どんな本か
『大学1・2年生のためのすぐわかる統計学』(藤田岳彦・吉田直広、東京図書、2020)は、書名のとおり大学1・2年生を読者に想定した統計学の入門書です。
著者の一人の藤田岳彦先生は、合格へのタクティクス 数学の監修者です。タクティクスの前書きには、この本と『弱点克服 大学生の確率・統計』を含む著書や、日本アクチュアリー会での講師経験を踏まえて監修いただいた、という謝辞が置かれています。
タクティクスの推薦図書欄では「初心者のための参考書」の2冊目として、次のように紹介されています。
本書の監修をされている藤田岳彦先生の著書。対象を大学1、2年生にしているため、わかりやすい解説多数掲載。
同じ著者の2冊で役割が分かれている
タクティクスの推薦図書には、藤田先生が執筆に関わった本が2冊入っています。この本(吉田直広先生との共著)と、単著の『弱点克服 大学生の確率・統計』です。役割ははっきり分かれています。
| この本 | 弱点克服 | |
|---|---|---|
| 推薦欄での区分 | 初心者向け | やや数学ができる方向け |
| 本の性格 | 読んで理解する入門書 | 解いて鍛える問題集 |
| タクティクス本文からの参照 | 0か所(前書きの謝辞のみ) | 23か所 |
本文からの参照が0か所なのは、『すぐわかる確率・統計』と同じ理由です。入門書は演習が始まる前に読み終えるものなので、演習中のタクティクスから参照する場面がありません。一方の弱点克服は、演習の途中で問題量を借りにいく先として本文から繰り返し指定されています。
つまりこの2冊は「入門はこちら、演習量はあちら」という対になっています。入門をこの本で始めた人は、実力がついた段階で弱点克服に進むと、近い流儀のまま演習量を積み増せます。
どの段階で使うと効くか
『すぐわかる確率・統計』と同じく、指定演習書に入る前の助走に使う本です。あちらが「本当に最初の1冊」だとすると、こちらは大学1・2年生の講義水準を明確に想定している分、そのまま大学の確率統計の復習になります。大学で一度学んだ人が思い出しながら通すには、こちらから入るほうが早いはずです。
刊行が2020年と新しく、言い回しや記号の使い方が現代的なのも独学者には利点です。1996年刊の指定演習書で言葉に詰まったとき、同じ概念を新しい言葉で説明し直してくれる本が1冊手元にあると、詰まりが短く済みます。
確率の章から始まるが、主軸は統計
書名は統計学ですが、確率をまったく扱わない本ではありません。章立ては確率と確率分布から始まり、離散型・連続型の確率分布を通ってから、推定・検定・回帰分析へ進みます。統計の前提として必要な確率の基礎は、この1冊の前半に含まれています。
ただし、アクチュアリー試験の確率分野で問われる水準——変数変換、多次元の分布、順序統計量といった計算——までを覆う本ではありません。この本で入門を終えたら、確率分野の演習量は指定演習書とタクティクスで積む前提で考えてください。試験範囲の網羅を入門段階から優先したい場合は、同じ初心者向けの並びにある『アクチュアリー数理の基礎』が候補になります。
ライブラリーの該当ページ
この本は、書籍ライブラリーのアクチュアリー第1次試験の参考書に「数学」として登録してあります。書名のリンクからAmazonの該当ページに移動できます。
同じページの並びで、この本は初心者向けの2冊目です。1冊目の『すぐわかる確率・統計』との違いは、読者想定の水準と刊行の新しさ。どちらか1冊で十分なので、書店やサンプルページで読みやすいと感じたほうを選べば大丈夫です。
まとめ
- 『大学1・2年生のためのすぐわかる統計学』は、タクティクス数学の監修者・藤田岳彦先生と吉田直広先生の共著による統計学の入門書。
- 藤田先生の単著『弱点克服』とは「入門書と演習問題集」の対。本文からの参照0か所と23か所という差が、そのまま役割の差になっている。
- 大学で一度確率統計に触れた人の復習・立て直しに向く。刊行が新しく、古い指定演習書の言い回しを現代語で補える。
- 確率と確率分布の基礎も前半に含むので、入門書はこの1冊で足りる。試験水準の確率の演習は、指定演習書とタクティクスで別に積む。