その名前をどこで見るか
ゴムパーツの法則として出てきます。教科書は生命関数の章(第2章)で、死亡法則の代表としてこう書いています。死力を
$$\mu_x = B c^x \qquad (B > 0,\ c > 1)$$
と置く。つまり死力が年齢に対して幾何級数的に増大する、という仮定です。これを死力と生存数の関係式に入れて積分すると、生存数は
$$l_x = k\, g^{c^x}$$
という二重の指数の形になります($k$、$g$ は定数で、$g$ は $B$ と $c$ から決まります)。指数の肩にさらに指数が乗る、生保数理でいちばん見た目のいかつい式ですが、出発点は「死力が毎年一定率で増える」という1行です。
どんな人だったか
ゴムパーツ(Benjamin Gompertz。一般の統計・人口学の本ではゴンペルツとも表記されますが、指定教科書の表記に合わせます)は18〜19世紀イギリスの人です。ユダヤ系であったために大学で学ぶ道が閉ざされ、数学を独学で修めました。それでも王立協会の会員に選ばれ、保険会社の数理人として働きながら、1825年に王立協会でこの死亡法則を発表しています。独学の実務家が出した法則が、2世紀後の教科書に名前ごと残っている、という人です。
なぜその概念が必要になったか
ド・モアブルの法則(別の記事で扱いました)は計算には便利ですが、現実の死亡率とは似ていません。実際の死亡率は、成人以降、年齢とともに加速度的に——ほぼ一定の率で複利的に——増えていきます。
ゴムパーツの仮定はこの観察をそのまま式にしたものです。死力の対数を取れば年齢の一次式になる、と言い換えてもかまいません。実際の生命表に驚くほどよく合い、特に中高年の死亡率カーブは、発表から200年を経てもこの形を骨格に語られています。合わない部分(若年層の事故死など、年齢によらない死亡)を直したのが、別の人物記事で扱うメーカムの法則です。
教科書がこの法則を載せている実用上の理由も書き添えられています。観測された粗死亡率をこの曲線に乗せてしまえば、少ないパラメータで滑らかな死亡率が得られる——つまり死亡率の補整の道具になる、ということです。
試験ではこう出る
過去問26年分で、ゴムパーツの語が出たのは2年度です。頻度は高くありませんが、タクティクスは死亡法則(ド・モアブル・ゴムパーツ・メーカム)を出題実績のある論点として明記しており、備えは要ります。
出方の典型はこうです。
- $\mu_x = Bc^x$ を与えて、$l_x$ や生存確率を導出させる形(指数の入れ子の積分計算)
- $l_x = k g^{c^x}$ の形から逆に $B$、$c$ を読み取らせる形
- メーカムの法則との対比で、どの項が何を表すかを問う形
計算の急所は $\int_0^t c^{x+s} ds = c^x \dfrac{c^t - 1}{\log c}$ の1本です。この積分さえ落ち着いて処理できれば、見た目のいかつさに反して手数は多くありません。
まとめ
- ゴムパーツの法則は $\mu_x = Bc^x$。死力が幾何級数的に増える、という1825年の仮定で、生存数は二重指数 $l_x = kg^{c^x}$ になる。
- ゴムパーツは大学に入れず独学で数学を修めた19世紀イギリスの実務家。法則は王立協会で発表された。
- 現実の成人死亡率によく合い、死亡率の補整の道具として実用価値を持ち続けている。欠点を直したのがメーカムの法則。
- 過去問での名前の登場は26年度中2年度。出れば指数の入れ子の積分が急所で、$c^x$ の積分1本を落ち着いて処理する。