どんな本か

『大学への数学 解法の探求・確率』(福田邦彦、東京出版、2004)は、月刊『大学への数学』の別冊として出ている、確率に特化した受験参考書です。

タクティクスの漸化式の章の導入で、次のように紹介されています。

『解法の探求・確率』も薄い本ながらかなり多くの入試問題を紹介しています。

「薄い本ながら」という一言に、この本の性格が出ています。解説を厚くして1つの論点を丁寧に説明する本ではなく、限られたページに問題を詰め込む方針の本です。

2冊の書き分け

同じ導入文では、もう1冊『大学受験 合格る確率+場合の数』が先に挙げられ、こちらは「わかりやすく確率問題全般を網羅している」と評されています。

タクティクスの評
合格る確率+場合の数 わかりやすく確率問題全般を網羅している
解法の探求・確率 薄い本ながらかなり多くの入試問題を紹介している

網羅性と問題数。同じ「初級者向けの受験参考書」という枠に入っていますが、役割が違います。

一から確率の考え方を入れ直すなら前者、ひととおり分かったうえで問題数を当たりたいなら後者、という使い分けになります。『大学への数学』の別冊シリーズは、もともと標準以上の受験生を想定した誌面なので、解説の親切さでは前者に譲ります。

なぜ入試問題を当たる必要があるのか

タクティクスの導入文が挙げている理由は、指定教材の性格にあります。

過去問では大学入試の難問、古典的な確率の難問なども登場し、必ずしも教科書や演習書でその解法の解説が出ているわけではありません。しかも今後もいくらでも難問が登場することが予想されます。

指定教科書と指定演習書は、確率論の体系を学ぶために構成されています。一方、本試験の確率の問題には、入試の系譜に属する「設定を読み解いて数え上げる」タイプが混ざります。この2つは、必要な訓練が別です。

体系の側は指定教材で埋まる。設定を読み解く側は、入試問題を数当たるのが早い。そういう役割分担で、受験参考書が推薦リストに入っています。

確率漸化式という接点

タクティクスがこの本を挙げているのが漸化式の章である、というのも示唆的です。

確率漸化式は、試行回数や時点で添字を付けた確率列について、前の時点までの確率との関係式を立てる問題です。隣り合う2項で結ばれるもの、3項間のもの、より一般の形のものがあり、タクティクスも章をその順で構成しています。

この型は、大学入試の確率で最も定着している出題形式のひとつです。入試問題を数当たれば、状態の置き方と遷移の書き方が身につきます。逆に、確率論の教科書ではこの型をまとめて扱うことは多くありません。接点がここにあります。

使うかどうかの判断

タクティクスの導入文には、優先順位も書かれています。

時間があれば、という前提でですが……まずは一通りの問題(本書上巻・下巻)をすべてクリアしたあとでもよいのかなと思います。

「本書上巻・下巻」と明記されているので、タクティクスを通しでクリアしてから、が前提です。

そのうえで、この本と『合格る確率』のどちらを取るかは、確率漸化式の問題を見たときに何が起きるかで決めるのが実際的でしょう。状態の置き方が思いつかないなら解説の厚い前者、置き方は分かるが手数が足りないなら問題数の多いこちら、という判断です。

中上級者で、さらに踏み込みたい場合は『基本確率』がタクティクスに挙げられています。パーキング問題・職探し問題・クーポンコレクター問題といった、過去問に実際に出た古典的な題材が解説されている本です。

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まとめ

  • 福田邦彦『大学への数学 解法の探求・確率』(東京出版、2004)。確率に特化した受験参考書。
  • タクティクスの漸化式の章で、初級者向けの2冊のうちの1冊として挙げられている。評は「薄い本ながらかなり多くの入試問題を紹介している」。
  • もう1冊の『合格る確率』が網羅性、こちらが問題数。役割が書き分けられている。
  • 理由は、本試験に入試の系譜の確率問題が出るのに、指定教材にその解法の解説があるとは限らないこと。
  • 前提は「本書上巻・下巻を一通りクリアしたあと」と本文に明記されている。先にやる本ではない。