その名前をどこで見るか
チルメル式責任準備金として出てきます。教科書では下巻の第8章(実務上の責任準備金)の最初の節です。
純保険料式の責任準備金では、毎年度の純保険料は一定額(平準)で、したがって付加保険料(営業保険料と純保険料の差)も毎年度一定と想定されています。チルメルはここを変えました。第1年度の付加保険料を平準の場合より大きく取り、そのぶん第2年度以降の付加保険料を小さくする。第1年度に上乗せする大きさをチルメル割合 $\alpha$、上乗せ分を回収し終えるまでの年数をチルメル期間 $h$ といいます。
この前提で将来法の責任準備金を計算したものがチルメル式責任準備金です。チルメル期間が保険期間全体に及ぶものを全期チルメル式、$h$ 年で区切るものを短期チルメル式(5年チルメル式、10年チルメル式)と呼びます。$t \geq h$ では純保険料式に一致する、という性質が計算問題の急所になります。
どんな人だったか
チルメル(A. Zillmer)は19世紀ドイツの保険数理人です。生命保険会社の実務家として働き、1860年代にこの保険料・責任準備金の方式を提唱しました。学者ではなく実務家の発明が、150年後の日本の資格試験で毎年名前を呼ばれている、という人です。
なぜその概念が必要になったか
問題は新契約費です。生命保険の契約では、診査や募集の費用が契約の初年度に集中してかかります。ところが平準の付加保険料は、その費用をならして少しずつしか回収しません。すると、契約を取れば取るほど初年度に費用が先行し、責任準備金を純保険料式で積むかぎり、契約初期の会計上の負担(新契約費負担)が重くなります。
チルメル式は、初年度の付加保険料枠を厚くして新契約費に充て、そのぶん第2年度以降は付加保険料枠を削って純保険料を多めに積み立てる(つまり積み立ての遅れを後年度で取り戻す)形に組み替えます。責任準備金の式で見ると、純保険料式との差は未回収の新契約費の現価にあたり、$t = 0$ で形式的に $-\alpha$ から始まって、チルメル期間の終わりで純保険料式に追いつくグラフになります。
教科書がこの節を「実務上の責任準備金」の章に置いているとおり、これは数学の必要ではなく経営の必要から生まれた概念です。それでも式の構造は美しく整理されていて、だからこそ試験問題が作りやすいのだと思われます。
試験ではこう出る
過去問26年分で、チルメルの語は25年度に登場します。ほぼ毎年です。出方には型があります。
- チルメル式責任準備金の値や、純保険料式との差を計算させる形
- 全期チルメル式と短期チルメル式の関係、$t \geq h$ で純保険料式に一致することを使う形
- チルメル割合・チルメル期間を与えて、修正後の保険料 $P_1$、$P_2$ を組み立てる形
覚え方のコツは、公式の暗記より「未回収の新契約費の現価だけ純保険料式より小さい」という1行を軸にすることです。この1行から、$t = 0$ で $-\alpha$、$t \geq h$ で一致、という両端の性質が全部出てきます。
まとめ
- チルメルは19世紀ドイツの保険数理人。初年度の付加保険料を厚くして新契約費に充て、後年度に積み立てを厚くして取り戻す方式を提唱した。
- チルメル式責任準備金は、純保険料式から未回収新契約費の現価を引いたもの。$t=0$ で形式的に $-\alpha$、チルメル期間の後は純保険料式に一致する。
- 過去問26年分で25年度に名前が登場。人名としては生保数理で最頻出で、計算問題の定番。
- 暗記の軸は「差=未回収新契約費の現価」の1行。両端の性質はここから導ける。