何が変わるのか

日本アクチュアリー会が2026年4月1日に公表した資格試験・研修制度の見直しにより、第1次試験の科目構成が2027年度から変わります。

数学、生保数理、損保数理の3科目について、変更点を並べます。

現行の科目 2027年度以降 数学に関する変更
数学 数学(範囲縮小) モデリングが専門数理2へ移る。確率統計のみになる
生保数理 専門数理1 年金数理と統合される
年金数理 専門数理1 生保数理と統合される
損保数理 専門数理2 改称。数学のモデリング部分を統合する

数学については、範囲が狭くなります。現行の3分野のうちモデリングが抜け、確率と統計だけになります。

数学を受ける人にとっての意味

2026年度に受けるなら、モデリングは範囲内です。現行の範囲で準備することになります。

2027年度以降に数学を受けるなら、モデリングは学習範囲から外れます。指定教材のうちアクチュアリー会のモデリングは、専門数理2の教材という位置づけに移ります。

どちらの年度に受けるとしても、確率統計の部分は残ります。ここが要点です。

数学の教科書は要領上5冊(入門数理統計学・確率統計演習1・統計学入門・確率統計演習2・モデリング)ありますが、このうちモデリングが専門数理2へ移るだけで、確率・統計側の4冊が扱う内容は改定後の「数学」にも残ります。新制度の指定教科書は確定後の試験要領で確認する必要がありますが、いま購入した教材への投資が無駄になる部分は小さいと考えられます。

最初の科目に選ぶなら数学から

制度の移行期に第1次試験の最初の科目を選ぶなら、数学から着手するのが安全だと言えます。理由は2つあります。

1つは、変更が範囲の縮小だけであることです。統合や改称ではなく、科目名も残ります。合格が別の科目の合格として読み替えられる、といった扱いも生じません。

もう1つは、土台にあたる科目だからです。数学は確率統計の科目で、他の科目がその上に建っています。生保数理でも損保数理でも、分布の特性値や期待値の計算が前提になります。ここを先に固めておけば、後続の科目で借りに戻る回数が減ります。

損保数理の合格体験談では、数学から持ち込むものとして、主な分布の確率関数と密度関数、期待値、分散を九九のように使える状態にしておくこと、そして部分積分の公式が挙げられていました。数学を先に済ませておくと損保数理が楽になる、という関係が体験談にも現れています。

生保数理と年金数理は事情が違う

数学と対照的なのが生保数理と年金数理です。

この2科目は専門数理1に統合されます。統合の影響として重要なのは、片方だけ合格している状態で2027年度を迎えると、みなし合格の扱いにならず受け直しになるという点です。

つまり、生保数理と年金数理のどちらかだけを持っている状態は、改定後に不利になります。2026年度が個別に受験できる最後の機会です。

損保数理は専門数理2へ改称され、数学のモデリング部分を取り込みます。ただし2026年度までに損保数理に合格していれば、専門数理2の合格とみなされます。改称による不利はありません。

3科目を並べると、扱いの向きが分かれます。

科目 改定の影響
数学 範囲が縮小するだけ。合格の扱いは変わらない
生保数理・年金数理 統合される。片方だけの合格は引き継がれない
損保数理 改称と範囲拡大。2026年度までの合格はみなし合格になる

受験計画への影響

以上を踏まえた判断の目安を書きます。

生保数理と年金数理の両方を狙っているなら、2026年度に両方を取りにいく価値があります。片方だけ残すと改定後に受け直しになるためです。

数学だけを狙っているなら、急ぐ必要は相対的に小さくなります。改定後も科目として残り、範囲は狭くなります。ただしモデリングを含む現行の範囲で受けるなら2026年度まで、という違いはあります。

損保数理は、2026年度までに取れば専門数理2の合格として引き継がれます。改定後は数学のモデリング部分が加わるので、範囲は広くなります。先に取っておくほうが範囲は狭いことになります。

いずれの場合も、確率統計の部分は変わりません。改定の影響がいちばん小さい部分から固めるのが、どの計画を取るとしても損のない順序です。

モデリングの学習はどうするか

2026年度に数学を受ける人にとって、モデリングは範囲内です。ただし範囲外の指定が細かく入っています。

扱い
1 回帰分析 範囲内
2 時系列解析 範囲内
3 確率過程 3.5 金融工学への適用は範囲外
4 シミュレーション 4.3 検定・4.4 一様乱数の生成は範囲外
5 線形計画法 章まるごと範囲外

2026年度資格試験要領 別紙(1) には次のように書かれています。

モデリング(日本アクチュアリー会)同書の目次で(試験範囲外)とした部分および第5章を除く。

第5章は8節あり、モデリングの5分の1近くを占めます。ここを丸ごと落とせるので、範囲内の分量はそれほど大きくありません。

この教材はアクチュアリー会のサイトから無料でダウンロードできます。目次に(試験範囲外)の印が付いているので、まず目次だけ確認して落とす範囲を決めるところから始めるのが確実です。

まとめ

  • 2027年度から数学はモデリングを手放し、確率統計のみになる。範囲は狭くなる方向。
  • 数学は科目名も残り、合格の扱いも変わらない。改定の影響が最も小さい科目。
  • 生保数理と年金数理は専門数理1に統合され、片方だけの合格は引き継がれない。
  • 損保数理は専門数理2へ改称。2026年度までの合格はみなし合格になる。
  • 2026年度にモデリングを含めて受けるなら、範囲外の章と節を先に落として分量を減らす。