問題
出典は合格へのタクティクス 数学(上巻)第2章 連続型分布、2-3 ガンマ分布の問題です。参考類題として H15.1(3) が挙げられています。目標解答時間は7分。
確率変数 $X$、$Y$ が互いに独立で、それぞれの確率密度関数が、
$$f_1(x) = x e^{-x} \quad (x > 0), \qquad f_2(y) = \frac{1}{2} y^2 e^{-y} \quad (y > 0)$$
であるとき、$U = X + Y$ の確率密度関数 $g(u)\ (u > 0)$ を求めよ。
まず何に着目するか
和の密度を求める一般の方法は畳み込みです。
$$g(u) = \int_0^{u} f_1(x) f_2(u - x)\, dx$$
これを実行しても答えは出ます。ただし $f_2$ に $(u-x)^2$ が入るので、展開して項別に積分することになります。7分の中では割に合いません。
先に密度関数の形を読みます。ガンマ分布 $\Gamma(\alpha, \beta)$ の密度は
$$f(x) = \frac{\beta^{\alpha}}{\Gamma(\alpha)} x^{\alpha-1} e^{-\beta x}$$
$f_1(x) = x e^{-x}$ と見比べます。$x$ の肩が1なので $\alpha - 1 = 1$、すなわち $\alpha = 2$。指数の肩の係数が1なので $\beta = 1$。係数を確かめると $\beta^{\alpha}/\Gamma(\alpha) = 1/\Gamma(2) = 1/1! = 1$ で、確かに $f_1(x) = x e^{-x}$ になります。
$f_2(y) = \frac{1}{2}y^2 e^{-y}$ も同じ手順です。$\alpha - 1 = 2$ から $\alpha = 3$、$\beta = 1$。係数は $1/\Gamma(3) = 1/2! = 1/2$ で一致します。
$X \sim \Gamma(2, 1)$、$Y \sim \Gamma(3, 1)$ と分かりました。
ここが分かれ目です。2つの $\beta$ が揃っています。揃っていれば再生性が使え、形状母数を足すだけで済みます。
解法の筋道
ガンマ分布の再生性は次の形です。$X \sim \Gamma(\alpha_1, \beta)$、$Y \sim \Gamma(\alpha_2, \beta)$ が互いに独立なら
$$X + Y \sim \Gamma(\alpha_1 + \alpha_2, \beta)$$
第2母数 $\beta$ が一致していることが条件です。足せるのは第1母数だけです。
なぜ成り立つのかは、積率母関数を掛ければ分かります。ガンマ分布の積率母関数は
$$M_X(t) = \left(\frac{\beta}{\beta - t}\right)^{\alpha} \qquad (t < \beta)$$
独立なので積になります。
$$M_{X+Y}(t) = \left(\frac{\beta}{\beta-t}\right)^{\alpha_1} \left(\frac{\beta}{\beta-t}\right)^{\alpha_2} = \left(\frac{\beta}{\beta-t}\right)^{\alpha_1 + \alpha_2}$$
底が同じなので指数が足せます。右辺は $\Gamma(\alpha_1+\alpha_2, \beta)$ の積率母関数そのものです。
$\beta$ が違えば底が違うので、この計算は止まります。再生性の条件が $\beta$ の一致である理由がここにあります。
方針が決まりました。密度から $(\alpha, \beta)$ を読み、$\beta$ の一致を確認し、$\alpha$ を足して密度を書き戻す。
計算
$X \sim \Gamma(2, 1)$、$Y \sim \Gamma(3, 1)$ で、$\beta$ はどちらも1です。再生性より
$$U = X + Y \sim \Gamma(2 + 3,\ 1) = \Gamma(5, 1)$$
密度関数を書き戻します。
$$g(u) = \frac{1^5}{\Gamma(5)} u^{5-1} e^{-u} = \frac{1}{24} u^4 e^{-u} \qquad (u > 0)$$
$\Gamma(5) = 4! = 24$ を使いました。答えは $\dfrac{u^4 e^{-u}}{24}$ です。
検算をします。$\Gamma(5,1)$ の平均は $\alpha/\beta = 5$。一方 $E(X) = 2$、$E(Y) = 3$ なので和は5で一致します。分散も $\alpha/\beta^2 = 5$ で、$V(X) + V(Y) = 2 + 3 = 5$ に一致します。
手で確かめる:畳み込みを実際に計算する
再生性を信じきれないときのために、畳み込みを実行しておきます。
$$g(u) = \int_0^{u} x e^{-x} \cdot \frac{1}{2}(u-x)^2 e^{-(u-x)}\, dx$$
指数の部分が $e^{-x} \cdot e^{-(u-x)} = e^{-u}$ となって、$x$ に依存しなくなります。ここがガンマ分布の畳み込みが軽い理由です。積分の外に出せます。
$$g(u) = \frac{e^{-u}}{2} \int_0^{u} x(u-x)^2\, dx$$
残った積分を展開します。
$$\int_0^u x(u^2 - 2ux + x^2)\, dx = u^2 \cdot \frac{u^2}{2} - 2u \cdot \frac{u^3}{3} + \frac{u^4}{4} = u^4\left(\frac{1}{2} - \frac{2}{3} + \frac{1}{4}\right)$$
括弧の中は $\dfrac{6 - 8 + 3}{12} = \dfrac{1}{12}$ です。したがって
$$g(u) = \frac{e^{-u}}{2} \cdot \frac{u^4}{12} = \frac{u^4 e^{-u}}{24}$$
再生性で出した答えと一致しました。
畳み込みでも出せますが、展開と項別積分の手間がかかります。しかも $\alpha$ が大きくなるほど項が増えます。再生性を使えば、この作業をまるごと飛ばせます。
つまずきポイント:$\beta$ が違うのに形状母数を足してしまう
再生性が成り立つのは第2母数が一致するときだけです。
$X \sim \Gamma(2, 1)$、$Y \sim \Gamma(3, 2)$ のとき、
$$X + Y \sim \Gamma(5, ?) \quad \text{(これは誤り)}$$
積率母関数を掛けてみれば分かります。
$$M_{X+Y}(t) = \left(\frac{1}{1-t}\right)^{2} \left(\frac{2}{2-t}\right)^{3}$$
底が違うのでまとめられません。この和はガンマ分布にはならず、別の分布になります。
見分け方は、指数の肩を見ることです。$e^{-x}$ と $e^{-2y}$ のように係数が違っていたら、その時点で再生性は使えません。密度から母数を読むときに、$x$ の肩だけでなく指数の肩も必ず確認します。
同じ注意は他の分布にも当てはまります。2項分布は成功確率が、負の2項分布も成功確率が揃っている必要があります。一方、ポアソン分布と正規分布には揃える条件がありません。揃える必要のある母数があるかどうかは、積率母関数を掛けて指数が足せるかで判定できます。
なお、$\beta$ が違う場合でも定数倍で揃えられることがあります。$\Gamma(\alpha, \beta)$ を $c$ 倍すると $\Gamma(\alpha, \beta/c)$ になるので、$Y$ を2倍すれば $\Gamma(3, 1)$ になります。ただしそれは $X + 2Y$ の分布であって、$X + Y$ の分布ではありません。問題が何の和を聞いているかを取り違えないことです。
本試験ではこう問われる
原問は2003年度(H15)問題1(3)です。第2の密度関数だけが違います。
確率変数 $X$、$Y$ が互いに独立で、それぞれの確率密度関数が
$$f_1(x) = x e^{-x} \quad (x > 0), \qquad f_2(y) = e^{-y} \quad (y > 0)$$
であるとき、$U = X + Y$ の確率密度関数は $g(u) = \fbox{ }$ $(u > 0)$ である。
$f_2(y) = e^{-y}$ は $\Gamma(1, 1)$、つまり平均1の指数分布です。したがって
$$U \sim \Gamma(2 + 1,\ 1) = \Gamma(3, 1), \qquad g(u) = \frac{1}{\Gamma(3)} u^2 e^{-u} = \frac{u^2 e^{-u}}{2}$$
原問のほうが軽くなっています。畳み込みで確かめても1行です。
$$\int_0^u x e^{-x} \cdot e^{-(u-x)}\, dx = e^{-u}\int_0^u x\, dx = \frac{u^2 e^{-u}}{2}$$
指数がまとまって $x$ が消えるので、残るのは $x$ の積分だけになります。原問はこの一行が見えるかを問う問題で、類題は $(u-x)^2$ を入れて畳み込みの道を重くし、再生性を使わせる作りに変えてあります。
同じ年度の問題1(5)は負の2項分布の再生性を、問題1(4)は対数正規分布の期待値と分散を問うています。分布の性質を1問ずつ切り分けて並べる構成です。
ガンマ分布の再生性は、指数分布との関係を通しても理解できます。$\Gamma(n, \beta)$ は率 $\beta$ の指数分布を $n$ 個足したものなので、$\Gamma(2,1)$ は指数分布2個ぶん、$\Gamma(3,1)$ は3個ぶん。合わせて5個ぶんだから $\Gamma(5,1)$、という数え方です。ただしこの説明は形状母数が整数のときにしか使えません。式のうえでは $\alpha$ は正の実数であればよく、再生性も整数に限らず成り立ちます。
まとめ
- 密度関数から母数を読む。$x$ の肩が $\alpha-1$、指数の肩の係数が $\beta$、係数が $\beta^{\alpha}/\Gamma(\alpha)$。
- 再生性が使えるのは $\beta$ が一致するときだけ。足せるのは形状母数 $\alpha$ のほう。
- 積率母関数を掛ければ再生性はその場で確かめられる。底が同じなら指数が足せる。
- 畳み込みでも同じ答えになる。指数がまとまって外に出るので、残るのは多項式の積分だけ。
- 原問(2003年度)は $\Gamma(2,1)$ と $\Gamma(1,1)$ の和で、答えは $u^2e^{-u}/2$。類題は畳み込みを重くして再生性を使わせる形になっている。