持ち込める電卓の条件(試験要領)

2026年度の資格試験要領では、使用できる計算機は次の条件をすべて満たす電卓に限られています。

条件 内容
電源 電源内蔵式であること
機能 四則演算、平方根(√)、数値のメモリー機能のみ
表示 数値を表示する部分が概ね水平で、文字表示領域が1行であるもの
大きさ 概ね幅20cm × 奥行20cm × 高さ5cm を超えないもの
台数 使用できるのは1台のみ
不可 関数電卓、計算式の表示機能、印字機能、発音機能、プログラム機能

読み替えると、ごく普通の事務用電卓です。選ぶときの注意を3つ挙げます。

  • 電源内蔵式とは、外部電源を必要としない電卓という趣旨です。太陽電池のみの機種が要件を満たすかどうかは要領の原文で確認するとして、会場の照明次第で表示が薄くなる心配を考えると、実用上は電池・太陽電池併用式が安心です
  • 文字表示1行の条件は見落としやすいところです。2行以上表示できる機種は計算式の表示機能を持つことが多く、不可の対象に触れます
  • 平方根キーの有無は必ず確認してください。要領の「√演算」に対応するキーで、分散から標準偏差を数値で出す問題などで使います

自分の電卓が条件を満たすか判断に迷う場合は、受験前に必ず最新の試験要領を確認し、それでも不安なら日本アクチュアリー会に問い合わせるのが確実です。

CBTの画面にも電卓はある。それでも自分の電卓で打つ

第1次試験はCBT方式で、画面上に電卓機能が用意されています。つまり道具としては、持参した電卓と画面の電卓の2つが使えます。

それでも、勝負は持参した電卓でつきます。画面の電卓はマウスやポインタでの操作になるため、キーを実際に叩くのに比べてどうしても遅く、打ち間違いにも気づきにくい。数学の試験は180分で小問を次々に処理する形式で、1問あたりの計算回数が多いので、この速度差が積み重なります。

だから準備の本体は、使い慣れた自分の電卓で手早く正確に打つトレーニングです。本番で使う電卓を早期に1台決めて、日々の問題演習をすべてその電卓で行い、指がキー配置を覚えている状態で会場に入る。直前に買い替えると配置の違いだけで遅くなるので、決めるのは早いほどよいです。

なお実戦では、打ち間違いを前提に同じ計算を2度行うくらいの速さが求められます。2度計算しても時間内に収まる速度、が訓練の目安です。

電卓選びの推奨機能

合格へのストラテジーの付録では、要件を満たしたうえで次の機能を推奨しています。

機能 用途
メモリーキー(M+、M−、MR、CM) 途中結果の足し込み・引き込み。分散・共分散の計算で必須
GT(グランドトータル)キー =を押すたびに結果を自動合計。級数の和が一気に出る
12桁表示 桁数の多い計算で丸めの影響を小さくし、途中結果を確認しやすくする

以下の操作術は、この構成の電卓を前提にしています。

使いこなし術1:累乗は定数計算で出す

$1.03^{10}$ を求めるとき、$1.03 \times 1.03 \times \cdots$ と毎回打ち直すのは最悪の手です。電卓には同じ数を掛け続ける定数計算(定数乗算)があります。

シャープ製・キヤノン製などでは、1.03 と打って × を押し、あとは = を繰り返し押すだけで $1.03^2, 1.03^3, \dots$ と進みます。= を9回押せば $1.03^{10}$ です。カシオ製では × を2回押して定数登録します(=の回数も機種系統でずれるので、手元の機種で一度確かめてください)。

割り算でも同じことができます。現価率 $v = \dfrac{1}{1.015}$ の10乗が欲しいとき、$1 \div 1.015 \div 1.015 \cdots$ と打つのではなく、定数除算で 1.015 で割り続けます。$v^{10} = 0.861667$ が、数字を1回打っただけで出ます。

指数関数の値もこの延長です。問題文が「$e = 2.718$ として計算せよ」と指定してきたら、$e^5$ は 2.718 の定数乗算で作ります。

使いこなし術2:割り算は分母から先に計算してよい

$\dfrac{3.789}{1.234 \times 2.569}$ のような計算で、分子から打ち始める必要はありません。シャープ製・キヤノン製では「1.234 × 2.569 ÷ 3.789 ÷ =」の順に打ちます。最後の「÷ =」が直前の結果の逆数を作る操作になっていて、「分母 ÷ 分子」で出た値がひっくり返り、求めたい値が表示されます(カシオ製では最後を「÷ ÷ =」とします。この逆数の挙動は機種系統に依存するので、手元の電卓で一度確かめてください)。分数の分母のほうが複雑な形をしていることは多く、この手が使えると打つ順序の自由度が上がります。ストラテジーの付録でも「結構この機能は使います」と紹介されている、地味に効くテクニックです。

使いこなし術3:メモリーキーで分散・共分散を一気に作る

統計分野の計算で最も差が付くところです。メモリーキーの役割は4つ。

  • M+:表示中の計算結果をメモリーに加える
  • M−:表示中の計算結果をメモリーから差し引く
  • MR:メモリーの中身を表示する
  • CM:メモリーを消去する

データ $X = (1, 2, 3)$、$Y = (6, -7, 8)$ で2乗和と積和を作ってみます。

$E(X^2)$ の分子 $1^2 + 2^2 + 3^2$ は、「1 × = M+、2 × = M+、3 × = M+、MR」。各項の2乗を作ってはメモリーに足し込み、最後にMRで合計を呼び出して件数で割ります。

$E(XY)$ の分子 $1 \cdot 6 - 2 \cdot 7 + 3 \cdot 8$ のように負の項が混ざるときは、「1 × 6 = M+、2 × 7 = M−、3 × 8 = M+、MR」。負の項はM−で差し引けば、符号を頭で管理せずに済みます(この例では $\frac{6 - 14 + 24}{3} = \frac{16}{3}$)。

回帰分析や相関係数の問題は、この操作の組み合わせだけでできています。式を紙に全部書き出してから打つのではなく、データ表を見ながらメモリーに直接積んでいけるようになると、体感の計算時間が大きく変わります。

使いこなし術4:GTキーで級数の和を出す

GT(グランドトータル)は、=を押して得た答えを自動的に合計していくキーです。GTを1回押すと合計が表示され、2回連続で押すと合計メモリーが消去されます。

まず単純な使い方。$\dfrac{3+4}{4+5}$ は、先に $4 + 5$ = と打ち(結果9が合計メモリーに入る)、続けて $3 + 4$ $\div$ GT =。分子・分母それぞれを1回ずつ作るだけで済みます。

本領を発揮するのは等比数列の和です。$1.03 + 1.03^2 + \cdots + 1.03^{15}$ は、「1.03 × 1」と打ってから=を15回押します。最初の=で $1.03 \times 1 = 1.03^1$ が出るので、=15回でちょうど $1.03^1$ から $1.03^{15}$ までの15項が合計メモリーに積まれ、最後にGTを押すだけで和が出ます(「× 1」を忘れて累乗の操作のまま始めると、最初の=が $1.03^2$ になり、和が1項ずれるので注意してください)。

この操作は生保数理・損保数理の年金現価・長期係数の計算でそのまま主役になります。ストラテジー損保数理の本文には、15年分の年金現価係数を何度も電卓を叩いて計算していた受験生が、GTキーの存在を知って解決したというエピソードが載っているほどです。数学の範囲でも、幾何分布の累積確率など等比数列の和が要る場面で同じ手が使えます。

なお項数が多いとき(30年分など)は、=を押す回数の数え間違いが怖くなります。その場合は等比数列の和の公式 $\dfrac{v^n - 1}{v - 1}$ に切り替え、分母をメモリーに入れてから分子を作ってMRで割る、という公式ルートのほうが確実です。GTルートと公式ルートの両方を持っておき、片方を検算に使うのが実戦形です。

関数電卓が使えない分は、付表がある

指数・対数・統計関数のキーはありませんが、必要な数値は問題冊子の付表に載っています。2025年度の問題冊子に付いていた付表は次の6種類です。

付表 内容
I 標準正規分布表
II カイ2乗分布の上側パーセント点
III F分布の上側パーセント点
IV t分布の上側パーセント点
V 自然対数表
VI 指数関数表

統計4分布は表を引くことが前提です。見落としやすいのが自然対数表と指数関数表で、$\log$ や $e^x$ の値が要るときはここから引きます。どの表がどこにあり、上側の点から確率を引くのか逆かを、演習のうちに手に覚えさせておいてください。

電卓の周辺条件

項目 条件
計算用紙 ホチキス留めされた状態で10枚配布。不足時は申出で追加可。ホチキスを外す・破る・持ち帰りは禁止
筆記具 消しゴム付きは不可(尾部に消しゴムの付いたシャープペンシルに注意)
時計 持ち込み不可。残り時間はPC画面に表示

合格体験談の集計でも、計算量への言及は損保数理5/8件・生保数理2/7件・数学1/9件と科目差はあるものの、操作そのものに踏み込んだ件では、電卓を左手でブラインドで打ってペンの持ち替え時間を消す、という工夫まで出てきます。そこまでやるかは別として、電卓が訓練対象だという認識は合格者に共通しています。

まとめ

  • 持ち込めるのは電源内蔵式・四則演算+√+メモリーのみ・表示1行・幅20×奥行20×高さ5cm以内の電卓1台。関数電卓・式表示・印字・発音・プログラム機能は不可。
  • CBTの画面にも電卓はあるが、速さと正確さで勝負が決まるのは使い慣れた持参電卓のほう。本番機を早く決めて、すべての演習をその1台で行う。
  • 覚える操作は4つ。累乗の定数計算、分母から打つ逆数、メモリーキーでの2乗和・積和、GTキーでの級数の和。いずれもストラテジーの付録で科目別に解説されている。
  • 指数・対数・統計分布の値は付表から引く。自然対数表と指数関数表の存在を忘れない。

出典:電卓・計算用紙・筆記具の条件は日本アクチュアリー会「2026年度 資格試験要領」、操作術は「アクチュアリー試験 合格へのストラテジー」数学・生保数理・損保数理の巻末付録「電卓の使いこなし術」。持ち込み条件や当日の運用は年度によって変わるため、受験の際は必ず最新の試験要領・受験案内を確認してください。キー操作の細部は機種系統(シャープ・キヤノン系/カシオ系)で異なるので、本番で使う電卓で一度ずつ確かめておくのが確実です。