この記事で扱う証明
教科書 第5章 練習問題(2)の(13)(14)です。どちらも危険保険料を扱います。
証明1(13)— 危険保険料を現価で加重平均すると
$$\frac{\sum_{t=1}^{n} {}_{t}P^{r}\, v^{t}}{\sum_{t=1}^{n} v^{t}} = P_{x:\angl{n}} - P_{\angl{n}}$$
証明2(14)— 普通終身保険の危険保険料が経過年数とともに増える条件
$$\Delta^{2} \ddot{a}_{x+t-1} > i\, \Delta \ddot{a}_{x+t-1}$$
出発点:純保険料の分解
両方の証明で使うのは、純保険料を2つに分ける式です。
$$P_{x:\angl{n}} = {}_{t}P^{r} + \left(v\, \resv{t}{x:\angl{n}} - \resv{t-1}{x:\angl{n}}\right)$$
第1項の ${}_{t}P^{r}$ が危険保険料、第2項が貯蓄保険料です。
意味を取っておきます。その年に受け取る保険料は、2つの仕事をします。1つは責任準備金を前年度末の水準から当年度末の水準へ引き上げること(貯蓄保険料)。もう1つは、その年に死亡した人へ、責任準備金では足りない分を払うこと(危険保険料)。
同じことを、危険保険料の側から書けば
$${}_{t}P^{r} = P_{x:\angl{n}} - \left(v\, \resv{t}{x:\angl{n}} - \resv{t-1}{x:\angl{n}}\right)$$
保険料から積立に回る分を引いた残り、ということです。
証明1:望遠鏡和で途中が全部消える
分解の式の両辺に $v^t$ を掛けます。
$$v^{t} P_{x:\angl{n}} = v^{t}\, {}_{t}P^{r} + v^{t+1}\, \resv{t}{x:\angl{n}} - v^{t}\, \resv{t-1}{x:\angl{n}}$$
これを $t = 1, 2, \dots, n$ について足し上げます。ここが山場ですが、実は何も起きません。責任準備金の項が望遠鏡和(隣どうしで打ち消し合う和)になっているからです。
$t$ 番目の式が出す $+v^{t+1}\resv{t}{}$ と、$t+1$ 番目の式が出す $-v^{t+1}\resv{t}{}$ が相殺します。残るのは両端だけです。
$$P_{x:\angl{n}} \sum_{t=1}^{n} v^{t} = \sum_{t=1}^{n} v^{t}\, {}_{t}P^{r} + v^{n+1}\, \resv{n}{x:\angl{n}} - v\, \resv{0}{x:\angl{n}}$$
ここで両端を処理します。$\resv{n}{x:\angl{n}}$ は満期保険金を支払う直前の時点で測った責任準備金で、保険金と同額なので1。契約時点では $\resv{0}{x:\angl{n}} = 0$ です。したがって
$$P_{x:\angl{n}} \sum_{t=1}^{n} v^{t} = \sum_{t=1}^{n} v^{t}\, {}_{t}P^{r} + v^{n+1}$$
両辺を $\sum v^t$ で割って整理すると
$$\frac{\sum_{t=1}^{n} v^{t}\, {}_{t}P^{r}}{\sum_{t=1}^{n} v^{t}} = P_{x:\angl{n}} - \frac{v^{n+1}}{\sum_{t=1}^{n} v^{t}}$$
最後に、右辺第2項の正体です。$\sum_{t=1}^{n} v^t = \ann{n}$ なので、この項は $v^{n+1}/\ann{n}$。これは元金償還保険($n$ 年後に元金1を返す確定的な保険)の年払保険料 $P_{\angl{n}}$ にほかなりません。
$$\frac{\sum_{t=1}^{n} {}_{t}P^{r}\, v^{t}}{\sum_{t=1}^{n} v^{t}} = P_{x:\angl{n}} - P_{\angl{n}}$$
証明終わりです。
結果の意味
この式は、危険保険料の平均が「養老保険の保険料 - 元金償還保険の保険料」だと言っています。
養老保険の保険料は、満期保険金のための積立と、途中死亡への備えの両方を含みます。元金償還保険の保険料は、積立だけを行う純粋な貯蓄です。差を取れば、死亡保障のために払っている分だけが残る。
別記事で扱った積立の不足を埋める保険料と同じ発想です。商品を足し引きして意味を読む見方が、ここでも効いています。
証明2:危険保険料が増えていく条件
証明2は、終身保険の危険保険料が年々増えるための条件を示す問題です。
分解の式を終身保険について書き、$(1+i)$ を掛けて整理します。
$$(1+i)\, {}_{t}P^{r} = (1+i) P_x + i\, \resv{t-1}{x} - \left(\resv{t}{x} - \resv{t-1}{x}\right)$$
責任準備金の差を、年金現価の形で書き直します。年金現価の比の記事で使った基本式 $\resv{t}{x} = 1 - \ddot{a}_{x+t}/\ddot{a}_x$ を代入すると
$$\resv{t}{x} - \resv{t-1}{x} = \frac{\ddot{a}_{x+t-1} - \ddot{a}_{x+t}}{\ddot{a}_x} = -\frac{\Delta \ddot{a}_{x+t-1}}{\ddot{a}_x}$$
ここで $\Delta \ddot{a}_{x+t-1} = \ddot{a}_{x+t} - \ddot{a}_{x+t-1}$ は階差です。
危険保険料が増加する条件は ${}_{t+1}P^{r} > {}_{t}P^{r}$ ですから、上の式で $t$ を1つ進めた式との差を取ります。そこに現れるのが、階差の階差(2階差分)$\Delta^2 \ddot{a}_{x+t-1}$ と、利息の項 $i\,\Delta \ddot{a}_{x+t-1}$ です。整理すると、増加の条件は
$$\Delta^{2} \ddot{a}_{x+t-1} > i\, \Delta \ddot{a}_{x+t-1}$$
となります。
条件の読み方
この条件は、年金現価の減り方(1階差分)と、その減り方の変化(2階差分)を比べています。符号の扱いに注意が要る式なので、順を追って読みます。
年齢が上がると年金現価は減るので、通常 $\Delta \ddot{a}_{x+t-1} < 0$ です。$i > 0$ ですから、右辺の $i\,\Delta \ddot{a}_{x+t-1}$ も負の値になります。つまりこの不等式は「左辺が、ある負の値より大きい」と言っているだけで、左辺が正である必要はありません。
減り方が加速していれば $\Delta^{2} \ddot{a}_{x+t-1} < 0$ ですが、それでも条件は満たされうる。絶対値で書き直すと $\left|\Delta^{2} \ddot{a}_{x+t-1}\right| < i\left|\Delta \ddot{a}_{x+t-1}\right|$、すなわち減り方の加速が利息の効果ほどには大きくないこと——これが条件の中身です。逆に $\Delta^{2} \ddot{a}_{x+t-1} \geq 0$(減り方が緩んでいる)なら、左辺が非負・右辺が負なので条件は自動的に成立します。
「加速していれば増える」と読むと向きが逆になります。ここは不等式の両辺の符号を確かめてから意味を取ってください。
なお、実際に各年度で危険保険料が増えるかどうかは、採用する生命表と予定利率を入れてこの不等式を確かめる必要があります。成人以降の標準的な生命表では増加する場面が多いものの、死亡率が年齢とともに上がるという事実だけからこの2階差分条件が出るわけではありません。典型的な若年加入の平準払終身保険であれば、死亡率が低い初期は貯蓄保険料の比重が大きく、後年になるほど危険保険料の比重が高まる——という傾向として押さえておくのが安全です。
つまずきポイント:貯蓄保険料の符号
危険保険料の式を書くとき、貯蓄保険料の項の符号を間違えやすい。
$$v\, \resv{t}{x:\angl{n}} - \resv{t-1}{x:\angl{n}}$$
前年度末の責任準備金 $\resv{t-1}{}$ は年度初めにすでに手元にあり、当年度末の責任準備金 $\resv{t}{}$ は1年後に必要になる額なので $v$ で割り引きます。「1年後に必要な額の現価 - いま手元にある額」が、その年に積み増すべき分。この順序を意味から立てれば、符号を取り違えません。
まとめ
- 純保険料は貯蓄保険料と危険保険料に分かれる。危険保険料は、保険料から積立に回る分を引いた残り。
- 分解の式に $v^t$ を掛けて足すと、責任準備金の項が望遠鏡和で消え、両端($\resv{n}{}=1$、$\resv{0}{}=0$)だけが残る。
- 結果は「危険保険料の現価加重平均 = 養老保険の保険料 - 元金償還保険の保険料」。死亡保障のために払っている分そのもの。
- 終身保険の危険保険料が年々増える条件は $\Delta^2 \ddot{a}_{x+t-1} > i\,\Delta \ddot{a}_{x+t-1}$。両辺とも負になりうる式なので、符号を確かめてから読む。減り方の加速が利息の効果を超えないことが条件。