どんな本か

『生保年金数理〈1〉理論編』(黒田耕嗣、培風館、2007)は、生命保険と年金の数理を、分けずにひとつの理論として書いた本です。タクティクス生保数理の巻末参考文献では、指定教科書・参考書とは区別された「試験勉強に役立つ参考書」の1冊に挙げられています。

生保数理と年金数理の教科書は別々の本ですが、実際の中身は連続しています。利息の計算、生命表、生命年金の現価という道具は共通で、違いは評価の重心——生保数理は保険契約の保険料や責任準備金、年金数理は年金制度の給付・掛金や財政——にあります(団体保険や個人年金のように、対象が重なる領域もあります)。この本はその共通部分を一度だけ書き、両方の応用へ枝分かれする構成なので、2科目を別々に学ぶときに起きる二度手間が構造的にありません。

専門数理1の時代に、立ち位置が変わる本

年金数理との学習順序の記事で整理したとおり、2027年度から生保数理と年金数理は「専門数理1」に統合されます。この制度の変わり目は、この本の立ち位置を変えます。

これまでは「生保の本」と「年金の本」を科目ごとに選ぶのが自然でした。統合後は、試験そのものが2分野を通しで問う1科目になります。生保と年金をひとつの体系として頭に入れておくことは、単なる効率化ではなく、新科目の形にそのまま合う学び方になります。

刊行は2007年なので、試験制度や実務の記述を確かめる本ではありません。効くのは理論の骨格——書名のとおり理論編——であり、そこは制度が変わっても古びない部分です。

どの段階で使うと効くか

タクティクス本文からのこの本への参照は0か所で、登場は巻末参考文献のみです。教材の特定箇所を補う索引的な使い方より、体系をまとめて理解したいときに向く本だと言えます。効くのは次のような読者です。

  • 生保数理を学びながら、年金数理(あるいは専門数理1)まで見据えて、共通の土台を一度で固めたい人
  • 生保数理と年金数理を別々に合格したが、2分野が頭の中でつながっていないと感じる人

同じ著者の『生命保険数理』(日本評論社)が確率論の言葉での読み直しに効くのに対し、こちらは生保と年金の横のつながりに効きます。目的で選び分けてください。いずれの場合も、優先度は指定教科書・過去問・タクティクスの後です。

ライブラリーの該当ページ

この本は、書籍ライブラリーのアクチュアリー第1次試験の参考書に「生保数理」として登録してあります。書名のリンクからAmazonの該当ページに移動できます。

生保数理の参考書はこれで4冊(指定参考書の岩波入門、山内『生命保険数学の基礎』、黒田『生命保険数理』、本書)を紹介しました。数学の15冊と比べて数が少ないのは、生保数理では指定教科書そのものが演習問題を豊富に持ち、教科書+過去問で完結しやすいためです。参考書は「詰まった箇所を精密化する」「別の言葉で読み直す」道具として、必要になったときに手に取る位置づけで十分です。

まとめ

  • 『生保年金数理〈1〉理論編』は、生保と年金の数理をひとつの理論体系として書いた本。共通の土台を一度で固められる。
  • 2027年度の専門数理1への統合で、2分野を通しで見る学び方は「効率化」から「新科目の形そのもの」に変わる。
  • タクティクス本文からの参照は0か所。目の前の1問のためではなく、体系をつなげたい段階で章単位で読む本。
  • 生保数理の参考書は計4冊。指定教科書+過去問が主戦場で、参考書は必要になったときの精密化・読み直し用。