この記事で扱う証明

教科書 第12章 練習問題(1)の(6)です。4人 $x$、$y$、$z$、$w$ について、次の2つを示します。

(a)ちょうど2人が $t$ 年後に生存している確率

$$\npx{t}{\overline{xyzw}}^{[2]} = \left(\npx{t}{xy} + \npx{t}{xz} + \npx{t}{xw} + \npx{t}{yz} + \npx{t}{yw} + \npx{t}{zw}\right) - 3\left(\npx{t}{xyz} + \npx{t}{xyw} + \npx{t}{xzw} + \npx{t}{yzw}\right) + 6\,\npx{t}{xyzw}$$

(b)少なくとも3人が $t$ 年後に生存している確率

$$\npx{t}{\overline{xyzw}}^{\{3\}} = \npx{t}{xyz} + \npx{t}{xyw} + \npx{t}{xzw} + \npx{t}{yzw} - 3\,\npx{t}{xyzw}$$

以下では4人の寿命は互いに独立とします。第12章の標準的な設定です。

記号の約束

角括弧と波括弧の使い分けを先に確認します。ここでつまずくと式が読めません。

記号 意味
$\npx{t}{xy}$ $x$ と $y$ の2人がともに $t$ 年後に生存している確率
$\npx{t}{\overline{xyzw}}^{[2]}$ 4人のうち、$t$ 年後に生存しているのが、ちょうど2人である確率
$\npx{t}{\overline{xyzw}}^{\{3\}}$ 4人のうち、$t$ 年後に生存しているのが3人以上である確率

角括弧の $[r]$ は「ちょうど $r$ 人」、波括弧の $\{r\}$ は「$r$ 人以上」。同じ数字でも意味が違います。

添字に4人並べただけの $\npx{t}{xyzw}$ は連生、つまり「4人とも生存」です。$\npx{t}{\overline{xyzw}}^{\{1\}}$ が「1人以上生存」で、これが最終生存者の生存確率にあたります。

以下、記述を短くするため $\npx{t}{x}$ を単に $p_x$ と書きます。独立性から $\npx{t}{xy} = p_x p_y$ です。

証明(a):ちょうど2人という条件を、そのまま式にする

「ちょうど2人が生存」とは、「生き残る2人を選び、残りの2人は死んでいる」ということです。生き残る組の選び方は6通りなので、6つの場合を足します。

$$\npx{t}{\overline{xyzw}}^{[2]} = \sum_{\{i,j\}} p_i p_j (1 - p_k)(1 - p_l)$$

和は4人から2人を選ぶ6通りの組 $\{i,j\}$ にわたり、$\{k,l\}$ は残りの2人です。これらの場合は互いに排反なので、単純に足せます。

あとは括弧を展開するだけです。1組ぶんを展開すると

$$p_i p_j (1 - p_k - p_l + p_k p_l) = p_i p_j - p_i p_j p_k - p_i p_j p_l + p_i p_j p_k p_l$$

第1項は2人の積、第2項と第3項は3人の積、第4項は4人の積。つまり、展開すればすべて連生の生存確率になります。あとは、6組ぶんを足したときに同じ項が何回現れるかを数えるだけです。

係数の3と6はどこから来るか

数え上げが、この証明の本体です。

2人の積の項は、6組それぞれから1つずつ、合計6個。すべて異なる組なので、重複はありません。だから係数は1です。

3人の積の項は、6組から2個ずつ、合計12個。ところが3人の積は4種類($xyz$、$xyw$、$xzw$、$yzw$)しかありません。$12 \div 4 = 3$ で、同じ項が3回ずつ現れる計算です。

実際に確かめます。$p_x p_y p_z$ という項が出るのは、どの組からでしょうか。$\{x,y\}$ を選んで $p_z$ を掛けた場合、$\{x,z\}$ を選んで $p_y$ を掛けた場合、$\{y,z\}$ を選んで $p_x$ を掛けた場合の3つです。3人の集合が含む2人組の数が3——これが係数3の正体です。符号は負なので、$-3$ になります。

4人の積の項は、6組それぞれから1個ずつ、合計6個。すべて $p_x p_y p_z p_w$ という同じ項なので、係数は $+6$ です。

以下、4人から $r$ 人を選ぶ組すべてにわたる和を、次の記号で書きます。

$$\Sigma_{r} = \sum_{\substack{S \subseteq \{x,y,z,w\} \ |S| = r}} \ \prod_{i \in S} p_i$$

$\Sigma_2$ は2人の積6個の和、$\Sigma_3$ は3人の積4個の和です。この記号でまとめると

$$\npx{t}{\overline{xyzw}}^{[2]} = \Sigma_{2} - 3\,\Sigma_{3} + 6\,p_x p_y p_z p_w$$

(a)が示せました。

証明(b):3人以上を、ちょうど3人とちょうど4人に分ける

(b)は(a)より簡単です。「3人以上生存」を「ちょうど3人」と「ちょうど4人」に分けます。この2つは排反で、これで漏れもありません。

$$\npx{t}{\overline{xyzw}}^{\{3\}} = \npx{t}{\overline{xyzw}}^{[3]} + \npx{t}{xyzw}$$

ちょうど3人の確率は、生き残る3人を選び、残り1人が死ぬ形です。

$$\npx{t}{\overline{xyzw}}^{[3]} = \sum_{\{i,j,k\}} p_i p_j p_k (1 - p_l) = \Sigma_{3} - 4\,p_x p_y p_z p_w$$

係数の4は、3人の組が4通りあり、そのそれぞれから $p_i p_j p_k p_l$ が1個ずつ出るからです。

足し合わせると

$$\npx{t}{\overline{xyzw}}^{\{3\}} = \left(\Sigma_{3} - 4\,p_x p_y p_z p_w\right) + p_x p_y p_z p_w = \Sigma_{3} - 3\,p_x p_y p_z p_w$$

(b)も示せました。

2人の場合と地続きであること

この数え上げは、2人の場合にすでに現れています。

死亡順序で割り振る記事で扱った $\nqx{t}{xy} = \nqx{t}{x} + \nqx{t}{y} - \nqx{t}{x}\nqx{t}{y}$ は、2人版の包除です。「どちらかが死ぬ」を数えるとき、両方死ぬ場合を2回数えてしまうので1回引く。人数が増えても、やっていることは同じです。

違いは、引いたり足したりする回数と係数だけ。4人になると3人の項を3回引き、4人の項を6回足す。この係数は、組合せの数を数えれば必ず出せます。暗記する必要はありません。

つまずきポイント:角括弧と波括弧の取り違え

$[2]$ と $\{2\}$ を読み違えると、答えが根本から変わります。

$[2]$ は「ちょうど2人」、$\{2\}$ は「2人以上」。$\{2\}$ は $[2] + [3] + [4]$ です。問題文に「ちょうど」「少なくとも」のどちらが書いてあるかを、まず確認してください。

記号体系の記事で整理したとおり、生保数理の記号は飾りの形に意味を持たせます。連合生命は、その原則がいちばん密度高く出る章です。記号を読む練習が、そのまま得点になります。

まとめ

  • 「ちょうど $r$ 人生存」は角括弧 $[r]$、「$r$ 人以上生存」は波括弧 $\{r\}$。この区別が出発点。
  • ちょうど2人生存は、生き残る2人を選んで残りが死ぬ形を6通り足し、括弧を展開する。
  • 係数の3は「3人の集合が含む2人組の数」、6は「2人組の総数」。組合せを数えれば出る。
  • 3人以上生存は、ちょうど3人とちょうど4人に分けて足すだけ。係数の4は3人組の総数から出る。
  • 2人の場合の包除原理と地続き。人数が増えても、数え上げの手は変わらない。