その名前をどこで見るか

ハーディの公式として出てきます。教科書では第1章(利息の計算)の中の、資産の利回りを測る話です。

保険会社の資産は、利息だけでなく保険料の収入や保険金の支払いで年中増減しています。その1年間の利回りをどう測るか。年始の資産を $A$、年末の資産を $B$、年間の利息収入を $I$ とすると、

$$i = \frac{2I}{A + B - I}$$

をその年度の利回りとする。これがハーディの公式です。

意味は教科書の解釈がいちばん分かりやすい。$B - I$ は年末資産から利息分を除いた「投資の元手になった資産」で、$\dfrac{A + B - I}{2}$ はその年の平均投資資産。平均してこれだけの元手が $I$ の利息を生んだのだから、利回りは $I \div \dfrac{A+B-I}{2}$、整理して上の式になります。資金の出入りが年の中央に集中して起きたとみなす近似、と言い換えることもできます。

どんな人だったか

ハーディ(G. F. Hardy)は19世紀イギリスの保険数理人です。生命保険の実務の中でこの利回り測定式を導き、名前が残りました。

注意したいのは同姓の有名人です。数学の世界でハーディといえば、解析学・数論のG・H・ハーディ(『ある数学者の生涯と弁明』の著者)がまず出てきますが、別人です。生保数理のハーディはG・F・ハーディ。教科書もイニシャル付きで区別して書いています。人物を調べるときにこの2人を混ぜると、時代も分野も噛み合わなくなります。

なぜその概念が必要になったか

理屈のうえでは、資産の出入りを1件ずつ時点つきで記録すれば、正確な利回りが計算できます。しかし19世紀の保険会社にその計算力はなく、現代でも概算や検算にそこまでの手間はかけたくありません。

ハーディの公式の価値は、決算書に必ずある3つの数字——年始資産・年末資産・利息収入——だけで利回りが出ることです。中身の出入りの明細が要らない。この「手に入る情報だけで近似する」という発想は、予定利率と実際の利回りを比べる利源分析など、後の章の実務的な話につながっていきます。

教科書は続けて、利息を連続的に考えた場合の代替式(利力 $\delta = I/\bar{A}$ を使う形)も示しており、離散と連続の対応という第1章の主題の実例にもなっています。

試験ではこう出る

過去問26年分で、ハーディの語が出たのは2年度です。出方は素直で、

  • $A$・$B$・$I$ を与えて利回りを計算させる形
  • 公式そのものを導出・選択させる形

のどちらかです。頻度は高くないものの、出たときは公式を知っているかどうかだけの勝負になり、知っていれば1分かかりません。第1章の他の公式(利率と割引率、名称利率、利力の関係)と同じ引き出しに入れておくのが効率的です。

覚え方は、式の丸暗記より「平均投資資産 $\dfrac{A+B-I}{2}$ で利息 $I$ を割る」という導出の1行を持つことです。分母の $-I$ を忘れる誤りは、この1行があれば起きません。

まとめ

  • ハーディの公式は $i = 2I/(A+B-I)$。年始資産・年末資産・利息収入の3つだけで、その年の利回りを見積もる。
  • 分母の意味は平均投資資産。「元手の平均で利息を割る」という導出1行を持てば、丸暗記は不要。
  • 導いたのは19世紀イギリスの保険数理人G・F・ハーディ。数学者のG・H・ハーディとは別人。
  • 過去問での登場は26年度中2年度。出れば公式を知っているかどうかの勝負なので、第1章の公式の引き出しに常備しておく。