書に「数学」として登録してあります。書名のリンクからAmazonの該当ページに移動できます。

同じページには姉妹書の『1冊でマスター 大学の微分積分』も並べてあります。積分計算に不安がある場合は、そちらを並行させると統計側の計算も止まりにくくなります。組み合わせ方は姉妹書の紹介記事で扱っています。

まとめ

  • 『1冊でマスター 大学の統計学』は、初心者向け4冊の中で「入門書より高度・試験水準に近い」と紹介される唯一の本。入門書と指定演習書のあいだの段差を埋める。
  • タクティクス本文からの参照は0か所。役割は演習前の理解づくりで、入門書と同じく期間を決めて通す本。ただし水準が高いぶん、演習期に理論を確認しに戻る使い方はできる。
  • 指定演習書『確率統計演習2 統計』の簡素な解説に入る前に、推定・検定の理論を一段固めておくと演習の消耗が減る。
  • 主軸は統計側。確率分野の演習量は指定演習書とタクティクスで別に積む。