どんな本か

『アクチュアリーのための生命保険数学入門』(京都大学理学部アクチュアリーサイエンス部門、岩波書店、2014)は、生保数理を大学の講義水準で通す入門書です。位置づけがほかの参考書と決定的に違うのは、アクチュアリー会が試験要領で挙げる指定参考書だという点です。指定教科書『生命保険数学』(二見隆)と並んで、公式の書目に入っています。

指定教科書は1992年改訂版。内容の水準は今も試験の基準ですが、刊行から時間が経っているぶん、用語の言い回しや前提の明示が現代の教科書ほど親切ではありません。この本は同じ体系を2014年の言葉で書き直した位置にあり、教科書で詰まった箇所を「現代語で読み直す」ために使えます。

タクティクスが参照している3か所

タクティクス生保数理の本文がこの本を参照している箇所を全部拾うと、3か所でした。数は多くありませんが、内容が揃っています。

参照箇所 内容
p.16 累減年金の現価 $(D\ddot{a})$・$(Da)$ の記号の出典として
p.117 「保険者損失」という用語の出典として(教科書p.182の「会社と契約者との将来の取引の現価」に相当、という対応つき)
p.168〜171 教科書に載る脱退率・絶対脱退率の公式の前提条件が、細かく言及されている箇所として

3つとも共通しているのは、教科書には結果や用語が簡潔にしか書かれていないことを、この本が記号・用語・前提のレベルで精密に書いている、という参照のされ方です。問題量を借りる本ではなく、定義と前提を確かめる本として使われています。

どの段階で使うと効くか

主戦場はあくまで指定教科書と過去問です。この本が効くのは次の2つの場面です。

1つ目は、教科書の記述で腑に落ちない箇所ができたときの参照先です。特に、責任準備金まわりの概念的な言葉(保険者損失のような確率論的な見方)や、脱退残存表の公式の前提のように、教科書が結果だけを置いている箇所で効きます。

2つ目は、指定参考書であることの意味です。試験問題は教科書だけでなく参考書の水準も意識して作られ得ます。タクティクスが記号の出典としてこの本を挙げているように、表記や用語の「公式な根拠」を持っている本なので、教科書に見当たらない記号・用語に出会ったら、まずこの本を疑うのが近道です。

通読は必須ではありません。教科書1冊目・この本2冊目という順で2冊読むより、教科書+過去問を軸に、詰まった論点だけこの本で精密化するのが時間効率の良い使い方です。

ライブラリーの該当ページ

この本は、書籍ライブラリーの教科書・指定参考書の一覧に「生保数理」として登録してあります。指定教科書『生命保険数学』(アクチュアリー会のサイトで無料公開)と同じページです。

まとめ

  • 『アクチュアリーのための生命保険数学入門』は、生保数理で唯一の指定参考書。1992年の指定教科書と同じ体系を、2014年の言葉で書き直した位置にある。
  • タクティクス本文からの参照は3か所で、いずれも記号・用語・前提の精密化。問題量を借りる本ではなく、定義を確かめる本。
  • 使いどころは、教科書で腑に落ちない箇所の読み直しと、教科書にない記号・用語の出典確認。通読は必須ではない。