問題

出典は合格へのタクティクス 数学(上巻)第2章 連続型分布、2-4 ベータ分布の問題です。参考類題として 2018.1(3) が挙げられています。目標解答時間は7分。

区間 $[0,1]$ 上の一様分布に従う確率変数が4個あり、それらが互いに独立であるとする。それらの確率変数の実現値のうちで、小さい方から3番めの値をとる確率変数を $X$ としたとき、$E(X)$、$V(X)$ の値を求めよ。また、$X$ の積率母関数 $M_X(t)$ を求めよ。

まず何に着目するか

「小さい方から3番め」という言い方が出てきたら、順序統計量です。4個の値を小さい順に並べ替えて $X_{(1)} < X_{(2)} < X_{(3)} < X_{(4)}$ としたときの $X_{(3)}$ を聞いています。

順序統計量の密度関数を一般に組み立てる道はあります。

$$f_{X_{(m)}}(x) = \frac{n!}{(m-1)!\,(n-m)!}\left\{F(x)\right\}^{m-1} f(x) \left\{1 - F(x)\right\}^{n-m}$$

ただし一様分布の場合には、この式の意味するところを覚えておくほうが速い。$F(x) = x$、$f(x) = 1$ を代入すると

$$f_{X_{(m)}}(x) = \frac{n!}{(m-1)!\,(n-m)!} x^{m-1}(1-x)^{n-m}$$

これはベータ分布 $Beta(m,\ n-m+1)$ の密度関数そのものです。

母数の対応を言葉にしておきます。第1母数は「何番めか」、第2母数は「自分より大きい値が何個あるか、に1を足したもの」。$n = 4$、$m = 3$ なら $Beta(3, 2)$ です。

着目点は、分布を同定した時点で期待値と分散は公式で出る、ということです。積分を書く必要はありません。積率母関数だけは積分が要りますが、そこも部分積分を並べる道具があります。

解法の筋道

使う道具を3つ並べます。

一様分布の順序統計量。$X_i \sim U(0,1)$($i = 1, \dots, n$)が互いに独立なとき、小さい方から $m$ 番めの値をとる確率変数は $Beta(m,\ n-m+1)$ に従います。

ベータ分布の特性値。$X \sim Beta(p, q)$ のとき

$$f_X(x) = \frac{1}{B(p,q)}x^{p-1}(1-x)^{q-1}, \qquad E(X) = \frac{p}{p+q}, \qquad V(X) = \frac{pq}{(p+q)^2(p+q+1)}$$

ベータ関数はガンマ関数で書けます。

$$B(p,q) = \frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}$$

3つめが、多項式と指数関数の積の積分です。部分積分を繰り返すと次の形にまとまります。

$$\int f(x)e^{ax}\,dx = e^{ax}\left\{\frac{f(x)}{a} - \frac{f'(x)}{a^2} + \frac{f''(x)}{a^3} - \cdots\right\}$$ $$(a \neq 0)$$

$f$ が多項式なら、微分を繰り返すうちに0になるので有限項で止まります。符号が交互に変わる点だけ注意します。

なぜ順序統計量がベータ分布になるのか、密度の形から読んでおきます。$X_{(m)}$ が $x$ の近くにあるということは、$m-1$ 個が $x$ より小さく、1個が $x$ の近くにあり、残り $n-m$ 個が $x$ より大きい、ということです。一様分布なら「$x$ より小さい確率」が $x$、「$x$ より大きい確率」が $1-x$ なので、それぞれの個数だけ掛けて $x^{m-1}(1-x)^{n-m}$。並べ方の数が前に付きます。ベータ分布の密度の形が、そのまま場合分けの構造を表しています。

計算

$n = 4$、$m = 3$ なので

$$X \sim Beta(3,\ 4-3+1) = Beta(3, 2)$$

期待値は

$$E(X) = \frac{3}{3+2} = \frac{3}{5}$$

分散は

$$V(X) = \frac{3 \cdot 2}{(3+2)^2 (3+2+1)} = \frac{6}{25 \cdot 6} = \frac{1}{25}$$

積率母関数のために密度関数を書きます。

$$B(3,2) = \frac{\Gamma(3)\Gamma(2)}{\Gamma(5)} = \frac{2! \cdot 1!}{4!} = \frac{2}{24} = \frac{1}{12}$$

$$f_X(x) = 12 x^2 (1-x) = 12(x^2 - x^3), \qquad 0 < x < 1$$

定義から積率母関数を作ります。

$$M_X(t) = \int_0^1 12(x^2 - x^3) e^{tx}\, dx$$

$f(x) = x^2 - x^3$ として微分を並べます。

回数 導関数
$f$ $x^2 - x^3$
$f'$ $2x - 3x^2$
$f''$ $2 - 6x$
$f'''$ $-6$
$f''''$ $0$

公式に当てはめます。

$$M_X(t) = 12\left[e^{tx}\left\{\frac{x^2-x^3}{t} - \frac{2x-3x^2}{t^2} + \frac{2-6x}{t^3} - \frac{-6}{t^4}\right\}\right]_0^1$$

$x = 1$ を代入すると、第1項の $x^2 - x^3$ は0になります。残りは

$$e^{t}\left\{0 - \frac{2-3}{t^2} + \frac{2-6}{t^3} + \frac{6}{t^4}\right\} = e^t\left\{\frac{1}{t^2} - \frac{4}{t^3} + \frac{6}{t^4}\right\}$$

$x = 0$ を代入すると

$$1 \cdot \left\{0 - \frac{0}{t^2} + \frac{2}{t^3} + \frac{6}{t^4}\right\} = \frac{2}{t^3} + \frac{6}{t^4}$$

差を取って12を掛けます。

$$M_X(t) = 12 \cdot \frac{t^2 e^t - 4t e^t + 6 e^t - 2t - 6}{t^4}$$

これが答えです(この式は $t \neq 0$ での表示です。$t = 0$ では元の積分から $M_X(0) = 1$ で、この式の $t \to 0$ の極限とも一致します)。

検算をします。積率母関数は $t \to 0$ で1に近づくはずです。分子を $t$ の級数で展開すると、$t^0$ から $t^3$ までの項がすべて打ち消し合い、$t^4$ の係数が $1/12$ になります。12を掛けてちょうど1です。

もう1つ、$M_X'(0) = E(X) = 3/5$ になることも確かめられます。2か所で合えば、符号の取り違えはありません。

つまずきポイント:$Beta(3,2)$ と $Beta(2,3)$ を取り違える

母数の順序を逆にする誤りです。

$$X \sim Beta(2, 3), \qquad E(X) = \frac{2}{5} \quad \text{(これは誤り)}$$

$$X \sim Beta(3, 2), \qquad E(X) = \frac{3}{5} \quad \text{(正しい)}$$

分散はどちらも $1/25$ で同じなので、分散だけでは検出できません。期待値が $3/5$ か $2/5$ かで分かれます。

判別は直感で足ります。4個のうち小さい方から3番めということは、真ん中より上寄りの値です。だから期待値は $1/2$ より大きい。$3/5 = 0.6$ で条件を満たし、$2/5 = 0.4$ は満たしません。

より一般に、$n$ 個の一様分布の $m$ 番めの期待値は $\dfrac{m}{n+1}$ になります。$Beta(m, n-m+1)$ の期待値が $\dfrac{m}{m + (n-m+1)} = \dfrac{m}{n+1}$ だからです。区間を $n+1$ 等分した点に順に並ぶ、と覚えると分かりやすい。4個なら $1/5, 2/5, 3/5, 4/5$ の位置に平均的に並びます。

順序統計量とベータ分布の対応をもう一度書いておきます。第1母数が「順位」、第2母数が「上に何個あるか、に1を足したもの」。上下を取り違えたときは、$Beta(p,q)$ と $Beta(q,p)$ が $x$ と $1-x$ を入れ替えた関係にあることを思い出せば戻せます。

本試験ではこう問われる

原問は2018年度 問題1(3)です。個数と問い方が違います。

確率変数 $A$ および $B$ が互いに独立で、それぞれ $[0,1]$ 上の一様分布に従うものとする。$X = \max(A, B)$、$Y = \min(A, B)$ とした時、$X$ の積率母関数 $M_X(t)$ は $\fbox{1}$、$Y$ の積率母関数 $M_Y(t)$ は $\fbox{2}$ である。

2個の最大値と最小値です。順序統計量の言葉に直すと、最大値は2個中2番め、最小値は2個中1番めなので

$$X = \max \sim Beta(2, 1), \qquad Y = \min \sim Beta(1, 2)$$

密度関数はそれぞれ $f_X(x) = 2x$、$f_Y(y) = 2(1-y)$ です。$B(2,1) = B(1,2) = 1/2$ から出ます。

積率母関数を計算します。

$$M_X(t) = \int_0^1 2x\, e^{tx} dx = \frac{2\left(t e^t - e^t + 1\right)}{t^2}$$

$$M_Y(t) = \int_0^1 2(1-y)\, e^{ty} dy = \frac{2\left(e^t - t - 1\right)}{t^2}$$

選択肢は $2\left(\dfrac{e^t + t + 1}{t^2}\right)$ から $2\left(\dfrac{te^t + e^t - 1}{t^2}\right)$ まで10個並んでおり、公式解答は最大値が (I)、最小値が (D) です。分子の3つの項のうち、どれに $t$ が付き、どれに $e^t$ が付き、符号がどちらか。その組み合わせで選択肢が作られています。

検算は期待値で行えます。$E(\max) = 2/3$、$E(\min) = 1/3$ です。さきほどの $\dfrac{m}{n+1}$ に $n = 2$ を入れると $1/3$ と $2/3$ になり、一致します。

類題は個数を4に増やし、真ん中寄りの順位を取ることで、母数の対応を正面から問う形に変えてあります。原問の最大値と最小値だけを覚えていると、3番めという中途半端な順位で手が止まります。

順序統計量そのものが問われた年度は、平成12年度から令和7年度までの26年度のうち6年度です。ただし、この記事のように名前を出さずに「小さい方から何番め」と書く形も含まれるので、語で数えた回数は下限と考えてください。

まとめ

  • 「小さい方から $m$ 番め」は順序統計量。一様分布なら $Beta(m,\ n-m+1)$ に従う。
  • 第1母数が順位、第2母数は上に残る個数に1を足したもの。$n=4$、$m=3$ なら $Beta(3,2)$。
  • 期待値は $\dfrac{m}{n+1}$。区間を $n+1$ 等分した点に順に並ぶと覚えると取り違えない。
  • 多項式と指数関数の積の積分は、微分を並べて符号を交互にする公式で一度に済む。
  • 原問(2018年度)は2個の最大値と最小値で、$Beta(2,1)$ と $Beta(1,2)$。期待値 $2/3$ と $1/3$ で検算できる。